【ここは法廷だゼ!】「俺はA町のチャーリーだ!」とスナック店員を殴った大酒飲み

スナック

ある日の某裁判所。昭和30年代生まれの被告人Tは坊主頭、中年太りの腹が目立つジャージ姿で法廷に登場。昨年末のある日の夜、某市スナックでブラジル人男性の店員を殴ったとして、暴行罪で起訴された。

証言台の前に立つTの手元をみると、小指の先が一部欠損していた。元暴力団員のようだ。罪状認否で裁判官の言葉にかぶせるように「間違いないです!」と早口で答える様は、場慣れした雰囲気すら感じさせる。実際、被告人は傷害致死を含む前科11犯。かなりの荒くれ者である。

当日は居酒屋で飲酒したのち、20時40分に事件のスナックへ。開店は21時だったが、「俺はA町のチャーリーだ!」と怒鳴るTに対して店長は「乱暴な人物だとウワサに聞いていた」ということから、追い返すことなく、床に膝をついて丁重に応対したという。

その後もTは酒が出て来るのが遅いなどと文句をつけていたが、ブラジル人の被害者を見つけて近づき、こう怒鳴った。「A町のチャーリーを知ってるか!」。その後も欠損した指を見せ「日本の怖さを知ってるか。思い知らせてやる」と脅したりした挙げ句、犯行に至ったという。警官が臨場する前にTは立ち去っていた。

逮捕後の調書では「外国人が好きではなかった」と動機ともとれる供述をしていたが、公判では「酒で全然覚えてない」と発言。

「いやぁ外人がどんな言葉遣いしたのか知りませんけど、たぶん、ハラ立って、こんな事なったと思うんですけどね」

相当酔っていたようだ。

検察官「あなた『日本の怖さを教えてやる』って小指見せた記憶はありますか?」
T「いや、分かんないです」
検察官「なんでそういう事したか……」
T「(検察官の発言を遮って即答)飲み過ぎですね!」

飲み過ぎてしまった原因については、

「分かんない。甘かった。飲めば飲むほど酒が水みたいになってった……自分じゃもう、止まんないッスね。1杯だといいけど、ボトル1本空けると訳分かんなくなっちゃう……焼酎も、1:9で飲んでましたからね!1が水で」

と凄まじい発言。「いま、糖尿に高血圧……通風、大腸ポリープあります」と酒のせいか、だいぶ体にガタも来ているようだ。

「何言っても信じてもらえないと思いますけど、これで最後にしますから!娘も、20歳になって、初めて証人に出てくれたんで……」

この日、Tの娘さんが情状証人として出廷し、今後の監督を誓ってくれた事が相当嬉しかったのか、今後犯罪を犯さないことを高らかに宣言したが、酒については「断つのは難しい……」と正直にポロリと漏らす場面も。通風と糖尿をかかえて飲み続けるのは命に関わるのでは……? また性懲りもなく飲み続けると、つぎは犯罪を犯す前に死んでしまうような気がする。さすがに、ちょっと控えた方が……。

画像引用元:flickr from YAHOO
http://www.flickr.com/photos/tamaiyuya/3910006886/

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高橋 ユキ

傍聴人。近著『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)ほか古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社)など。好きな食べ物は氷。

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