【TABIZINE自由研究部】地元の町に外国人観光客を集める方法 その2
【TABIZINE自由研究部】調べる、考える、まとめる、伝える。
夏休みの自由研究のように、心惹かれることについて、じっくり調べてみる。考えて、試行錯誤し、また考えて、まとめて、発表する。TABIZINEにもそんな場がほしいと思い【TABIZINE自由研究部】を発足しました。部員ライターそれぞれが興味あるテーマについて自由に不定期連載します。
今回は、TABIZINEライター、坂本正敬の自由研究「地元の町に外国人観光客を集める方法」をお届けいたします。
「地元の町に外国人観光客を集める方法」の第2回目になります。
オンラインで一流の講師陣からレッスンを受けられるgaccoの講座『文化財を中核としたまちづくり戦略』をテキストに、その内容を学び、実践していく企画でした。
日本は東京オリンピックが開催される2020年までに、年間で4000万人を超える外国人観光客を呼び込もうと考えているみたいです。2016年の実績はその半分くらい。今と比べて倍近くの人を呼び込む計算ですね。
その壮大な目標を実現するため、2016年3月30日に首相を議長とする会議では、今まで保存を第一に考えていた日本各地の文化財を、観光客に理解してもらう、体験してもらう方向に切り替えていくと発表されました。
その流れで、全国に文化財を中心とした観光拠点を200か所ほど作る目標があると言います。皆さんの暮らす町がその1つを担う可能性は、十分にありますよね。

文化財ってそもそも何?

そもそも文化財とは何なのでしょう。『広辞苑』(岩波書店)を見ると、
<文化価値を有するもの>(広辞苑より引用)
とあります。形のある文化財、形のない文化財さまざまで、例えば建造物や庭園から、祭りや食なども含みます。
gaccoの講座『文化財を中核としたまちづくり戦略』では、地域の人たちが自分の生活を成り立たせるために持つ、根本的な基盤としての財産と定義されていました。
皆さんの暮らす町にも、自慢できるような文化財が何かあるのではないでしょうか?
富山県南砺市井波を例に考えてみる
(C)南砺市観光協会
例えば筆者の暮らす富山県には、南砺市井波という場所があります。浄土真宗の本願寺5代・綽如(しゃくにょ)が1390年に開いた瑞泉寺があり、門前町も栄えています。
同地はユニークな歴史があり、1763年にシンボルでもある瑞泉寺が火災で焼けてしまった際、京都本願寺の彫刻師が再建に呼び寄せられました。
その技術を地元の大工が学び、発展させて、後に彫刻の町としての名声を得るようになります。過去記事「人間国宝や日展入賞者が続々!小さな町に200人もの彫刻家が暮らすワケは?」でも触れましたね。
(C)南砺市観光協会
神奈川の茅ケ崎から富山市に移住して間もないころでしたが、井波の門前町を自動車でチラリと見かけて、そのたたずまいに旅心がキュンと高まった記憶があります。
調べてみると、すばらしい文化と歴史を持ち、現役の彫刻家が200人近く暮らす極めてユニークな場所だと分かりました。そういえば昔見た『釣りバカ日誌13 ハマちゃん危機一発!』(松竹)でもロケーションになっていた町だとも思います。
井波の観光客は残念ながら少ない・・・
(C)南砺市観光協会
にもかかわらず、現状で観光客が押し寄せているとは決して言えません。トリップアドバイザーなどの口コミを見ても、
<もう少し何かがあるかなと思います。瑞泉寺いいですし、木彫も素晴らしいと思いますが、町を訪ねると何か物足りなさを感じます>(トリップアドバイザーより引用)
<木彫りの町ということもあって、車を走らせるだけで町のあちこちに立派な彫刻があるのが目につく。ただ、わざわざ訪れて見てみたいと思えるような圧倒的スケールの木彫りがない>(トリップアドバイザーより引用)
などの寂しい評価が少なくありませんでした。旅を得意とするライターとして、世界をあちこち回ってきた立場からすると、引用した言葉の意味が十分に分かります。
ただ一方で、きちんとした取り組みをすれば日本人のみならず、多くの外国人が呼べるのではと、“よそ者”だからこそ感じる魅力がそこかしこにある気がしてならないのです。
長野県の妻籠宿は限界集落の宿場町から人気の観光地になった
長野県の中山道にある妻籠宿では、「焚き木にしかならない」とまで言われた古い限界集落の町並みを、地元の人たちが「売らない、貸さない、壊さない」というルールを決めて、観光地として復活させました。
今ではその“日本らしい”町並みの美しさで、ヨーロッパやアメリカ、オセアニアなどから多くの外国人を集めています。その数は国内外の観光客を合わせて年間60万人。
『文化財を中核としたまちづくり戦略』の第2部では、実際に妻籠を愛する会の方がその取り組みを語っています。
当事者が「温泉も、おいしい料理もない」と語る“何もない”場所でも、取り組み次第では観光地として大きな飛躍を遂げられる好例だと言えます。
(C)南砺市観光協会
ならば「富山県の井波もできるのでは?」という思いが、今回の自由研究部をスタートする動機の1つになっています。
全国には井波のように文化財を持ちながら、まだまだ人を集めるまでに至っていない場所がたくさんあるはず・・・。
その文化財を取り巻く地域全体で、どうやって人を呼び込めばいいのか、その戦略や方法が今回の自由研究の主な学習テーマになります。
町に暮らす人々の生活が第一

