なぜあの人とはうまく「会話」が成り立たないのか?ーー“4つの感覚タイプ”を知れば、コミュニケーションは円滑になる
コミュニケーション総合研究所代表理事の松橋良紀さん。そんな松橋さんに「コミュニケーションの極意」についてお話しいただくこのコーナー。第13回目は「どんな人とでも会話ができるようになるコツ」についてです。
職場に「ちょっとこの人と話しにくいな…」という人はいませんか?これから紹介する“4つの感覚タイプ”を知れば、きっと円滑なコミュニケーションができるはずです。突然ですが、皆さんは海と言えば何をイメージしますか?
「青い海、青い空、白い砂浜が見えます」
「波の音が聞こえます。水辺で遊んでいる子供の声も聞こえます」
「焼けた砂を踏みしめる感じ。潮の匂いを思い出します」
「3年前、大渋滞で6時間もかかったのを思い出す。海で飲んだハイネケンがうまかった。」
このように、海というテーマでも、思い描くイメージは人それぞれです。
それぞれに思い描くイメージの違いが、人間関係の大きな壁を作っているのです。
会話が成り立たないのは「感覚のタイプ」が違うから
「彼女の話す内容は、感覚的すぎて何を言っているのかわからない」
「あの人は理論ばかりで、話すのがめんどうくさい」
このようなことが起きるのは、感覚のタイプが違うことが原因です。この感覚のタイプについては、大きく4つに分けられます。
視覚タイプ、聴覚タイプ、体感覚タイプ、理論タイプです。
私には右手と左手がありますが、よく使うのは右手です。同じように、誰もが4つの感覚を持っていますが、利き感覚というべきものが人それぞれにあります。4つの感覚を、どれも同じように使っているわけではありません。ほとんどの人はいずれかの感覚を優先して使っています。
自分がどのタイプなのか気になりますよね。
あなたは感動した映画の感想は、考えてみてください。それで判断してみましょう。
1.「見どころは爆破シーンがあってね!それが凄かったんだ」
2.「クライマックスでのセリフが心に響いた。音楽もよかったね」
3.「なんかとにかく感動した!涙が出た。ジーンとした」
4.「構想10年というだけあってストーリーもよかった。監督の意図がよく出ていた」
1は視覚タイプ、2は聴覚タイプ、3は体感覚タイプ、4は理論タイプです。このように、感覚によって、表現方法がまるで違っていきます。それでは、それぞれの感覚の特徴を見てみましょう。
1.視覚タイプ
・考える時やイメージするときに、上方を見る傾向が強い。
・身なりはきちんとして、おしゃれ。人にどう見られるかを気にかける。
・整理整頓を心掛ける。見た目が大事なので、部屋や机の上はキレイ。
・声のトーンが高め。
・話がよく飛ぶ。
・言葉で出される指示を覚えにくい。
・話がよく飛ぶ。
・絵や動画でイメージしたことを言葉にするのは、早口で話さないと追いつかないため、早口で話す傾向が強い。
・デザイナー、ファンション関係などに多い。
2.聴覚タイプ
・考えるときやイメージするときには、目を左右に動かす傾向がある。
・言葉を大切にする。
・音に関する言葉で表現することが多い。
・言葉で伝えられたことを、そのまま繰り返すことが容易にできる。人の言葉をよく覚えている。
・電話好き。メールするより電話しちゃえ、という傾向がある。
・音楽好き。
・音に敏感。
・擬音を多用する傾向がある。
・営業マン、販売員、コールセンター、アナウンサーなどに多い。
3.体感覚タイプ
・考える時やイメージするときには、目を下方に動かす傾向がある。
・感性が豊か。
・「という感じ」という言い回しが多いので、感覚的だねとよく言われる。
・感触、感覚に関する言葉で表現することが多い。
・感じながら話すので、話すテンポは遅くなる。ゆっくりと話す。
・声のトーンは低め。
・動くスピードはゆったりしている。
・早口でたくさん話されると、ついていけないことがある。
4.理論タイプ
・常に理論的な話をする。
・筋道が通っているかどうか、理にかなっているかどうかを気にする。
・理論やウンチクが好き。
・数字を入れて具体的な表現する。
・落ち着いた話し方をする。
・長い文章や、複雑な文章を話す。話が長い傾向がある。
・メールも、一文一文が長くなりがち。
・新商品など、新しいもの好き。
・エンジニアや士業、経理職などに多い。
では、それぞれのタイプが使う言葉を紹介します。
