銀座のホステスが最初に学ぶ、話題づくりの「11文字」とは?

コミュニケーション総合研究所代表理事の松橋良紀さん。そんな松橋さんに「コミュニケーションの極意」についてお話しいただくこのコーナー。第10回目は「初対面でも会話が弾むテクニック」についてです。

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「昨日の野球、WBCはすごかったですね~」

「そうそう、今度こそは優勝だね」

このように共通の話題で雑談ができると、一気に距離が縮まりますよね。

でも興味や趣味は人それぞれ。誰もが関心を持ってくれる「雑談のネタ」になるようなニュースを見つけるのは難しいものです。

「何を話したらいいかわからない」というので、雑談が苦手という方は多いです。

次のような相談をいただくのは一度や二度ではありません。

「昼休みにみんなで雑談をしているんですが、その輪に入れずに職場で浮いている」

「初対面の人とは何を話したらいいかわからなくて、いつも困っている」

そこで、銀座のホステスさん達が最初に学ぶと言われている「雑談の話題の作り方」をお伝えしましょう。

まずは覚えよう!話題づくりのキーワード「木戸に立ち掛けし衣食住」

ホステスさんは、話を盛り上げるのが仕事です。

特に初対面で気に入ってもらえなければ、商売になりません。

ですから、会話を盛り上げる技術が必須となります。

そのホステスさんたち御用達なのが「木戸に立ち掛けし衣食住」という

話のネタになりそうな11項目の頭文字をまとめたものです。

…気候

…道楽(趣味、テレビ、映画、スポーツ)

…ニュース

…旅

…知人

…家族

…健康

…仕事

…ファッション

…グルメ

…住まい、暮らし、家

もし会話に困ったら、「キ・ド・ニ…」と順番にネタを探してみましょう。会話の糸口になるだけでなく、話題を変えたいときにも役立ちます。

今回はこの中から、コミュニケーション初心者にもおすすめの6つ「キ・ド・ニ・タ・シ・住」をピックアップしてご紹介します。

人は共通点のある人や似た雰囲気の人を好きになるので、「共通の話題を探す・つくる」ことは相手と関係を深めるのに大事なテクニックです。

:気候の話題

これは実践している人も多いかと思いますが、天気や気温など気候の話は、一番最初のきっかけ作りに最適です。

「今日はとてもいいお天気で気持ちいいですね」

「雨がすごかったですね」

「〇〇にもう桜が咲いていましたね~」

同じ場所にいるのですから、相手も同じ天気や気候を体験しているはず。お天気や気候の話題は、相手との共通点ですので、ここからスタートです。

天気や気温など気候の話で、相手の話すペースや間の取り方などを観察し、距離感を測りながら次の話題を探していきます。

:道楽(趣味)の話題

スポーツや音楽、映画など好きなことの共通点が見つけやすく、盛り上がりやすい話題です。

スポーツが趣味なら、スポーツニュースから自分の趣味の話題につなげるといいでしょう。

「私はよくゴルフに行きますが、ゴルフはされますか?」

「いえ、やったことがないんです」

こういった返事なら、すぐに次の話題です。Yes/Noで答えられる質問ではなく、相手が話しやすい質問をしましょう。

「お休みの日はどんなことをされているんですか?」

自分の趣味を先に開示したあとなら、相手も返してくれやすいです。

そして、休みの日に何をしているかを聞くことで、相手のプライベートやひょっとしたら家族のことも分かるかもしれません。

「家族でドライブ。まだ子どもが小さいんで」だと子育て中なのが分かるし、「ひたすらゲームです」「部屋にこもって音楽鑑賞」などだったら、もしかして一人暮らしかな?どんなゲームをやるんだろう?と話題も広げやすくなります。

:ニュースの話題

「そういえば、今日のニュース見ました?◯◯がすごいですね~」

そのニュースを知っている人なら、「どう思いますか?」と、相手のコメントを引き出すことで、相手の価値観や考え方を知るきっかけにします。

もしそのニュースを知らない人なら、分かりやすく手短に話してみて、相手の興味や関心のありかを探ります。

スポーツや芸能など、話題になっているニュースは一通りチェックしておくのがポイントです。政治と宗教は、アイデンティティにもつながる部分なので、避けるのが無難です。私の経験からすると…関西地区の方なら、阪神が活躍していないときの野球の話題も避けた方がいいかもしれません(笑)

