『ラ・ラ・ランド』がトランプ支持派&反対派双方から称賛された理由
今年のアカデミー賞で13部門14ノミネート、最終的には6部門を受賞したミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』。興行収入は40億円を突破し、世界中で熱狂的な旋風を巻き起こしました。その背景には何があるのでしょう。
本作の舞台はアメリカ・ロサンゼルス。映画スタジオのカフェで働く女優を目指す女性と、ジャズを弾きたいと願うピアニストの男性の恋愛を描いた作品。お互いの夢を応援し合うも、男性の意に添わない成功で、2人の溝が次第に生まれ恋は岐路に立たされてしまい……。
本書『なぜメリル・ストリープはトランプに噛みつき、オリバー・ストーンは期待するのか』の著者である藤えりか氏は、本作の監督デイミアン・チャゼル氏にインタビューした際、「かなう夢があれば、かなわない夢もある」という言葉に着目。映画をこう分析します。
「アメリカン・ドリームが、米国人の誰もが実現可能な夢としてとらえられたのも今は昔。社会流動性が減り、格差を縮めるのが難しくなってきた今、夢をかなえるなど簡単なものではないことを、米国人の多くはすでに実感している。その現実を踏まえながら、それでもかなう夢がある、という筋書きに米国の人たち引き寄せられているということか。」(本書より)
さらに、米国でブームが巻き起こっている本映画が、トランプ大統領にも関係しているというのです。本書によれば、元BBCの批評家バード・クッシュマン氏が、カナダ紙ナショナルポスト運営のブログ「フル・コメント」でこう論じています。
「この映画は、米大統領選で二分された双方に称賛されている。反トランプ派は、『ともかく今はこういうものが必要』として癒しや楽しみを求める症候群になっている。トランプ支持者としては、(トランプが掲げた)『アメリカを再び偉大にする』を表すわかりやすい例として語ることが出来る」(本書より)
トランプ支持派・反対派ともに受け入れられた本作。藤氏はここでも、前出の「夢」が関わってくると分析します。
「『白人のアメリカ』を取り戻したい人たちにとっては、白人がより中心的地位を占めていた古きよきハリウッド映画のオマージュに満ちた、かなうにしてもかなわないにしても『白人の夢』をめぐる筋書きに飛びついた面もあるのかもしれない。」(本書より)
各時代のアメリカの今を常に映してきたハリウッド映画は、トランプ政権発足とともに、その転換期を迎えているといいます。話題の映画を通して世相を読み取る本書は、激動するアメリカと世界が直面する問題を理解できる “パスポート”といえそうです。
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