女性の「グチ」は正面から受け止めるな!“避雷針”になれ!――山口拓朗の「夫婦円満法」
今年で結婚20年目。2度の離婚危機を乗り越えて、今ではお互いが相手を認めて応援し合い、それぞれのビジネスを発展させている山口拓朗さん、朋子さんご夫婦。拓朗さんは文章の専門家として、これまでに著書を10冊以上出版。奥様の朋子さんは主婦の起業を支援するオンラインスクール「彩塾」の塾長として、これまでに600名以上の門下生を輩出。2016年から夫婦そろって中国での講演をスタートさせるほか、「夫婦コミュニケーション」をテーマにした講演活動にも力を入れています。
▲山口拓朗さん・朋子さんご夫妻
しっかり仕事でパフォーマンスを上げるためにも、家庭での「火種」はできる限りなくしていきたいもの。そこで今回から山口拓朗さんが自身の経験や本などから編み出した「夫婦円満法」をシェアいただくコーナーをスタートさせました。第1回は「女性のグチは正面から受け止めるな!」です。
赤ちょうちんでクダを巻き、帰宅したがらないダンナたち…
Aさん「家に帰っても女房のグチを聞かされるだけだから…」
Bさん「うちもだよ。こっちは疲れて帰ってきたというのに、たまったもんじゃないよな」
Aさん「まったくだよ。仕事で上司にネチネチ言われて、家でもグチに付き合わされていたんじゃ、心が休まるときがないよ」
Bさん「ホント同感、同感」
そんな愚痴をこぼしながら(お互いの傷を舐め合いながら?)居酒屋で酒をあおるビジネスパーソン。“あるある”な光景ではないでしょうか。なかには奥さんのグチに付き合うのが嫌で、奥さんが寝た頃合いを見計らって帰宅する人もいます。気持ちはわかります。まあ、そんなことをしたところで、翌朝に「まったく、いつも飲み歩いてばかりで、あなたは気楽なもんね。私は24時間、家事と育児で手一杯だというのに…」とネチネチ言われるのがオチなわけですが…。
名著が明らかにする女性の特性とは?
こんなふうに書くと「女性はグチっぽい」と断定しているように聞こえるかもしれませんが、正確に言えば、女性はグチっぽいのではなく、男性に比べておしゃべりが好きな傾向にあるのです。
男女の脳の特性の違いを解き明かしてベストセラーとなった『話を聞かない男、地図が読めない女―男脳・女脳が「謎」を解く』(主婦の友社)には、こんなことが書かれています。
男の脳は機能ごとの区分けがはっきりしていて、情報を分類し、保存する能力に優れている。難題続きだった一日の終わりには、今日何があったかを整理して、けじめをつけることができる。女はそれができず、うっとうしい感じだけがいつまでも頭のなかをぐるぐると回り続ける。
そのため女がやっかいごとを振りはらうには、それについてしゃべって問題点を認知するしかない。だから今日起こったことを女が話すのは、結論や解決策を見つけるためではなく、憂さを晴らしてすっきりするのが目的なのだ。
つまり、おしゃべりは女性特有のクセなのです。また、同じくパートナーシップの名著として知られる『ベスト・パートナーになるために―男と女が知っておくべき「分かち愛」のルール 男は火星から、女は金星からやってきた』(三笠書房)にはこういう記述もあります。
精神のやすらぎを得るために、女性は過去、現在、将来のあらゆる心配事を言葉にして吐き出す。たとえ、どうにもならないとわかっているテーマでも、口に出さなければ気がすまない。話せば話すほど彼女は気持ちが楽になっていく。これが女性の救われ方である。
おしゃべりは、女性にとって自己防衛手段のひとつでもあるのでしょう。女性に関するこの真実を知っているのと知らないのとでは、パートナーシップの築き方に大きな差が生まれます。知らなければ対処のしようがありませんが、知っていれば、対処のしようがあるはずです。
女性の気持ちに寄り添いながら話に耳を傾けよう
たとえば、あなたの奥さん(あるいは彼女)がこんなことを言ってきたとします。
「ねーねー、聞いてよ。今日スーパーのレジに並んでいたの。夕方で大混雑。すごい列だったの。私がちょっとよそ見していたら、私の前に急におばさんが割り込んできたの。こっちは5分近く並んでいたのに、ふざけていると思わない? もうムカっ腹が立って、思わずそのおばさんをにらんだの。そうしたらどうしたと思う? 驚いたことに〜<エンドレス>」
前述の名著に答えを求めるなら、女性がこのようなおしゃべりをするのは本能、あるいは習性のようなものです。グチを言うことで、彼女は、彼女自身を救っているのです。
だから男性は「おおー、また自らを救っているんだな!」と惚れ惚れしながら女性のおしゃべりに耳を傾けていればいいのです。筆者も今では惚れ惚れしながら妻の話を聞いています。
しかし、おしゃべりが女性のクセであることを知らない男性は、次のようなキケンな対応をしてしまうのです。
【キケンな対応1】会話を避ける
「ちょっと今疲れているから、あとにしてくれない?」
【キケンな対応2】不機嫌な様子で話を聞く
女性のおしゃべりと向き合わず(例:テレビを観るなどしながら)、不機嫌・不快な様子で話を聞く
【キケンな対応3】相手を責める
「横入りくらい許してやれよ。心が狭いなあ」
【キケンな対応4】理路整然と解決策を示す
「前の人との間にスペースを作るのが悪いんだよ。そういうときは、しっかりと間合いをつめないと」
