消費税増税で住宅購入の計画はどうなった? 熟年層と若年層で差
日銀の金利政策の影響などで、かつてない低金利が続いている。さらに、2017年4月に予定されていた消費税率引き上げが再延期された。こんななかで住宅展示場を訪れた来場者は、どんな住宅計画を立てているのだろう? 住宅展示場協議会の調査結果から掘り下げてみる。【今週の住活トピック】
「総合住宅展示場来場者アンケート 2016調査報告書」を公表/住宅展示場協議会
熟年層と若年層に違いも見られる、消費税増税や低金利の影響
まず、住宅展示場来場者アンケートの回答者属性を見てみると、世帯主の年齢は、20代14%、30代45%、40代21%、50歳以上20%で、平均年齢は41歳だった。結果を分析する際の世代として、34歳までの若年層(40%)、35歳から49歳までの中年層(41%)、50歳以上の熟年層(20%)に分類している。
家族人数は、2人が17%、3人が36%、4人が32%、5人が8%、6人以上が4%となり、3人と4人で約7割を占めた。また、世帯年収は、300万円未満5%、300万円~500万円未満30%、500万円~1000万円未満52%、1000万円以上13%で、平均世帯年収は682万円だった。
総合住宅展示場への訪問状況については、訪問箇所数が1カ所33%、2カ所32%、3カ所21%、4カ所以上15%で、訪問回数の平均は5.4回、内訳は1回19%、2~3回33%、4~9回31%、10回以上17%だった。
こうして積極的に住宅展示場を訪れている来場者は、消費税増税の延期などの環境の変化を、どう受け止めていたのだろうか?
まず、消費税の増税延期の影響については、「税率アップに関係なく実現しようと思っていた」という回答が61.5%と過半数を占めた。ただし、年代別に見ると、熟年層では「急ぐ気持ちがなくなった」が多くなるのに対し、若年層では「延期になったので計画検討を始めた」が多くなるという違いが見られた。
また、住宅ローン金利の影響については、最多の39.3%が「今の低金利のうちに実現しようと思っている」と回答しており、この回答は若い世代になるほど多くなる。【図表1】出典/住宅展示場協議会「総合住宅展示場来場者アンケート 2016調査報告書」
駆け込みはクールダウン、新たなチャンス到来にもなった2016年
さて、再延期前は、消費税率10%への引き上げ時期が2017年4月だったので、引き上げ時の半年前までに建築工事の請負契約を締結すれば、建物が完成するのが引き上げ後だとしても旧税率の8%が適用される「経過措置」の期限が2016年9月末日だった。つまり、2016年9月中に契約を済ませる「駆け込み需要」が起きることが想定されていた。
ところが、景気が思うように回復していないので、政府は引き上げ時期を2019年10月に再延期することを、2016年6月2日に閣議決定した。これによって、経過措置の期限も2年半延期になった。駆け込みを意識していた層にとっては、じっくり住宅計画を練れたり、設計に時間をかけたりする猶予期間ができたということになる。
増税再延期に伴い、住宅ローン減税の拡充などの関連する税制措置の延長についても、この年の8月24日に閣議決定され、消費税増税の再延期と関連税制の見直しは、11月28日に国会で正式に決まった。じっくり動いても住宅ローン減税の拡充などが利用できることが明確になったので、もともと住宅計画が白紙だったり、増税を控えてあきらめていた層にとっては、増税前に契約できるチャンス到来となったわけだ。
駆け込もうと思っていた人は急がなくてよくなり、これからでも間に合うと思った人は改めて住宅計画を立て始めたということになるが、調査結果を見ると、その比率が熟年層と若年層で違っていたということだろう。
その若年層が増税よりも気にしているのが、住宅ローンの金利のようだ。
日銀が続けていた「異次元の緩和」(量的・質的金融緩和)により、住宅ローンの金利は低金利時代を迎えていた。しかし、追加緩和策として、2016年2月からマイナス金利が実行されるようになると、金利は一段と下がる。
全期間固定金利型の住宅ローン【フラット35】の金利※を見ると、金利はじりじりと下がっていき、マイナス金利が実施された翌月の2016年3月の適用金利は、史上最低金利だった1.37%を更新して、1.25%にまで下がった。以降は上がり下がりを繰り返しながら史上最低金利を更新し続け、8月の0.9%を底に今なお1.1%の水準にとどまっている。
※返済期間21年以上35年以下、融資率9割以下で適用される金利のうち最も低い金利
ここまでの低金利水準は、めったにあるものではない。住宅ローンの金利は、融資を申し込んだときではなく、融資が実行されるとき(融資を受け取るとき)の金利が適用されるのが基本だ。住宅を新築して引き渡しを受けるときの金利が、今と同じ水準とは限らない。ローンの借入額多いと想定される若年層ほど、「今の低金利を確実に利用できる」ことの優先度が高いということがうかがえる結果だ。
住宅ローンは借入額が多いほど、返済期間が長いほど、利息の影響を強く受けるので、ローンを利用しない、あるいは利用しても額が少なかったり返済期間が短かったりすると考えられる熟年層では、低金利は影響を及ぼすには至っていないということになるのだろう。
この調査の他の結果を見ると、「住宅ローン減税の大幅拡大」や「長期優良住宅に対する優遇制度」、フラット35の金利優遇制度である「【フラット35S】」の認知や関心が高いことも分かった。難しい国際情勢になってきており、住宅取得の社会環境も先行き不透明だが、事前に情報をしっかり集め、きちんと住宅計画を立てることは成功の大きなカギになるだろう。
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