エンタメ・コンテンツ・コミュニティを追求 ブシロードとの協業で新発表が相次いだ新日本プロレス戦略発表会レポート
ガジェット通信では先日、新日本プロレスリングの株式を100%取得したブシロードの木谷高明社長インタビューをお届けしましたが、新日本プロレスの取締役会長に就任した“木谷体制”での第1弾となる記者発表『新日本プロレスリング戦略発表会2012』が2月29日に開催されました。コンテンツパブリッシャーであるブシロードとの協業により、新日本プロレスが新たに打ち出した方針は「エンターテインメント」「コンテンツ」「コミュニティ」の追及というもの。この方針に沿って新発表が相次いだ発表会について、コンテンツやコミュニティへの展開を中心にレポートします。木谷氏がインタビューで語ったコミュニティへのフォーカス、30~50代のかつてのプロレスファンへのアプローチは、どのように実現していくのでしょうか。
エンタメ・コンテンツ・コミュニティを追求
冒頭に新日本プロレスリング代表取締役社長の菅林直樹氏が登壇。創業の精神と会社の信条にたちかえり、「ファンの満足、喜びを最優先に、ファンに愛される団体を目指す」とコメントし、今後の方向性として「エンターテインメントの追求」「コンテンツの追求」「コミュニティの追及」を発表しました。コア事業として大会などイベントを進化させると同時に、新たな収益事業の創出と拡大を目指していくとのこと。
今後の新日本プロレスリングのコンテンツ展開として、これまで映画館で上映してきた3Dコンテンツ『プロレス3D』を、4月に開始するスマートフォン専用放送局『NOTTV(ノッティービー)』で配信し、地上波テレビ放送のスマートフォン版『ワールドプロレスリング NOTTV版(仮称)』も開始することを発表しました。さらに、テレビ朝日がサイバーエージェントと協業する『アメーバピグ』でのレスラーキャラクターの展開を継続・発展させるほか、携帯ゲーム『俺達のプロレス』のスマートフォン版が4月開始で検討中。
映像コンテンツでは、集英社から刊行中の分冊百科『燃えろ!新日本プロレス』に加えてDVDも積極的に展開するほか、テレビ番組『ワールドプロレスリング』の海外への販売、海外へのライブ配信など海外市場の開拓も発表。海外から“プロレス留学生”を受け入れ、日本でレスラーとして育成、帰国後には現地でのスターにしていくことで海外での番組販売に結び付けていくプランも明らかになりました。
新日本プロレスのモバイルサイトは、4月から携帯電話に加えてスマートフォン版の提供を3キャリアで開始予定。木谷氏がインタビューで明らかにした、秋ごろリリース予定のスマートフォン用SNSとの連携も予想されます。
カードゲームは『キング オブ プロレスリング』の名称に
ブシロード木谷氏は、新日本プロレスリング代表取締役会長として登壇。まず予告していたカードゲームへの展開を発表します。パソコンやスマートフォンで遊べるトレーディングカードゲームのタイトルは『キング オブ プロレスリング』。同名の大会を10月8日に両国国技館で開催し、会場で先行発売を予定しています。8月に開催されるシリーズ『G1クライマックス22』では、各会場で来場者にプロモーションカードの配布も予定しているとのこと。
ゲーム内容は次の通り。プレイヤーは数枚のカードが入ったブースターパックを購入して選手カードを入手。カード上に印刷されたデータをパソコンやスマートフォンの公式サイト上で入力すると、その選手が利用可能になります。対戦させる選手を選んだら、オンラインのプレイヤーと対戦が可能。勝敗は自動で決定します。
小島聡選手と天山広吉選手の2枚のカードを組み合わせると、タッグチーム“テンコジ”としてコンボが発動するなど、タッグマッチや因縁の組み合わせというプロレスらしい世界観も導入。追加で発売していくカードを使った“隠しコンボ”の存在も予告していました。
木谷氏が続々と仕掛けるコンテンツ・コミュニティ展開
「その他展開」として、木谷氏が仕掛けるコンテンツやコミュニティの展開がその後も続々と発表されます。最初に発表されたのは、ラジオ放送の開始。『ワールドプロレスリング』のテレビ放送開始前の毎週土曜26時から26時25分に、ラジオ日本で『ラジオ新日本プロレス(仮)』の放送決定を発表しました。新日本プロレスリングと選手をフィーチャーしたプロレストークバラエティという内容で、ナビゲーターはFIGHTING TV サムライで実況を担当する清野茂樹アナウンサーが担当します。