:旅

人をいい気分にさせるために、心理学的にとても簡単な方法があります。

楽しかった体験をありありとイメージしてもらって、“インステイト”してもらえばいいのです。“インステイト”とは、五感を使ってそのイメージの中に浸ってもらうことをいいます。

楽しい体験といえば、やはり旅行の思い出が一番という人が多いです。

「今日はけっこう暑いですよね。まだマウイに行った時の方がよかったですよ。マウイは毎日33℃くらいだったかな。でも今まで行った旅行では、最高の場所でした…〇〇さんはいかがですか?一番思い出に残っている旅行先はどちらですか?」

「うーん、エジプトかな」

「へえ~いいですね!どこを観て周られたんですか?」「現地でどんなお話を聞かれたんですか?」「お食事はいかがでしたか?」

こんな風に五感を総動員したイメージを話してもらううちに、相手はとても楽しい気分を思い出していくことでしょう。

すると自動的に、相手をしているあなたに対しても、かなりの好感を持つようになります。

:仕事

場があたたまってきたら、次は一歩踏み込んで仕事関連の話題をしてみてください。

「どんな関係のお仕事をされているんですか?」

この質問に対して、「会社員です」「まあ、事務の仕事をやってます」「電気関係です」と、かなり大まかに話す人は、最初から自分の職業についてあまり話したくないと判断した方がいいでしょう。

このような対応をする人には、意外にも誰でも知っている一流の会社に勤めている方が多くいます。

なぜ業種や社名を名乗りたくないかというと、「最初から会社を名乗ると嫌味っぽく感じられそうだから」「その会社のイメージを押し付けられるのが嫌」「自社についてマイナスのニュースが話題になっている」「すごいね!と言われるのが面倒」などがあるようです。

相手が勝手にベラベラとプライベートを話してくれると楽ですが、そういった方は多くないです。相手にしてみたら、あなたが安心できる人だとわかるまでは、警戒心を持って接してくるのが普通です。

ちなみに、「仕事は何をしていますか?」という質問だとダイレクトすぎるので、「どんな関係ですか」くらいにとどめておくのがおすすめです。

:住まい、暮らし、家

「キドニタチカケシ」の話題でいまいち盛り上がらなければ、「衣食住」で質問してみましょう。

「ここの会場は東京駅から徒歩5分ですから、ほんとに便利ですね。私の自宅は阿佐ヶ谷駅なんです。帰るにはとっても便利なんですけど、いつも電車が止まるんでほんとに困るんですよね。◯◯さんはどちらに住んでいらっしゃるんですか?」

と、住んでいる場所をネタにするのは会話テクニックの基本。

相手が住んでいるのが知らない場所なら、ここからどれくらいの時間がかかるから始まって、名物やら名所など聞きやすいことがたくさんあります。地元ネタを嫌いな人は少ないので、興味を持って聴き役に徹するのがポイントです。

と言っても「木戸に立ち掛けし衣食住」を思い出しながらただ雑談をすればいい訳ではありません。雑談には“ルール”があります。より信頼関係を深めるためのコツをいくつかご紹介しましょう。

【雑談のルール1】自己開示はポジティブな話題で

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相手との距離を詰めていくコツは、自分から自己開示をすることです。

相手を知る前に、まずは自分が安心できる人だと知ってもらう必要があるので、“自分の正体”を早い段階で明らかにするのです。最初に自分の仕事の紹介をして、仕事の面白さを語るのもいいでしょう。ここで気をつけたいのは初対面で「ネガティブな話はしない」「相手を否定しない」ことです。