いずれの対応も、女性にとって嬉しいものではありません。ある女性はガッカリし、ある女性は寂しくなり、ある女性はイラっときて怒りを爆発させます。逆襲に出て男性側にネチネチと嫌味をぶつけてくる女性もいるでしょう。そうなると、とたんに険悪なムードが流れます。そして、やがて激しいバトル(もしくは、心の通わない冷戦)に突入するのです。
「1〜3の対応はまだしも、4の対応(理路整然と解決策を示す)は悪くないのでは?」という男性も多いでしょう。女性のためを思ってアドバイスをしているのに、なぜそれがいけないの?と。
結論を言うと、4も1〜3同様に男性がしてはいけない対応です。女性のためにアドバイスをする——それが余計なのです。そもそも女性のおしゃべりの目的は「悩み相談」ではありません。ましてや、正論を振りかざして問題解決などしてもらいたいとは思っていません。これが男性にとって最も理解に苦しむところですが——女性は「ただ話を聞いてもらいたいだけ」なのです。
男性がとるべき対応は、そんな女性の目を見て、その声に耳を傾け、女性の気持ちに寄り添うように相づちを打ち続けること——それだけなのです。問題解決や批判をしそうになったら、奥歯をグっと噛み締めて我慢しなければなりません。相手のために「よかれ」と思っても、決してアドバイスをしてはいけません(直接的な言葉でアドバイスを求められない限りは)。
ただひたすら話に耳を傾けて、相づちを打ち続ける。この対処法を徹底していると、女性は、しだいに気持ちがスッキリして(表情が明るくなり)、話を収束へと向かわせます。男性にしてみれば少し長い時間に感じられるかもしれませんが、そのあとバトルや冷戦で長期化する時間を考えれば、たいした時間ではありません。
驚くことに「ちゃんと話を聞く」という対応をするだけで、女性は夫(彼)に理解されている、愛されている、と感じてくれるのです。
おしゃべり&グチを聞くときは「避雷針」になろう!
一方で、男性は本能的に問題解決をしたがる“性”であるため、慣れるまでは「女性のおしゃべりやグチにただ耳を傾ける」ことが難しく感じる人もいるはずです。ふだん社会では、人の話を聞いたうえで、何かしらの対応をしたり、行動を起こしたりする役割も求められています。しかし残念ながら、同じことを女性に対してやってしまうと、見事に失敗してしまうのです。理由はこれまで説明したとおりです。
そんな男性陣におすすめの「女性のおしゃべり&グチの聞き方」はズバリ「避雷針になる」です。ご存知のとおり、避雷針というのは「雷を呼び込み、地面へと電流を逃がす」役割を担っています。つまり、女性のおしゃべりやグチも、受け入れるやいなや足元から流してしまえばいいのです。決して受け止めてはいけません。
女性のおしゃべりやグチを受止めると、男性はつい問題の良し悪しをジャッジして、問題解決やアドバイス、あるいは批判をしたくなります。この状況に陥らないための秘策が「避雷針になる」なのです。
女性のおしゃべりを愚直に受止めてしまうと、男性自身のストレスにもなります(まじめな人であればあるほど)。ストレスを溜め込み続ければ、男性自身が心を病んでしまう恐れもあります(どこかのタイミングで爆発することも)。それでは本末転倒です。
くり返しになりますが、女性がおしゃべりなのは問題を解決してもらいたいからではありません。「ただ聞いてもらいたいだけ」なのです。したがって、男性は耳から入ってきた情報にジャッジを加えずに、フラットな状態で足元から地面に流してしまえばいいのです。
「2段階プロセス」で、良好なパートナーシップを築こう!
耳から入れたおしゃべりを地面へと流す対処法「避雷針になる」は、右の耳から左の耳へと“聞き流す”対処法とは似て非なるものです。「聞き流す」は「聞いていない」とほぼ同義です。避雷針の場合、自分のからだを通して足元に流します。しっかりと相づちを打つのは、相手の言葉を受け入れている証拠なのです。<受け入れはするけど、受け止めはしない>。これが避雷針に求められるサジ加減です。
おもしろいもので、女性のおしゃべりに対して避雷針になるだけで、パートナー(奥さんや彼女)は安心して、男性への信頼と好意を増幅させます。つまり、その男性を好きで居続けるのです。もちろん、それは男性にとって悪いことではないはずです。「女性がおしゃべり好きだという特性を知る → 避雷針になっておしゃべりを聞く」の2段階プロセスで、良好なパートナーシップを手に入れましょう。
著者:山口拓朗
伝える力【話す・書く】研究所所長。「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」「売れるキャッチコピー作成」等の文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う。『伝わるメールが「正しく」「速く」書ける92の法則』(明日香出版社)ほか著書多数。起業家の妻・山口朋子と「対等な夫婦パートナーシップで幸せな人生を作る方法」など夫婦関係の築き方をテーマにした講演も行っている。『世帯年収600万円でも諦めない! 夫婦で年収5000万円になる方法』(KADOKAWA/午堂登紀雄、秋竹朋子著)にも夫婦で取り上げられている。
山口拓朗公式サイト
http://yamaguchi-takuro.com/
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