「新しい職場が超ドライで居心地最悪…長く働ける自信がありません」【シゴト悩み相談室】

キャリアの構築過程においては体力的にもメンタル的にもタフな場面が多く、悩みや不安を一人で抱えてしまう人も多いようです。そんな若手ビジネスパーソンのお悩みを、人事歴20年、心理学にも明るい曽和利光さんが、温かくも厳しく受け止めます!

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曽和利光さん

株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。

CASE15:「職場がドライすぎて、長く働き続ける自信がありません」(30歳男性・外資系メーカー勤務)

<相談内容>

スキルアップ&給与アップを狙って、3カ月前に大手国内メーカーから外資系メーカーの営業に転職しました。給与は上がったし任される範囲も広がったのですが…社風がドライすぎて悩んでいます。

前職はアットホームな社風で、皆でランチに行ったり週に1回は飲みに行ったり。仕事の合間には雑談も飛び交う和気あいあいとしたオフィスでした。また、団結力もあり、仕事において助け合ったり教え合ったりする雰囲気がありました。

しかし今は、成果重視の営業なので雰囲気は殺伐としていますし、自分の仕事が終わったら皆すぐに帰ってしまいます。日中は外出していることが多いのが救いですが、オフィスに戻るのが苦痛で…長く働き続けられる気がしません。

30にもなってこんなことで悩んでいる私は、甘いのでしょうか?

(メーカー・営業職)

趣味や嗜好をさらけ出して、声を掛けられるのを待つ

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仕事内容よりも社風や人間関係に注意が向いてしまうということは、転職したてでまだヒマなのでしょうね。

私にも経験がありますが、今までバリバリ仕事をしてきた人が急にヒマになると、ついネガティブな気持ちになって悪いことばかりに目が向きがちになります。たくさん仕事を抱えるようになると、それどころじゃなくなって、「ドライでもいいかも」という気になるかもしれませんよ。

ただ、相談者は前職のアットホームな雰囲気を気に入っていて、自分にはそういう社風が合っていると思っておられるのですよね。新しい職場もそういう環境にしたければ、自分が動くしかありません。

外資でドライ、そして仕事が終わるとすぐに帰宅するということは、ワークライフバランスの「ライフ」を重視している人が多いと思われます。何か共通する趣味を見つけられれば、一気に仲良くなれるかもしれません。

とはいえ、今の職場環境では、一人ひとりの趣味を察知するのは難しそうなので、自分から「さらけ出す」ことをお勧めします。

今は社内SNSを設ける企業が増えていますから、そういう場で発信したり、机の上に趣味の小物を飾ってみたりすれば、廊下ですれ違いざまに「○○さんって釣りやってるの?」なんて話し掛けられるかもしれません。自分の趣味、嗜好、特技などをあらゆる方法でどんどん発信して、誰かから声を掛けられるのを待ちましょう。

同僚たちの「こり固まった表情筋」を動かしにかかろう

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1日1回、誰かを笑わせてやるぞ!という目標を持つのもお勧めです。

高い目標を持ち、常にファイティングポーズで戦うことを求められている人は、表情筋を動かす機会が減りがちです。「ドライで殺伐とした雰囲気」は、もしかしたら職場の皆さんの表情筋が固まり、無表情になってしまっているせいかもしれません。

雑談の場がないならば、会議や打ち合わせで発言する際に、笑いを取れるようなエピソードを盛り込んでみる、などはいかがでしょう?笑いは、伝播します。一人が笑えば、周りもつられて笑顔になり、徐々に皆の表情筋を復活させられるかもしれません。

そもそも、ドライな社風にするために、意図的に社員同士のコミュニケーション量を減らすように仕向けている会社などありません。ちょっとしたきっかけで、雰囲気が変わる可能性は大いにあります。あなたがそのきっかけを作れば、状況は少しずつ改善するでしょう。

「会社のために環境を変える」を大義名分に、旗振り役を買って出ては?

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相談者は「30にもなってこんなことで悩んでいる私は甘い?」と気にされていますが、そんなことはありません。

「一体感の醸成」を目標に掲げる企業が多い中で、「アットホームで団結力があり、和気あいあいとした雰囲気を切望する」相談者の存在は貴重です。前述した自分の趣味をさらけ出すという方法よりも、もしかしたら「上司に働きかけ、組織全体を変えていく」ほうが、あなたに向いているかもしれません。

ただ、「こんなギスギスした組織は嫌です!こんな環境ではとても長く働き続けられません!」などと上司に文句をぶつけるのはダメ。社員一人の文句で、組織全体が変わるはずはありません。もちろん、そう思うのは自由ですが、上司に伝えるときには少し知恵を働かせましょう。

例えば、「インフォーマルネットワーク(組織内におけるフォーマルではない人間関係)が強い組織ほど、組織内での情報流通が進むことでクリエイティビティが刺激されやすくなるし、トップのビジョンや価値観が浸透しやすくなるという効果もあります」など、社員の交流を活性化することで会社にどんなメリットがもたらされるかを訴えるといいでしょう。そのうえで、社内のイベントやワークショップなどを企画し、「私にやらせてください」と立候補すれば、あなたを中心に景色はどんどん変わっていくはずです。

大それたことでなくてもいいんです。外資系企業やIT企業でやっているような、週に1回のピザパーティーでもいいでしょう。家族を招いてのサマーパーティーを企画してもいいかもしれません。幸い、相談者はまだ大量の仕事を抱えるまでには至ってないようですから、今のうちにあなた自身も楽しめるような企画を、いくつか考えてみてはいかがでしょう?

<アドバイスまとめ>

動機は「自分のため」でも、その下心は隠して

表向きには「組織のため、会社のため」に

組織改革に動いているとアピールしよう。

社風も変わるし、おそらくあなたの評価も上がる

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EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:刑部友康

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