都心部で増えている? 「一棟丸ごとリノベマンション」とは

都心部で増えている? 「一棟丸ごとリノベマンション」とは

都心部の人気のあるエリアの新築マンションは用地取得の難しさもあって、今後、供給戸数は減っていきそうだ。分譲されることがあっても価格は高止まりの様相を見せている。そんななか、賃貸マンションや社宅だった物件を企業がまるごと購入してリノベーション、共用部を含めて設備もデザインもクラスアップさせて販売するマンションが誕生してきている。

専有部だけではなく共用部も機能・デザインともにランクアップ

「一棟リノベーションマンション」とは、デベロッパーなどの不動産業者が、既存の賃貸マンションや社宅などを購入し、それをリノベーションして販売するシステムだ。不動産業者が一棟まるごと購入すると、「所有権」はいったんその不動産業者だけのものになり、専有部のみならず共用部の設備や機能の充実、さらにデザインのバリューアップが容易になる。

通常、中古マンションを購入した場合、専有部の設備やデザインは変えられるが、共用部に関しては他の所有権者全体との話し合いが必要になり、自分の自由にはできない。例えば自分の専有部の配管は変えられても、その先の共用部の配管に問題が起きれば、管理組合を通した話し合いで、共用部の保全管理をする必要があり、自由に改良することができない。そこが中古マンションを買うときのネックになっている場合がある。

そんな不安を解消しつつ、新築並みの機能や設備が加えられ、デザイン面でもプラスアルファの魅力が加えられた「一棟リノベーションマンション」の例として、二つの物件を紹介しよう。

都心のマンションでは珍しい、約160m2~という広さが得られる

株式会社リビタが提供する「ルクラス目白御留山」は、学習院大学や日本女子大学が最寄りとする目白駅から歩いて9分。江戸時代には、徳川家の狩猟地で一般人の立ち入りを禁止していたため「御留山(おとめやま)」と呼ばれていたエリア。今も緑が多く、第一種低層住居専用地域の閑静な住宅地だ。

低層全5邸、全方位からの採光、ゆったりとした専有面積約168m2~240m2と、都心のマンションでは珍しい広さとゆとりをもつマンションだ。「緑の多い街の景観を守るために、ファサードや植栽をクラスアップさせました。重厚なエントランスゲートや1階の住戸に付随した外の庭を囲む植栽など、オープンでいながらプライバシーも守る設えで、周辺の環境に溶け込みつつ存在感のあるものになったと思っています」とプロジェクト担当の西川賀子さん。【画像1】外観のBefore(左)、After(右)。かなりスタイリッシュな印象になった(画像提供/リビタ)

【画像1】外観のBefore(左)、After(右)。かなりスタイリッシュな印象になった(画像提供/リビタ)

また以前はなかったエレベーターも敷設した。「もともと3階建ての低層マンションだったので、エレベーターの必要性はなかったようですが、新しく生まれ変わるマンションのグレードを考えると必須だと考えました。建物全体の配置や各々の住戸の間取りを調整しながら、適切な場所に用意しました」と話してくれたのは建築担当の田村有理江さん。

また専有部の仕様も選べる内装パッケージである「ライフスタイルパッケージ」を用意。コンセプトルームの一室は、休日の穏やかな日だまりをイメージした「HOLIDAY」タイプだ。その特徴は、全体の印象を左右する床のフローリングはオーク系の材料に少し白色の塗装を加え、明るさややわらかさを演出。その床に合わせて、建具やキッチンも自然の風合いを楽しむことができる素材を選定。家族で過ごすくつろぎの時間を想定している。【画像2】少し白を加えたオークの床材で明るい印象の「HOLIDAY」タイプの室内(画像提供/リビタ)

【画像2】少し白を加えたオークの床材で明るい印象の「HOLIDAY」タイプの室内(画像提供/リビタ)

同社では、2013年より「暮らし・住まいから東京を豊かにする」をコンセプトとしたリノベーション事業の新サービス「R100 TOKYO」を本格的に開始。100m2を超す高価格帯賃貸・分譲中古マンションを買取り、築後100年先を見据えた資産価値と普遍的な価値をそなえた住まいへと再生し分譲している。

なかでも同サービスの一棟丸ごとリノベーション分譲マンションを「LUCLASS/ルクラス」としてブランド化し、力を入れている。さらに「オーナーズクラブ」を設け、入居後の暮らしをサポートする住関連サービスの提供も行っている。

