Communions『Blue』Interview

Photo : Riku Ikeya | Text : Junnosuke Amai | Edit : Ryoko Kuwahara

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デンマークはコペンハーゲンから放たれた、青い閃光――アイスエイジに続く次世代として注目を浴びる4人組、コミュニオンズ。かれらが鳴らす、ナイーヴで眩く、鮮烈なサウンドに世界中の音楽ファンが魅了されている。ロックンロール、ギター・ポップ、ポスト・パンク、ノイズ、ダンス・ビート……さまざまな音色が生々しく手掴みされ、そしてやわらかに内包されたその音楽の煌めきとは、はたして、少年から青年へと向かう直中で見せる時限的な輝きなのか。それとも、ストーン・ローゼズやリバティーンズへと連なる血筋の片鱗が見せるそれ、なのだろうか。

―3年前のデビューからわずかの間に、身の回りの環境や目の前の景色がガラッと変わってしまったと思うんですけど。この変化についてはどう感じていますか。

マーティン「自分達はデンマークのMayhemっていうアート・スペースでスタートしてるんだけど、当時に地元のまわりで活動していたバンドはすでに解散しちゃってたり……ただ、自分達はずっと続けてきたんだよね。自分達なりのペースで一歩ずつ前に進んできたというか」

ヤコブ「鳥の雛が巣立ち始めたみたいなようなものかな。今でももちろんMayhemのシーンに関わっているし、昔からの知り合いもたくさんいるけど、それ以外の新たなコネクションができたり、新しい人達と出会うようになったっていう感じかな。今まで知っていたのとは別の世界を知るようになったという。それは自分達にとって大きな変化だったよね」

マーティン「それと、子供の頃はあまり何も考えないもの。うちのバンドも始めたときはまさにその状態で、自分達は何をしたいのかとか、どんなサウンドを目指してるのかとか一切考えてなかったし。それを今は少しだけ意識するようになったというか、『自分達は何をやりたいんだ?』ってことを考えるようになった。自分の表現に対して責任を持つという意味でね」

ヤコブ「アルバム(『Blue』)を作っていく中で自然と自覚ができていったよね」

マーティン「そうだね。考えるというよりは、学習している感じ」

ヤコブ「曲線グラフを描きながら、上に向かってどんどん成長しているようなね」

―コミュニオンズを始めたときから、確信めいたものはあったんですか。

ヤコブ「イエス(笑)。本当に正直な気持ちとしてそうなんだ。『これは何かちょっと特別だぞ』って。自分達の先輩バンドやミュージシャンが一目置いたりしてくれてるのを見て、これは何か特別なのかもしれない、自分達はこういうことを続けていくべきだって思ったんだ」

マーティン「僕も同じだよね。周りからの反応がすごく良かったから、これはイケるんじゃないかって」

ヤコブ「そう。自分達が今まで味わったことのない自信みたいなもの? 初めて他人から認めてもらったっていう実感があったから」

Photo : Riku Ikeya | Text : Junnosuke Amai | Edit : Ryoko Kuwahara

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―当事者から見て、コペンハーゲンの音楽シーンの特別なところって何だと思いますか。

ヤコブ「インディペンデントなところかな。他の音楽シーンや地域から独立しているという」

マーティン「僕も同じ意見だね」

―たとえば、自分達の先輩バンドやミュージシャンの中で、影響を受けたり、ロールモデルとして意識したりしたような存在はいますか。
ヤコブ「まあ、あきらかに影響を受けたっていうところで言えば、兄(※サイモン)の存在になるのかな。昔から地元の音楽シーンで積極的に活動してるし(※Age Coin, Lower)、今でも活躍してるからね。あとは、その周りにいる人達とか」

マーティン「まだバンドを始めたばかりのときに影響受けたのはvarg。地元の〈Posh isolation〉っていうレーベルのアーティストなんだけど、色んなプロジェクトを展開していて、バンドを始めた頃にすごく共感できたというか、あのレーベル周辺がすごく盛り上がってて面白いなと思ってたんだ」