私の友人の失敗談。

友人の妹が結婚することになり、妹と結婚相手と会ったそうです。

初めて会って、仕事の話をしていたときのことです。

「へえ~なるほど、お仕事は楽しそうですね」

と友人が話したら、

「仕事が楽しいわけないですよ!食うために働いているだけですよ」

その瞬間、友人は大きく失望したそうです。「こりゃ最悪な男と結婚することになったな」と。

結婚して10年たった今、夫婦のトラブルが絶えず、友人は失望したままです。

たまたまかもしれませんが、最初の印象を変えるのはとても難しいです。自虐ネタは相手の関係を密にしますが、ネガティブな話題は人格を疑われます。

自分では気づきにくいですが、暗い話題や悪口を話しているときは、暗かったり意地悪な表情になってしまいます。十分気をつけましょうね。

自分の仕事の話をして自己開示しながら、その際に、相手をほめたり、持ち上げると、さらに距離がぐっと縮まります。

「私、コミュニケーション講師の仕事をしているんですが、〇〇さんのコミュニケーションスキルは素晴らしいです!対人スキルなんて一切必要なさそうですね?」

こう相手に振ってみると、

「はい、私は対人スキルはバッチリなので必要ありません」と言われたことは一度もありません。

それどころか、ほぼ全員が、満面の笑顔で次の様に返してくれます。

「いえいえ!いつも意外だと言われるんですが、こう見えても人見知りで対人関係は苦手なんですよ」

警戒心のひとつに、何か売り込まれるんじゃないかという不安もあるかもしれません。

ですから、自分の仕事の紹介をしながら、あなたには売り込みませんよというメッセージを送るのもいいでしょう。

「私、インターネット関連の広告の仕事をしているんですよ。でも○○さんにはまったく関係なさそうですね?」

【雑談のルール2】共通点を上手に見つける

趣味やニュース、仕事などいろいろ会話を振ってみたけど、どうも共通点が見つからない…なんて経験がある方も安心してください。今相手と一緒に見ているものや同じ体験も、すでに共通点です。

たとえば交流会やパーティー会場なら、同じものを見ているはずです。

「この会場、新しい施設のようですね。気持ちがいいですね」

「先程あいさつした方のお話は、とてもおもしろかったですね」

「このホテルのビュッフェは、なかなか美味しいですね」

すべて、お互いが見ているものや、同じ体験です。

目に入るものはすべて共通です。

共通点を話すことで一体感を築いていくのです。

雑談が苦手だという方へ―「ほんの少し、準備してください」

これまで、会話を始めるきっかけや話題を広げる方法をお伝えしてきましたが、実はそれを意識するだけではまだまだ“初心者”です。大事なのは、常日頃から「練習」すること。

あなたは「雑談の練習」をしたことはありますか?

雑談するために、ちゃんと準備をしていますか?

ほとんどの人は練習もしないし、準備をしていなくて「とっさに雑談ができなくてダメだったんです。自分は会話が下手なんです」と悩みます。

たとえばピアノを全く練習せず、発表会でいきなり上手に弾くことができるでしょうか?

雑談も一緒です。下手だからできないのではありません。練習が足りていないだけです。

何を話したらいいのか、ほんの少しの準備で、誰でも話せるようになります。

「木戸に立ち掛けし衣食住」、ぜひ「覚えて上手に使いこなしてくださいね。

松橋良紀(まつはし・よしのり)

コミュニケーション総合研究所代表理事/一般社団法人日本聴き方協会代表理事/対人関係が激変するコミュニケーション改善の専門家/コミュニケーション本を約20冊の執筆家

1964年生青森市出身、青森東高校卒。ギタリストを目指して高校卒業後に上京して営業職に就くが、3年以上も売れずに借金まみれになりクビ寸前になる。30才で心理学を学ぶと、たった1ヶ月で全国430人中1位の成績に。営業16年間で、約1万件を超える対面営業と多くの社員研修を経験する。2007年にコミュニケーション総合研究所を設立。参加者が、すぐに成果が出るという口コミが広がり出版の機会を得る。NHKで特集されたり、雑誌の取材なども多く、マスコミでも多数紹介される。

約20冊で累計30万部を超えるベストセラー作家としても活躍。「コミュニケーションで悩む人をゼロにする!」を合言葉に奮闘中。

著書

「あたりまえだけどなかなかできない聞き方のルール」(明日香出版社)

「相手がべらべらしゃべりだす!『聞き方会話術』」(ダイヤモンド社)

「人見知りのための沈黙営業術」(KADOKAWA)

「何を話したらいいのかわからない人のための雑談のルール」(KAODOKAWA)

「話し方で成功する人と失敗する人の習慣」(明日香出版社)

公式サイト http://nlp-oneness.com

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