六本木駅徒歩4分という立地のよさ

東急不動産株式会社が提供する「マジェスタワー六本木」は、六本木駅から徒歩4分と便利な場所にある27階建て地下3階のタワーマンションだ。リノベーション時は築10年。六本木の商業エリアの喧騒から少し離れた場所に位置するため、静穏な住環境と部屋からの景観も担保できる。

「物件の顔であるエントランスの外部及び内部、植栽等の外構、照明計画をはじめ、各階のエレベーターホール、フィットネスルーム、自転車置き場、ゴミ置き場に至るまで、表面的な“お化粧直し”ではなく、住まわれる方の使い勝手を考えた整備等を実現いたしました」と開発担当の一色圭さんは話す。

物件の印象を決める外観正面デザインはフォワードスタイル株式会社の南部昌亮氏が総合プロデュース。「華美な装飾や設えではなく、圧倒的な眺望をインテリア空間の一つとして構成し、都心生活のストーリーを描き出したほか、素材選びやデザインはもちろんのこと、照明の演出に至るまで、細部にこだわりました」【画像3】昼(左)と夜(右)のエントランスの様子。共用部では、アプローチ壁面にルーバーを新設。軒裏天井を木目調に変更し、柱の仕上げに温かみのある色合いの石を採用するなど、住む人を迎え入れる住宅としての雰囲気を醸成。植栽についても、樹齢300年を超えるスペイン産オリーブの古木をシンボルツリーとして配し、風格のある植栽計画としている(画像提供/東急不動産)

【画像3】昼(左)と夜(右)のエントランスの様子。共用部では、アプローチ壁面にルーバーを新設。軒裏天井を木目調に変更し、柱の仕上げに温かみのある色合いの石を採用するなど、住む人を迎え入れる住宅としての雰囲気を醸成。植栽についても、樹齢300年を超えるスペイン産オリーブの古木をシンボルツリーとして配し、風格のある植栽計画としている(画像提供/東急不動産)

「防災面でも、防災倉庫を新設して災害時へ配慮しています。また、エレベーター内部やフィットネスルームでは、内装や器具を一新し、実用性を高めるなど、細部にわたり配慮した設えとしています」と一色さん。

専有部では「ゲストハウスやSOHOなど、六本木という立地にふさわしいライフスタイルを提案することをテーマに、4戸のモデルルームを用意しました。42m2から118m2までの幅広い面積と、3段階のグレード・カラーを組み合わせることで、さまざまなお客様のニーズに応える体制を整えています」【画像4】室内のBeforeAfterの例。よりラグジュアリーな印象に変わった(画像提供/東急不動産)

【画像4】室内のBeforeAfterの例。よりラグジュアリーな印象に変わった(画像提供/東急不動産)

東急不動産株式会社は、都心立地での中古マンション需要の高まりに応えるため、そして既存の建物を活用するために、2015年、新たにマンションリノベーション事業に着手した。一般的なリノベーション事業とは一線を画した、新しいリノベ事業として打ち出していくために、新ブランド「MAJES(マジェス)」を創設。その第1号物件が“マジェスタワー六本木”だ。今後も都心部で事業拡大を進めていく方針だ。

新築マンションを超えるようなアフターフォローも

いずれも新築マンションと同等、それ以上のアフターサービスや長期修繕計画が用意されているのも安心材料だ。

「将来の建物価値を維持するためには、現時点での課題を踏まえた長期的視点での改善と次の世代へ受け継ぐための超長期での維持管理プログラムが必要です。10年後に修繕積立金の不足が発覚するようでは、建物価格は維持できません。『ルクラス』シリーズでは、築後100年目までの長期修繕計画を立案。次世代まで見据えた建物価値を創造していきます」とリビタの西川さん。

「新築マンションで築いた体制に、勝るとも劣らない厳格な管理体制で、徹底して品質をチェックしています。まず管理会社である東急コミュニティーが、暮らしやすさという「住む人の目線」でチェック、不具合箇所を長期的な建物維持の観点で手直しします。その補修に関し、東急不動産の品質管理部門が、建築・設備・電気・防水・防災・構造といった技術面で入念にチェック。さらに第三者機関による検査も実施。より安心できる品質を徹底追求します」と東急不動産の一色さん。

建物というハード面だけではなく、管理体制というソフト面でも、グレードアップが図られた「一棟リノベーションマンション」。新築or中古だけではなく、都心居住の新しい可能性を感じるシステムだ。価格は新築よりも抑えられていながら、かつ住み心地は新築マンション並み、あるいはそれ以上のレベルに整えられている。都心部で住まいを探している方の選択肢として注目したい。●取材協力

・R100 TOKYO/ルクラス目白御留山

・東急不動産/マジェスタワー六本木
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