―ちなみに、コペンハーゲンでは音楽以外にどんなカルチャーが盛り上がっているんですか。

マーティン「アートでも映像でも、色んなジャンルでアーティストが活動しているよ。個人的には映画とかテレビ番組を作ってる友達が多いかな。あと、ものすごく親しい友人のひとりは写真家だったり、自分達と同世代の人間が活躍していて、それがすごく刺激になる」

ヤコブ「若さと才能を最大限に発揮してるというか、若くて血気盛んな時期に何か爪痕を残してやろうと意気込んでる人達が多いんだ」

―ふたりは、最初に手にした表現手段が音楽だったんですか。

ヤコブ「表現手段は色々あったのに、なぜか音楽だったんだよね」

マーティン「音楽の前にはスケートボードに夢中だったけど(笑)。あとは文章を書いたり……文章というか、日記というか散文みたいなものだけど。やっぱり、自分を表現する手段としては、音楽が常にメインにあったかな」

ヤコブ「僕は絵を描くのも好きなんだ。とにかく自分を表現したい気持ちが強くて……それは“音楽を描いていく”という意味でもそう。だから、あくまでもギターが自分にとってメインになる表現手段なんだけど、他の表現も追求してみたいし、ゆくゆくは音楽プロデュースにも挑戦してみたい」

―自分達より下の世代のアーティストも育ってきてるんですか。

マーティン「うん、すごく元気だし、盛り上がってる。僕達より下の世代はどちらかと言うと、メタル世代なんだよね。メタルに影響を受けてるというか。ただ、すごくいいと思う。勢いがあるし、才能もあって……しかも、誰かの真似じゃなくて、独自の路線を突き進んでるところが素晴らしいよ」

―その“メタル世代”っていうのは、やっている音楽もメタルなんですか。

ヤコブ「どうなんだろう? 音楽がメタルっていうよりも、姿勢がメタル的って感じかな。とにかく積極的に活動してるんだってことは伝わるんだよ。リハーサル・ルームとか、そういう子達の予約で埋め尽されてて(笑)」

マーティン「しかも、後に入るともの凄いことになってるんだよね。『この部屋では一体何が行われてたんだ?』っていうような(笑)」

ヤコブ「さんざん散らかしまくってる(笑)」

Photo : Riku Ikeya | Text : Junnosuke Amai | Edit : Ryoko Kuwahara

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―下の世代が“メタル世代”だとしたら、コミュニオンズは何世代なんでしょう?

ヤコブ「前に友達から“ヤングハート世代”と称されたことがあるけど、なんかちょっとキャッチーじゃない(笑)?」

―たとえば、コミュニオンズの音楽には、今のコペンハーゲンの音楽シーンやカルチャーにおける自分達の世代の、どういった感覚なり側面が反映されていると言えると思いますか。

マーティン「カルチャーを反映してるというよりも、むしろコペンハーゲンという都市に暮らす感覚を反映してるんじゃないかな。同世代の人間に囲まれて、そこで暮らしている日常というか、都会に暮らす感覚だよね。コペンハーゲンという街そのものが自分達にとってのインスピレーションなんだよ」

―上の世代とは違うという感覚はありますか?

ヤコブ「人それぞれって部分もあるからね。そういう意味では、やっぱり上の世代の反映してるものと自分達の反映してるものは違うんだと思う」

マーティン「自分達のまわりにいるバンドは、何だろう……わりとローファイ寄りだったりして。アイスエイジなんかは、ものすごくユニークな音をやってて、良い意味で荒削りというか……」

ヤコブ「自分達がもし少し前の世代だったら、アイスエイジに影響を受けて似たようなサウンドをやってたかもね。ただ、幸いなことに自分達は少し下の世代だから、そこに踊らされることなく、自分達独自のサウンドを追求していくことができた」

マーティン「そう。少し上の世代は、生々しいというか、ハードというか、要するにパンクだよね。よりパンクな音が中心だったと思うんだけど、そこに今のR&Bとかエレクトロニック・ミュージックの流れが登場して……自分達はちょうどその中間に位置してて、その中で自分達なりの表現を探っていってると思う」

―たとえば、最初の『Cobblestones』(2014年)の頃のコミュニオンズの音って、今と比べるとポスト・パンク寄りで、コールドな感じだったと思うんですね。それが、2年前の『Communions EP』のあたりから今回のアルバム『Blue』にかけて、ぐっとドリーミーで、ポップな感覚が前面に打ち出されていくようになる。その変化は、どのようにして起きたものだったのでしょうか。