あなたが好んで使う言葉はどれでしょう?あなたがなかなか理解できないあの人はどれでしょう? この言葉の使い方で、タイプを判断できます。
1.視覚タイプ
視る、絵、焦点、想像、眼識、場面、空白、描く、見晴らし、輝く、反射する、明らかにする、調べる、見つめる、焦点を合わせる、見通す、図示する、注目する、見通し、暴露する、下見、見る、示す、探査する、心に描く、見張る、かすんだ、暗い、目に入る、注目する
2.聴覚タイプ
言う、アクセント、リズム、共鳴する、音響、単調、鳴り響く、たずねる、強調する、聞き取れる、澄んだ、告げる、批評、聞く、響き、怒鳴る、無言、話す、沈黙、不協和、静か、うるさい、聴く、伝える、呼びかける、調子を合わせる、説明する、訴える、論じる
3.体感覚タイプ
触る、扱う、接触させる、押す、擦る、堅い、温かい、冷たい、粗い、捕まえる、押し、圧力、敏感な、歪み、手応えのある、緊張、感触、固まった、柔らかい、掴む、握る、創る、堅固な、重い、滑らか、苦しむ、感じる、把握する、頭に入る、腑に落ちる、取り上げる
4.理論タイプ
他の3つのように言葉の傾向はありません。数字や理論が中心となります。
どのタイプにも対応できるようになるには?
1.視覚タイプには?
「君の話は見えない」という相手は、間違いなく視覚タイプです。色、形、大きさなど見える話をしましょう。表や図、写真、イラストを多用するのも効果的です。
2.聴覚タイプには?
言われる言葉をイメージさせましょう。「それをやったら『すごいね!』って周りのみんなに言われますよ」
3.体感覚タイプには?
「うれしい」「かなしい」「傷ついた」など、感情を言葉にして伝えましょう。体感覚タイプにはゆっくり目で話すようにしましょう。
4.理論タイプには?
数字、データなどの根拠を明確に言うことです。感性や感覚よりも、理屈で納得する傾向が強いので、理論の根拠を紹介しましょう。また、「新」が好きなので「新機能」などが伝わります。
例えば、洋服を売るなら…
1.視覚タイプ
こちらは人気の色ですよ。鮮やかですよね。デザインも素敵ですね。
2.聴覚タイプ
それを着ていたら周りの人は「似合ってるね」って言いますよ。とても調和が取れてますよ。
3.体感覚タイプ
温かいですよ。着心地がいいですよ。フィットしていますよ。気持ちいいでしょう。なんだかいい感じでしょ?
4.理論タイプ
新種の素材で快適な温度を保てます。ボタンが新機構なので脱ぐのが楽ですよ。
今までのタイプより120%アップしています。
それぞれ視覚の国、聴覚の国、体感覚の国、理論の国に住んでいるといっていいほど、言葉や思考パターンが変わります。あの人とうまく話がつながらないのは、このような感覚の違いが原因かもしれません。
自分はどの傾向が強いのか?あの人はどの傾向なのか?
これを知ることにより、より良いコミュニケーションが取れるようになりますよ。
松橋良紀(まつはし・よしのり)
コミュニケーション総合研究所代表理事/一般社団法人日本聴き方協会代表理事/対人関係が激変するコミュニケーション改善の専門家/コミュニケーション本を約20冊の執筆家
1964年生青森市出身、青森東高校卒。ギタリストを目指して高校卒業後に上京して営業職に就くが、3年以上も売れずに借金まみれになりクビ寸前になる。30才で心理学を学ぶと、たった1ヶ月で全国430人中1位の成績に。営業16年間で、約1万件を超える対面営業と多くの社員研修を経験する。2007年にコミュニケーション総合研究所を設立。参加者が、すぐに成果が出るという口コミが広がり出版の機会を得る。NHKで特集されたり、雑誌の取材なども多く、マスコミでも多数紹介される。
約20冊で累計30万部を超えるベストセラー作家としても活躍。「コミュニケーションで悩む人をゼロにする!」を合言葉に奮闘中。
著書
「あたりまえだけどなかなかできない聞き方のルール」(明日香出版社)
「相手がべらべらしゃべりだす!『聞き方会話術』」(ダイヤモンド社)
「人見知りのための沈黙営業術」(KADOKAWA)
「何を話したらいいのかわからない人のための雑談のルール」(KAODOKAWA)
「話し方で成功する人と失敗する人の習慣」(明日香出版社)
公式サイト http://nlp-oneness.com
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