「アイドルブーム」はこれから先も続いていくのか カギを握るのは30代以上の単身者
“アイドル戦国時代”と言われるようになって久しくなりますが、AKB48グループやハロー!プロジェクトでは世代交代が進み、その一方で解散するグループもいくつか見られます。過渡期を迎えるアイドルブーム、このブームはもうすぐ終わるのか、はたまたまだまだ続いていくのか、ファンのみならず語られる機会が多いですが、そんなアイドルブームの今後について考えてみたいと思います。
資金力があり自分のお金を自由に使える30代以上の単身者がブームを支えている
今やヒットチャートの上位には毎週のようにアイドルグループの楽曲がランクインしています。これはAKB48が始めた握手会参加券付のCDの効果が大きく、それにほかのグループも追随して現在のような状況が生まれ、今ではCDの売上を伸ばすには、アイドルのジャンルに限らず、特典会イベントの実施は不可欠とすら言えます。
新曲の音源を聴いたり映像を観たりするだけなら、リリース前にミュージックビデオが公式YouYubeに公開されることも多いので、それで十分事が足りますが、アイドルの場合、CDは、音楽を聴くことより、リアルにアイドルと接する権利を得られることに価値があるという状態になっています。
CDやグッズを多く買えば買うほど、好きなアイドルに間近で会える機会を増やすことができます。そうなると、収入や貯金に余裕があり、自分のお金を自由に使える、年齢が高めの単身者が有利ということになります。中にはアイドルのグッズやCD代で月に10万円以上使うという人もいるといいます。
現在のアイドルファンは、AKB48グループや乃木坂46、ももいろクローバーZなど、アリーナクラスの会場でライブを行う人気規模のグループになると10代や20歳すぎくらいの若いファンや子どものファンの姿も多く、また℃-uteやモーニング娘。’17といったパフォーマンスのカッコよさに定評のあるグループや、ファッション雑誌のモデルも兼ねるメンバーがいるグループは、ライブ会場で多数の女性ファンも見られます。それ以外のグループではやはり30代以上の、年齢高めの男性ファンが多数派になっています。この30代以上のファンが、今のアイドルブームを支えていると言っても過言ではないでしょう。
50代はキャンディーズ、ピンクレディー、40代は松田聖子、おニャン子…若い頃からアイドルに親しんだ世代
ある程度年齢が高くなってくると、新たな趣味に手を出すということになかなか気が向かない人も多いと思いますが、現在アイドルを熱心に応援している30代以上のファンにとっては、今後もそれは大事な趣味であり続けることでしょう。自分が応援するグループが解散したり、メンバーが卒業したりすることで“離脱”する人もいますが、一方でほかのメンバーに“推し変”したり、解散しても別のグループに走り、アイドル応援を続けるケースも多いと思われます。
日本は超高齢社会に突入、生涯未婚率も高くなる中、これから高齢の単身者もますます増えていくと予想されます。今アイドルブームを支えている層が、年齢を重ねても離れていかないことで、そのブームは続いていくと思われます。特に高齢の単身者にとって、「アイドルの応援」という趣味はスタンダードなものになっていくのではないでしょうか。最近は、所帯持ちの人でも趣味としてアイドルを応援する人も珍しくありません。
現在50代以上の人は、若い頃からキャンディーズやピンクレディー、山口百恵さん、40代だと、松田聖子さんや小泉今日子さん、中森明菜さん、そしておニャン子クラブなど、アイドルムーブメントを経験してきた人が多く、その後もずっとアイドル応援し続けている人だけでなく、いったんアイドルから離れたものの、今のブームによりまた当時を思い出して最近のアイドルにハマる人も少なくないと思われます。
特に“おニャン子”世代以降の人は、アイドルのライブやイベントの現場に足を運ぶことにあまり抵抗がないと思われます。その一方、現場で声を張り上げたり踊ったりするような応援をするのは抵抗があったり、アイドル現場の雰囲気が苦手だけど、可愛い女の子が歌っているのを観るのは好きという層もいると思います。そういう点ではアイドルのジャンルだけではない、ルックスの可愛さも持ち味の女性シンガーやガールズバンドのファンも増えていくのではないかと思われます。
アイドルのモチベーションを上げるには新たなファン層の獲得も大事
ただ、ステージで歌うアイドルの側からすれば、自分と同世代や女性ファンから“共感”を得られることでモチベーションが上がるのは間違いありません。毎回客席がいつも来ている年齢高めのファンばかりだったら、絶対口には出さないものの、「自分は何のために歌っているのだろう」と戸惑いをおぼえることもあるでしょう。スタッフには、若手ファン獲得のためのプロモーションも忘れないようにしてもらいたいものです。
行きすぎと思われるCDのイベント直販を抑制する意味で、オリコンのCDの売上枚数の集計方法が昨年9月に変わったこともあり、CD販売においての過剰な“握手会商法”は抑えられると思いますが、ライブやインストアイベントなどアイドルに会えるイベントのニーズはなくなることはないと思われます。もしCDの複数枚買いが下火になっても、ライブやイベントの会場に足を運んで、アイドルたちと握手や会話をするために、グッズや次回のライブチケットなどを買い求めることは続くでしょう。
若者の趣味・嗜好はますます多様化し、移り変わりも激しくなる中、10代、20代でアイドルにハマる人が減る可能性もありますが、土台となる30代以上の人が離れないことで、アイドルは「ブーム」ということではなく、「人気安定期」に入っていくのではないかと思われます。
文/田中裕幸
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