ただ、人を呼ぶには大前提となる注意点もあると言います。
『文化財を中核としたまちづくり戦略』の第2回目のレッスンを担当する東京大学教授の西村幸夫さんによれば、多くの観光客を世界中から呼び込めたとしても、その町に暮らす人々の生活が壊されてしまったら意味がないのだとか・・・。
昔ながらの暮らしや文化財は一度壊されるとなかなか後戻りができないデリケートな面もあるそう。
なるほど考えてみると、世界遺産の中にも多くの観光客が訪れた結果、固有の生態系や文化が破壊されてしまったケースがありますよね。
コンゴのカフジ・ビエガ国立公園は観光客が持ち込んだ伝染病で、ゴリラの数が一気に減ってしまったと聞きます。ウズベキスタンのシャフリサブス歴史地区は観光開発が一気に進んでしまい、その独自の魅力が失われつつあるとか・・・。
日本の白川村も交通渋滞が深刻な問題になった
日本でも白川村は世界遺産に登録されると、観光客が押し寄せ、深刻な交通渋滞が発生したそう。
『文化財を中核としたまちづくり戦略』の第2部第1回で白川村の教育委員会の方が登壇し、交通渋滞との格闘の歴史を語っていました。
元々村の中心部に、観光客向けの駐車場があったそうで、その駐車場に通じる道が大渋滞を起こし、美しい景観を作っていた田畑が駐車場化してしまう事態が起きたと言います。

暮らしを守る取り組みこそ大切
「自分の町に多くの外国人観光客を呼びたい」と意気込んで実際に呼び寄せたとしても、町に暮らす人の生活や伝統、歴史が大きく損なわれては意味がありません。
シビアに数字や利益を追い求める経営的な視点の一方で、その町に暮らす人々の暮らしを守り、長期的に世界から人を呼べる仕組みを作っていく姿勢を忘れてはいけないと、肝に銘じておくべきみたいですね。
以上、地元の町に外国人観光客を集める際の注意点を学びましたが、いかがでしたか?
次の第3回からはいよいよ、自分の町にある文化財を、どのように磨き上げて内外に知らせていけばいいのか、その具体的な方法を学びます。
[文化財を中核としたまちづくり戦略 – gacco]
[発起人インタビュー 「限界集落からの再生。 妻籠宿、半世紀の歴史」 – 妻籠を愛する会]
[Photos by shutterstock.com]
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