働き方からつくるオフィス環境と耐震偽装被害マンションの再生を両立 内田洋行『Sタワー・新川第2オフィス』

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働き方からつくるオフィス環境と耐震偽装被害マンションの再生~内田洋行『Sタワー・新川第2オフィス』

内田洋行は市街地再開発事業のひとつとして、自社所有のビルと『グランドステージ茅場町』マンションを共同ビルとする地下1階・地上20階建ての『Sタワー・内田洋行新川第2オフィス』ビルを完成させた。

建築の経緯

このビルは、8Fまではオフィス、9F~20Fは住居となっている。『グランドステージ茅場町』は2005年に発覚した耐震構造計画書偽装事件の被害マンションの一つ。完成後数か月で問題が発覚、住民たちはそのマンションに住み続けることができなくなった。しかし、被害にあったビルは建て替えをしようとしても建築規制のため、もとの間取りがとれなかった。

事件の後、建築認可の責任を感じた中央区は、隣接する場所にテナントビルを持っていた内田洋行に、テナントビルと被害マンションを合わせて再開発をしたいという要請をした。住民と中央区の担当者の熱意をうけ、内田洋行は立て替えに同意、再開発を決定した。

建て替えられたビルの9F~20Fには36戸のマンション。その戸数はグランドステージ茅場町と同じ。そう、ここは、純粋に住もうとしていた人たちが帰ってくるための場所として用意されたのだ。そして36戸全てが戻ってきた住民たちで埋まった。

住居との共存 重ねられた話し合い

今回の再開発は住居と事務所という全く生活パターンが違うものの共存ということで、当初は毎週のように話し合いが重ねられた。外観やプライバシーの保持などについて、特に配慮した。

耐震については住民の方々が特に心配していたが、内田洋行側の設計担当者も“これが実現されないと自分たちの役目はない”という気持ちで真剣に取り組んだ。建設中に起こった昨年3月11日の地震の際も、ほんの手直し程度の修復ですみ、住民の方々も安心されたという。

新しい働き方を目指すオフィス

住居部分もそうだが、B1~8Fのオフィス部分についても、どんな働き方をしたらお客様に役立てるのか、あるべき営業の姿について徹底的な検討のうえ、建設が進められた。今回、オフィス部分を見学させていただいたので、その一部を紹介する。

Diner(ダイナー)

Diner(ダイナー):アメリカの気取らない雰囲気のレストランをイメージした、4~6名で気軽に集まってミーティングやブレーンストーミングができるコーナー。ファミリー・レストランに来ているような感じでワイワイ話ができる。

Long Wood(ロングウッド)

Long Wood(ロングウッド):全体で15名くらいが利用できる大きな杉のテーブル。相席効果で部門を離れた偶発的なコミュニケーションや情報交換ができる。

 Cafe Stand(カフェ・スタンド)

Cafe Stand(カフェ・スタンド):本格的なコーヒーマシンなどを備えたカウンタースタイルのミニカフェ。コーヒーを飲みながら軽いプレゼンテーションやディスカッションなどに利用。

Dock(ドック)

Dock(ドック):営業の個人資料、ステーショナリーを収納するパーソナルロッカー。営業はここから必要なものを朝取り出して、好きなところで仕事するスタイル。

Studio(スタジオ)

Studio(スタジオ):全国の代理店やパートナーに対して年間500プログラムほどの教育プログラムを配信し、様々な情報提供を行っている。

Captain Desk(キャプテン・デスク)

Captain Desk(キャプテン・デスク):事業本部のリーダーたちのホームスペース。ここもオープンになっている。

知識の共有やコミュニケーションの活性化、アイデアのコラボレーションなどが生まれやすいようにかなり工夫されている。理想的な働き方を求めて生まれた344の課題を解決するためのオフィス。今後もどんどん変化していくそうだ。

住まう人と働く人の調和

2005年に起こった耐震構造計画書偽装事件のあと、2007年に再開発が決定してから長い時間をかけて完成した『Sタワー・内田洋行新川第2オフィス』。オフィス部分では業務が開始され、住居部分には『グランドステージ茅場町』マンションに住んでいた36戸全ての住民が戻ってきた。

このビルの屋上は住民の方々と一緒に花火を見られるように作ったスペースになっている。その他にも避難訓練やお祭りなどのイベントも一緒にやろうという話をしているそうだ。

なんとかしてあげたいという行政(区の職員)の熱意、住んでいた場所に戻ってきたいという住民の思い、参画を決定した企業の覚悟。事件の絶望を超えてたくさんの話し合いと検討をもとにできたこのビルに暮らし働く人々の日々が、これからどんなふうに調和し、発展していくのか、そこに未来への希望を重ねて見守りたい気持ちになった。

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