軍事利用されてきた自転車の歴史を辿ってみた。
【自転車部隊、最初の創設】
自転車の軍事利用は時代を100年以上遡ります。
最初に導入されたのは1880年に勃発したボーア戦争です。
この戦争はイギリスがボーア人が建国したトランスヴァール共和国を併合しようとした際起きた戦争で、
この時初めて自転車部隊が双方の軍に導入されました。
つまり自転車の軍事利用が始まって130年、ツール・ド・フランスや市民の足として広がって使われていた頃よりも長い歴史をもっています。
【自転車の軍事利用における利点】
馬と違い食費がかからず、故障しても修理して利用することが出来るという点は当時車も戦車も少ない時代には驚くべきコストパフォーマンスでした。
また戦車では入ることが出来ないジャングルでも通ることが出来、川では担いで渡る事も出来ますし、乗馬ほど訓練を必要としないという点で軍への普及しやすさもあります。
さらにさらに、車と違いエンジン音がしないため隠密性に優れ、特殊任務に重宝されていました。
歩兵よりも当然速く移動できるため、この機動力を軍事利用しない手は当然ありません。
積載性能もあるため、なんと大砲や機関銃を搭載した自転車も作られています。
第2次世界大戦ではイギリス軍やドイツ軍が導入した折りたたみ自転車が存在します。
戦争になんで折りたたみ? と思うかもしれませんが、なんとパラシュートで降下しすぐに組み立て移動するという機動性を重視したものでした。
この発想は今でも採用されており、アメリカ軍では今も自転車部隊が存在します。
その為に米MONTAGUE社はParatrooperという自転車を開発しましたが、なんと7万円で市販されていたりします。
ここまできたら悪い所無くね? 自転車部隊最強すぎるじゃん。
ところがどっこい当然弱点があります。
まず長距離を走るので兵士が著しく疲弊する。
装甲が無い為基本生身をむき出し状態なので防御力0という点です。
その為車の製造コストが下がってからは縮小傾向にあり、国によっては消滅した所も多くあります。
【日本で活躍した銀輪部隊】
海外だけでなくもちろん日本にも存在しました。
それが銀輪部隊です。
1941年にマレー半島の北端に奇襲上陸した日本軍とイギリス軍との戦いが始まります。
わずか55日間1100キロも進撃しなんと南端の町までたどり着きイギリス軍を撃退。
歴史上最高の戦果を挙げるのですが、この作戦の立役者こそこの銀輪部隊です。
当時現地には日本製の自転車が輸出されていた為、現地で徴発し部隊を編成しました。
つまり即興の部隊だったのです。
ですが現地には自転車は多くあったので故障しても部品の調達も容易であり、さらにパンクしてもゴムの木の樹液をパンク箇所の裏側から塗ることでパンク修理が出来るという驚きのメリットが機動性を大幅に上げ、橋を落としながら敗走するイギリス軍を追い詰めるのに大活躍し、当時の新聞でもその活躍は取り上げられたほどです。
銀輪部隊という名前は当時の新聞で名づけられたそうです。
また同年にフィリピンの戦いでも同様に徴発した自転車で編成された銀輪部隊の活躍をしています。
【今でも存在する自転車部隊】
無くなった部隊も多いですが、現在でも活躍しています。
上で紹介したアメリカ軍だけではなく、北朝鮮もカルメギ号という自転車部隊を持っています。
歩兵よりも重要視しており、月に1度120キロ、3ヶ月に1度800キロの山道を走る訓練を行っているそうです。
戦場は舗装されていないのが当然といえば当然なので、マウンテンバイクでの山岳機動を重要視しているとのこと。
またお隣の韓国も北朝鮮との国境沿いを警備する際にはマウンテンバイクで行っています。
ほかにもスリランカも自転車機動部隊を有しています。
にこやかに笑いながら手を振っている光景でとてもほほえましいですが、彼らはテロリストです。
軍隊だけではなく、そのコスパと機動性の良さはテロリストにとっても魅力的な軍事兵器なのです。
ちなみに昔はマウンテンバイクはなかったので、実用車が主流でした。
マウンテンバイクが登場したのは1970年代ゲイリーフィッシャーが発案者なので、今本気で自転車部隊を編成すればマウンテンバイクを使った結構凄い軍隊が出来る気がします。
ですが昔は昔でシクロクロス車が存在していた時代もあるので、当時使われていたようです。
100年以上前に冬の休耕してる畑を突っ走るために自転車馬鹿達が作った自転車なのですから、オフロードが得意なのは明白ですね。
もちろん軍隊が使うからって戦争だけってことはありませんよ。
災害現場での人命救助や物資輸送でも一役買っています。
さらに日本ではこんなショーで活躍してたり。
http://www.youtube.com/watch?v=dg9OyoEcVaw
道具はやっぱり使い方なんですね。
今回の調査で興味が湧いてきたので近いうちにより深く掘り込んで行こうと思います。
ツイッターアカウント:miagi1552
※この記事はGAGAZINEさんよりご寄稿いただいたものです
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