マーティン「最初の頃の音が、パンク寄りというか荒削りだったのは、どちらかと言うとレコーディング環境と機材に左右されてるところが大きくて(笑)。仮に今の状況で『Cobblestones』をレコーディングしてたら、もっと暖かくてドリーミーなサウンドに仕上がってたんじゃないかな。そもそも最初に『Cobblestones』を作ったときには何も考えてなかったからね。今はスタジオでできることが増えた分だけ、自分達が本当にやりたい音について意識するようになったんだ」

ヤコブ「たしかに当時は何も意識してなかったかもしれないけど、個人的に、あの作品はあのままの形で良かったと思ってる。あれがまさに今ここに至るまでの最初の一歩なんだよ。そこから確実に進化して成長し続けているし、あの『Cobblestones』の中ですら自分達が成長してるのが見て取れるんだ」

マーティン「それに、常にそのとき自分の状態が作品に反映されるってことがあるからね。作品を作ってからわかる部分もあるし、出来上がった作品を聴いて、自分はこんなことをやりたかったんだと知って、その上で次はこんなことをしたいと新たな欲が出てきたり。そうやって常に変化していくものだからね」

―今のコミュニオンズの煌めきとか魅力というのは――少し意地悪な言い方をすると、やはり“若さ”と結びつけて語られるところが大きいと思うんですね。この先、キャリアを経て年齢を重ねていくにつれて、そうしたコミュニオンズの煌めきとか魅力というのは、どう変化していくと思いますか。

ヤコブ「いわゆるピュアで新鮮な魅力みたいなもの……は、すっかりなくなってしまうのかもね(笑)

マーティン「今の自分達は、春になって新芽を出したばかりの木みたいな状態で、フレッシュな勢いがある。けど、たとえ秋になって枯れ木になったとしても、果実が実る。本当のお楽しみはそれからだよ。純粋さと引き換えにリンゴを食べ尽くしてやるんだ(笑)。そこで初めて大人になるんだろうね」

ヤコブ「年を取ってからも、純粋さをウリにしたお子様向けの音楽をやるつもりはないよ」

マーティン「作品や年齢と共に自分自身も変化していくからね。この先どういう方向に進むのかわからないけど、より自分達にとってパーソナルな表現を追求していくことになるんじゃないかな。今はまわりの色んなバンドと比較されることが多いけど、年数を重ねるにつれて独立した存在になっていくと思うから、その意味でもね」

ヤコブ「本当にそうだね。作品を通して自分達の歴史を積み重ねていくというか、自分達のカラーがどんどん濃くなっていくんだと思う。たとえ年を取って若さが失われたとしても、自分が自分であることには変わりないんだから」

photo Riku Ikeya
interview & text Junnosuke Amai
edit Ryoko Kuwahara

blue

Communions
『Blue』
(Fat Possum / Hostess)
※ボーナストラック4曲、歌詞対訳、ライナーノーツ
1.
Come On, I’m Waiting
2.
Today
3.
Passed You By
4.
She’s A Myth
5.
Midnight Child
6.
Got To Be Free
7.
Don’t Hold Anything Back
8.
Take It all
9.
It’s Like Air
10. Eternity
11. Alarm Clocks
12. It’s Like Air (Live)*
13. Midnight Child (Live)*
14 Eternity (Live)*
15. Got To Be Free (Live)*
*日本盤ボーナストラック

Communions
2014年にMartinとMads Rehof兄弟と高校からの友人Jacob van Deurs Formann、Frederik Lind Koppenの四人で結成され、地元デンマークはコペンハーゲンで活動を開始。当時17歳~21歳と言う若さとストーン・ローゼズ×ザ・リバティーンズと評されたサウンドで瞬く間に世界中で話題に。これまでにシングル2枚、EP2枚をリリースし、ここ日本でも7インチ『Communions EP』は予約の時点で完売するなどインディーキッズの間で大きな話題となった。そして2017年2月デビューアルバム『ブルー』をFat Possumからリリース。サマーソニック2017にも出演が決定。
http://hostess.co.jp/artists/communions/

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NeoL/ネオエル

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