「カレーパンは丼である」!日本独自のパン文化はこうして生まれた
「朝ごはん」と言ってトーストを焼いたり、「昼ごはん」と言いながらハンバーガーを食べるなど、ごはん=パンという人が増えて久しいように思います。しかし元来、コメ食だった日本人がなぜこれほどまでにパン好きになったのでしょう? この謎に迫り、パン食の始まりから現在に至るパンブームの礎となったパンの歴史を紐といたのが、作家・生活史研究家である阿古真理氏の『なぜ日本のフランスパンは世界一になったのか』です。
本書は、日本のフランスパン事情を考察するにとどまりません。副題に『パンと日本人の150年』とあるように、日本のパン食の歴史そのものに焦点をあてています。
「最初の出合いは西洋人が鉄砲とキリスト教を持ち込んだ戦国~安土桃山時代、西洋史的にみれば大航海時代にあったが、本格的に生活に入り込むきっかけは幕末の開国である」(本書より)
本書いわく兵糧としての可能性に注目された幕末に、本格的にパンづくりが始まりました。軽くて携帯しやすく消化によい、などの理由から兵糧としてのパンの研究が進められたのだといいます。そして武士や軍人によって広められ、時代とともにコメの代用食として注目されていきます。さらに、明治天皇が食べたことにより、「銀座木村屋」で発明されたあんパンが世に広まりました。「あんパンの発明は日本人がパンを受け入れるきっかけになったのだが、それだけでなく、後に続くさまざまなパンの考案につながっていく」(本書より)
著者のいうように、カレーライスや親子丼、おにぎりなどご飯とおかずを一緒に食べる文化が多様な日本において、菓子パンや惣菜パンが生まれたのは必然だったのかもしれません。「~具材をひと続きに味わえるパンは、親子丼やカレーライスのご飯と具材の一体感に通じる。つまり、私たちはパンを和食化したのである」(本書より)。その象徴ともいえるカレーパンは1927年、労働者のために誕生しました。当時流行っていたカレーを入れ、とんかつを模して揚げたパンは、安くて腹持ちがいいと工員たちに歓迎されたといいます。
本書では、ほかにもキリスト教との関わりを含む西洋のパン食文化や西洋人が抱く日本のパンに対する印象など、パンにまつわる文化・歴史が盛りだくさんとなっています。読書のお供はもちろん、菓子パンや惣菜パン。一層楽しめること請け合いです。
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