体験を伝える―『ガジェット通信』の考え方

面白いものを探しにいこう 本物を体験し体感しよう 会いたい人に会いに行こう 見たことのないものを見に行こう そしてそれをやわらかくみんなに伝えよう [→ガジェ通についてもっと詳しく] [→ガジェット通信フロアについて]

2017年ヒット商品から見えてきた、現代のビジネスパーソンに「求められているもの」とは?

2017年ヒット商品から見えてきた、現代のビジネスパーソンに「求められているもの」とは?

多くの人に支持されているヒット商品、サービスは、今の世の中の流れや消費者の嗜好を色濃く反映しているものだ。新年度になり、新しい仕事に取り組んでいる人も多いだろうが、どんな仕事においても「これからのヒットの傾向」をつかんでおけば、的を射たビジネスアイディアが浮かび、自身の仕事に大いに活かせそうだ。

そこで、元『日経トレンディ』編集長で、現在は商品ジャーナリストとして活躍する北村森さんに、2017年のヒット商品の傾向を踏まえ、これからの動きを予測してもらった。

f:id:itorikoitoriko:20170407160829j:plain

北村 森さん

1992年に日経ホーム出版社(現・日経BP)に入社し、『日経トレンディ』『日経おとなのOFF』などの編集に携わり、2005年に『日経トレンディ』編集長に就任。2008年に商品ジャーナリストとして独立し、製品・サービスの評価、消費トレンドの分析を行うほか、地方自治体と連携し地域おこしのアドバイザー業務などに携わっている。著書に『ヒット商品航海記』(日本経済新聞出版社:共著)、自身の体験を元にしたノンフィクション『途中下車』(河出書房新社)など。

消費者が「ほしいと思っていなかったこと」「あきらめていたこと」に踏み込む

昨年から足元にかけて、明確に見えてきた「ヒットの傾向」が2つあります。

1つ目は、「消費者が欲しいと思っていなかったもの」に踏み込んでいること。

消費者ニーズとして顕在化している時点で、誰かほかの人がすでにそのニーズに応える商品づくりに着手しているはず。そこから一歩踏み込み、消費者が考えてもいなかったこと、もしくは「無理だろう」とあきらめていたことを実現できれば、誰もが驚き、心の奥底にあった消費欲が掘り起こされます。

例えば、ダイソン初のヘアドライヤー「Dyson Supersonicヘアードライヤー」は、大風量であっという間に髪が乾く点が支持されました。ロングヘアの女性の多くは、髪の毛を乾かすのに10分を優に超える時間をかけていましたが、「仕方ない」とあきらめていた人が多かったはず。しかし、このドライヤーを使えば7〜8分と半分ちょっとで乾かすことが可能です。48,600円~と高価ながら、「これならば惜しくない!」と多くの女性が殺到しました。f:id:itorikoitoriko:20170407161101j:plain

▲形状も特徴的な「Dyson Supersonicヘアードライヤー」

2つ目は、「○○はこうあるべき」という、作り手の主張が強く感じられること。

予想しない角度から「こうあるべきだ」と主張されると、人は心を動かされます。例えば、三重県のトマト農園「デアルケ」が発売する「極上200%トマトジュース」は「トマトジュースは糖度である」という旗印を掲げて大ヒットしました。2015年に人気に火が付き始め、昨年に大ブレイク、今も4カ月待ちの状態が続いています。先に挙げたダイソンのヘアドライヤーも、「ヘアドライヤーは大風量・短時間で乾かせるものであるべき」と主張しています。

これら2つの傾向からわかるのは、現在のヒットの条件は「マーケットイン」型ではなく「プロダクトアウト」型に回帰しているということ。すなわち、消費者が何を欲しているのかをのんきにリサーチしているようでは後れを取るだけであり、提供側の「この商品はこうあるべき」という思いを声高に主張してこそ、消費者は心を動かされるのです。

「長距離バスは安くてしんどいもの」を払しょくする「豪華完全個室バス」

以上2つの傾向に当てはまり、今年ヒットが期待できそうな商品、サービスをいくつかご紹介します。

今年のキーワードとして挙げられるのは、「豪華個室」。トレンドに敏感な方であれば、豪華寝台列車として話題のJR東日本「トランスイート四季島」(5月1日運行開始予定)、JR西日本「トワイライトエクスプレス瑞風」(6月17日運行開始予定)を思い浮かべるかもしれませんね。確かにいずれも、「豪華列車旅」人気の火付け役となったJR九州の「ななつ星」に続くと期待されていますが、私が注目しているのは、長距離バス「ドリームスリーパー」です。

このバスは1台11席で、壁と扉で天井まで仕切られた「完全個室」。おおよそタタミ一畳分のスペースながら、ケーブルやコンセントはもちろん、プラズマクラスターイオン発生器やオーディオ設備も完備。窓は大きく開放感があり、旅情も十分感じさせてくれます。シートはほぼフラットに倒すことができるので、身体への負担もありません。バス内にはトイレ、パウダールームもあり、ほぼホテル仕様。私は池袋22:50発、大阪なんば6:40着の便を利用しましたが、長距離バスにありがちな「体バリバリ」になることはなく、到着後すぐに仕事ができました。

ここまで快適で、かつプライバシーを守ってくれる長距離バスは、まずありません。「長距離バスだから、深夜だから、窮屈でもプライバシーがなくても仕方ない」とあきらめていた消費者を、見事に裏切ってくれました。料金は20,000円(東京~大阪間。5月8日~6月30日の月~木は18,000円))と、新幹線のグリーン車よりも高い設定ですが、外国人観光客の急増でホテル料金が高騰している折、「新幹線+ホテル代を考えればこちらが得」と考える人は多いでしょう。

何より、「こんなバスに乗ったんだよ!」と誰かに語りたくなるのが高ポイント。「インスタ映え」というキーワードは今年もヒットの一要素ですが、思わず室内をパシャパシャ撮影し、SNSにアップしたくなるはずです。

f:id:itorikoitoriko:20170407160826j:plain
1 2 3次のページ
リクナビNEXTジャーナルの記事一覧をみる
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。