“ラジオ”に目をつけた点が、木谷氏の戦略を象徴しているのかもしれません。ラジオ番組はリスナーのコミュニティが形成されやすく、40代以上のかつてプロレスファンだった世代にも親しみのあるメディア。『Twitter』やメールによる応援でテレビ視聴につなげて盛り上げていくというコミュニティ戦略も用意されています。放送後には『ニコニコ動画』やネットラジオ『響』での配信も予定しており、20代のユーザーへのリーチも期待できそうです。
続いて発表されたのは、ブシロード1社がスポンサーになるアニメ『タイガーマスク』の再放送。4月6日金曜23時からTOKYO MXで、40年前に放送されたシリーズの再放送を開始します。木谷氏はその目的として「単純に私が見たい」という理由に加えて、「世間に“プロレスって今、流行り始めてるんじゃない?”と思ってもらうための世間への情報提供の一環」とコメント。こちらも40代以上のかつてのプロレスファンにアピールする戦略といえそうです。
グッドスマイルカンパニーからレスラーのフィギュアを発売
『figma』『ねんどろいど』などで知られるグッドスマイルカンパニーから、レスラーのフィギュア発売についても発表されました。発売を予定している小島選手、天山選手、永田裕志選手の3名が登壇すると、ゲストとして登壇したグッドスマイルカンパニー代表取締役社長の安藝貴範氏は「ちゃんと作らないと僕がえらい目に遭いそうだな」とコメント。
永田選手のフィギュアには試合中で名物の“白目”、天山選手のフィギュアにはコスチュームの角、小島選手のフィギュアには試合中に外すサポーターと、本人からは「行っちゃうぞコノヤロー!」の声など続々とリクエストが伝えられます。フィギュアの開発には8か月かかると語る安藝氏からは、その間「演出や髪型を変えないで欲しい」という逆リクエストも。さらに「団体が変わるのもやめて欲しい」という逆リクエストには場内から笑いが漏れましたが、進行役の木谷氏はこれを華麗にスルー。今後の開発には困難が待っていそうですが、安藝氏は「プロレス愛はありますので頑張らせていただく」とコメントしていました。
CMでの露出も増加へ
木谷氏が仕掛けるメディア戦略として、テレビCMによる露出もトピックとして挙げられます。まず大会への来場促進に、棚橋弘至選手と中邑真輔選手、真壁刀義選手が出演するCMが放送されることを発表。3月4日の後楽園大会では、来場したファンと棚橋選手が一緒に「プロレス、愛しまーす!」と叫ぶシーンが公開収録することが予告されました。
登壇した棚橋選手は「今から『Twitter』始めます」と、この日『Twitter』(ID:tanahashi1_100)を開始したことも合わせて発表。
さらに、ブシロードのカードゲーム『カードファイト!! ヴァンガード』のCMに中邑選手と真壁選手が、DAIGOさんと共演することが発表されました。登壇した真壁選手はおびえる木谷氏と「なに木谷ちゃん、そんな他人行儀な」「他人じゃないですか、決して親でも子でもない」、「オレの表情、さすがだよね。思わない?」「いかにも悪役という……」「オレの顔はどう見てもベビーフェイスだろ」など、息の合ったかけ合いを見せます。CMについては「アクション、顔、すべて魂入れてやってるから、何か感じてくれたらありがてぇな」とコメントしました。今後、ブシロードがスポンサーになる様々なテレビ番組で、これらCMを目にする機会が増えそうです。
発表会ではこのほか、来年1月4日の東京ドーム大会の開催決定、曙選手の参戦、4月から放映されるBS朝日の新番組『ワールドプロレスリング リターンズ(仮)』、テレビ朝日の新日本プロレス株主への復帰など多くの発表がありました。1月31日のブシロードによる新日本プロレスの100%株式取得の発表から、短期間にこれだけ多くの展開を仕掛けていることに驚きますが、木谷氏のプロレスにかかわる本気度が伝わる発表会となりました。次回は夏ごろに発表会を予定しているとのこと。プロレスファン、かつてのプロレスファンには、今後も注目される展開がありそうです。
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宮原俊介(エグゼクティブマネージャー) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。2010年3月~2019年11月まで2代目編集長、2019年12月~2024年3月に編集主幹を務め現職。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます
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