放送法による特別な地位!?契約自由の原則は?「NHK受信料」について弁護士に聞いてみた!
大河ドラマや朝ドラ、年末には紅白歌合戦もあります。皆さんもきっとお世話になっているのではないでしょうか?そう、今回のテーマは「NHK」です。
前述のドラマやドキュメンタリーなど、クオリティの高い番組内容はもちろんですが、もうひとつ世間で話題になる事が多いのが「受信料」ではないでしょうか?今回は、いまいち良くわからないNHK受信料の制度について、弁護士の先生に色々とお話を聞いてみました。今回「NHK受信料」について教えて頂いたのは、アディーレ法律事務所の篠田恵里香先生です。
–記者
NHKの受信料に関してのトラブルや問題は良く聞きますが、結局のところ、NHK受信料の支払いというのは義務なのでしょうか?それとも拒否する方法があるのでしょうか?
–篠田先生
NHKの受信料については、「NHKを見ない人も受信料を支払うのはおかしい」との意見が良く聞かれますね。実は、NHKについては、放送法という法律によって特別な地位が与えられています。
放送法64条を見ると、「NHKの放送を受信する設備を設置した者は、NHKと受信契約を締結する義務がある」という内容の記載があります。この法律により、「家にテレビを持っている」だけでNHKの受信契約を締結する法的義務が発生し、これにより受信料の支払い義務が発生するという関係にあるわけです。突然家にNHKの担当者がやってきて、「テレビがある以上はNHKを見なくとも受信料を払う義務があるんですよ」と言われ、やむなくサインした方も少なくないのではないでしょうか。
なお、これまでは、担当者が「ワンセグ機能を有する携帯・スマホを持っているだけでも受信料を支払う義務がある」と説明をしてきたようですし、NHKのホームページのQ&Aを見ても、「テレビ付携帯電話を持っていれば受信契約の締結義務がある」との説明がされていますが、この点はいまだグレーの状況です。平成28年8月26日さいたま地裁判決では、「ワンセグ付きの携帯電話を所有する人についてNHK受信料の契約を結ぶ義務があるとはいえない」との判断を下しており、この事件は控訴されていますので、今後、控訴審の判断が待たれるところです。
–記者
考えようによっては、消費者の意思を無視して、勝手に送りつけられてきている商品に対して代金を払えと言われているようにも思えるのですが、そのような解釈は間違いなのでしょうか?
–篠田先生
おっしゃるとおりで、日本においては「契約自由の原則」がとられており、どのような契約を結ぶかは個々人の自由とされるのが原則です。故に、「ほしいサービスや商品があれば、金額を確認し、これに納得したうえで、申込・購入する」のが原則のはずですが、NHKの場合、放送法によって、「受信設備を設置した人すべて」がNHKと「所定の受信料を支払う」契約を結ばねばならないという扱いがなされ、いわば優遇措置がとられているわけです。
なぜこのような優遇措置がとられているかについて、NHKとしては、「受信機の設置者から公平に支払われる受信料を財源とすることにより、国や特定のスポンサーなどの影響にとらわれることなく、公共の福祉のために、人々の暮らしに役立つ番組づくりができる」等と説明をしているようです。簡単に言うと、法律を制定した当時の趣旨としては、「皆に役立つ情報を伝える役割を担う放送局が、財源不足で倒れてしまうと困る」ということなのだと思います。
ただ、法律がその正当性を保持するためには、やはり国民の納得が必要ですから、「役立つ放送を提供してくれる局であるからこそ受信料の負担はやむを得ない」と納得できるような放送を、NHKが維持する義務があるともいえます。この点、民間の放送局の方が、「自らの手で利益を得ようとするからこそ、いい番組を作ろうと努力できる」ともいえ、放送法のあり方とNHKの放送のあり方は、今後も見直しを迫られる場面があるかもしれません。
–記者
ちなみに、民間企業が同じような仕組みで消費者に支払いを求めた場合、現在の法律ではどのような状況になるのでしょうか?
–篠田先生
日本の契約は、「申込」と「承諾」によって成立します。したがって、一方的に「提供するから支払え」と請求するだけでは、相手が承諾しない以上、支払いを求めることはできません。
ただし、一方的に送り付けてきた商品や、一方的に提供されたサービスであっても、その代金を知って実際に消費してしまったり、サービスを利用してしまうと、「承諾があったものとみなされて契約成立」と判断される可能性があるので注意が必要です。
–記者
支払い義務があるにも関わらず支払いを拒否した場合、どのような罪に該当し、どれほどの罰則が与えられるのでしょうか?過去の判例などがありましたら、それも含めて教えて頂けますでしょうか?
–篠田先生
NHKの受信料については、「支払い義務があるのに払わなかった」場合の罰則などは用意されていません。ただし、受信料の支払い義務を放置してしまうと、NHKとの受信契約においては2カ月で2%という遅延損害金が設定されていますので、遅延損害金が膨らんでいくと相当な負担となることが予想されます。
この点についても、「受信契約がいつどのように成立したといえるのか」「受信料支払い義務がどの時点から発生したといえるのか」について、近いうちに最高裁判断が下される予定です。この判断によって、「これまでの滞納額がいくらか」は全く変わってきますので、大きな注目を浴びそうですね。
少なくとも、放送法上は、「テレビを設置している世帯」には受信料締結義務が生じていますので、今後の法律の見直し等にも注目したいところです。
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というワケで、今回は“NHK受信料”について、弁護士の篠田先生に色々とお話を伺いました。裁判での事例なども出てきて、少しづつ制度が明確になってきているようですが、まだまだ不明確で分かりづらい部分もあるようです。今回先生にお話を伺った事で、今までいまいち理解出来ていなかった仕組みや制度、少しはご理解頂けたのではないでしょうか?
・取材協力
篠田恵里香(しのだえりか)弁護士(東京弁護士会所属)
弁護士法人アディーレ法律事務所
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