「福岡に来てモヤモヤが晴れた」31歳で移住を決めた書店員・田中ゆいさんのホンネ

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東京の下北沢から、福岡市へ移住した田中ゆいさん。現在、市の中心部・天神に立つ期間限定の書店「Rethink Books」で書店員をしながら、街のクリエイティブなニュースを発信するWebサイト「#FUKUOKA」(ハッシュフクオカ)でライターとして移住に関するブログを書いています。東京が大好きだったという田中さん、なぜ福岡を選んだ? 実際に半年暮らしてみて本当はどう? 東京に帰りたくない? など、リアルなところを聞きました。

【田中ゆい プロフィール】

東京都出身。編集プロダクションで編集/ライターとして勤務した後、フリーランスに。2016年6月に東京から福岡へ移住。「福岡ガチ移住ブログ」

大好きだった東京から、福岡へ。移住を決めたきっかけは?

「福岡、快適です〜」と開口一番、そう答えてくれた田中ゆいさん。

数年前の福岡旅行で街を気に入り、住んだら楽しいだろうという予感がありました。その時は具体的には考えていませんでしたが、移住のきっかけは会社を辞めて独立した頃、知人から福岡で期間限定の本屋を作るので、スタッフが必要と声をかけられたこと。住んでみたいと思っていた福岡、その日のうちに心は決まっていたそうです。

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「私の場合は福岡ありきだったので、他の街は検討していません。家族には決めた後で報告しましたが、福岡、佐賀に従兄弟や祖母がいるし、いいじゃない!と(笑)。祖母に伝えたら、とても喜んでくれました。私はHIP HOP、特に日本語ラップが好きで。前に遊びに来たとき、福岡のクラブでラッパーたちのクオリティの高さと、お店の盛り上がっている様子にびっくりして。羨ましくて。福岡のHIP HOPをもっと掘り下げたいとも思っていました。

1年契約の仕事とともに来ましたが、住んですぐに1年じゃ足りないと思いました。福岡の人はおもてなしが好きで、“紹介したがり”な人が多いです。面白い人がいるから取材したら? とどんどんつないでくれる。おかげでやることがたくさんあって、ホームシックにかかる暇がありません。下北沢は人のつながりが密な街なので、引越後に懐かしむかもしれないと思ったけど、今は福岡が楽しいです」

私が思う、福岡人の気質

福岡の人と気質が合う、という田中さん。どんな特長があるのでしょうか?

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「社交的で世話好き、人に教えるのが好き、困っている人がいたら力を貸したい、そんな人が多いです。私にもそういう所があって、福岡では性格がそのまま出せます。東京にも世話好きで優しい人はたくさんいるのですが、人口が多すぎるので全員がやると交通渋滞になる。東京の人は、それが分かっているのだと思います。また、地方移住した人から、”地方は人がいい”と聞く度にどういうことだろう? と思っていましたが、福岡の人たちが熱心に人や場を紹介してくれたり、悩みや弱音も隠さず話してくれたりするのを体験して、私なりに分かった気がします。

実はこちらに来て2ヶ月めで、彼氏ができました。優しくて、素直で、生命力を感じる人です。彼に限らず福岡の人は考え方がシンプルで、まっすぐな人が多い気がします。東京は男性も女性も、承認欲求やプライドのせいで、ちょっとめんどくさい人が多いですもんね(笑)。

福岡女子は美人で明るくてお洒落で、美容に気を使っている人が多いです。しかも可愛いのにサービス精神旺盛なので、飲み会で場を盛り上げてくれたりして最強じゃん!と。心からのコミュニケーションで、惜しげなく人を紹介してくれる。そんな人が、何人も思い浮かびます」

東京での働き方、福岡での働き方

東京では、話題のトピックやニュースを扱うWebコンテンツの編集をしていたという田中さん。その仕事はまるで、「情報の龍巻の中」にいるようでした。常に流れつづける情報は、一日でも遅れると古くなります。PVとシェアをいかに増やすか、どう数字を伸ばすか…。

「龍巻から飛び出してしまって、もうその渦には入れない…という劣等感も多少あります。でも出てみて、他があることに気がつきました。龍巻の中に居つづけることって、それほどこだわるものでもなかった。東京の話題は地方にいるとあまり耳に入ってこないし、地方は地方で自分たちのことで楽しんでいるなと。

仕事があれば移住はオススメです。ある程度働いた経験を積んで、30代からが良いんじゃないでしょうか。福岡は都会なので仕事ができる人はめぐり合えるし、一つでも縁があれば広がると思います。仕事、習慣の違いといえば、紹介が多い事。飲みニケーションは比較的多いと思います。

地方には自分の趣味や、好きなことを仕事にしている人が多い気がします。こんなライフスタイルを送りたいから、こういう仕事をする、という感じ。東京は家賃が高いし、まず生活することでいっぱいいっぱいですよね。私自身は福岡に来て、人との接し方が変わって頼りやすくなりました。やりたい事を口に出して周囲の人に頼み事をしながら叶えています。東京と福岡のHIP HOPの重鎮のお二人に協力いただき、Rethink Booksでイベントを実現できました」

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▲Kダブシャイン(中) × 福岡スタンドバップRYOTA(左)トークイベント開催@Rethink Books

「地方移住の面白さ」とは

東京から移住してまずビックリしたのは、家賃の安さでした。部屋は広く快適になり、職場へは自転車で5、6分の距離。知人に紹介してもらった不動産屋が、家賃4万円以下のオーダーに見事に応えてくれたそう。部屋代は敷金礼金なし初期費用など込みで20万、引越代は平日便で5万ほど、引越費用はトータルで約30万円でした。

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「地方移住はそんなに大変じゃない、って言いたいです。東京から地方なら家賃など生活費が下がるし実現しやすいと思います」

30歳くらいまで頑張ってみたけど何かモヤモヤを抱えていたら、場所を変えると踏ん切りがつく、とも。

「もっと、気楽に考えていい。私は自分が決めたら他人の意見は関係ないところがあって(笑)。今だから、今のうちに、とも思いました。それに東京を出たら、東京が帰郷できる場所になりました。これが帰ってきたって感覚なのかと。友人とはSNSでつながっているし、2週に一度は誰かが福岡に来てくれます(笑)。

今は、私がその人の興味や仕事が近そうな福岡の人を、一緒に食事に誘って紹介したりしています。東京の人も福岡好きな人が多いし、紹介すると双方でとても喜んでくれます。自分の強みは、紹介すること、つなぐことと思えるようになって、気軽にできるようになってきました。

地方に来て、正直、都落ち感もあったし、元同僚がバリバリ働いている話を聞くと引け目を感じたこともありました。私は東京の会社で目立ってなかったと思います。でも福岡に来て、「外から来た人」というキャラ付けができ、モヤモヤが晴れました。まだまだ東京が好きだし、意識もします。けど今は帰らずに福岡で仕事をします。周りの方々にお返しをしたいし、頑張りがいがあるから。

私の人生に新しいコースができて良かったと思っています。結果を出したいです」

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【執筆:永田知子】

ライター。福岡県出身。福岡大学人文学部卒。リクルート「九州じゃらん」、All About 等で編集と広告制作を担当。

2009年よりフリーのライター・編集者となり、旅行、食、インタビュー等の分野で旅行誌、webメディア、企業広報誌等で執筆。

2016年2月、17年の東京生活にピリオドを打ち福岡へUターン。ただいま福岡生活を謳歌中。

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