東京電力、浄化汚染水の海への放出 「理解を得るために最大の努力」

松本・立地本部長代理

 東京電力は2011年12月8日、福島第1原発の建屋地下などに流入した汚染水を浄化して海に放出する計画を、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の抗議等を受けて一旦見送った。13日の閣議後記者会見では枝野幸男経済産業相が、法令に定められた基準内であっても「漁業関係者に理解を得られない状況で海洋放出を強行するようなことは社会的に許されない」と発言。一方の東京電力は同日午後の会見で「引き続き、関係機関、漁業関係者の理解を得るために最大の努力をする」と強調し、あらためて浄化水の海洋放出を進める考えを明らかにした。

 東京電力によると、福島第1原発1~4号機のタービン建屋などに地下水が1日あたり200~500立方メートル流入して汚染水が増加し、来年3月には滞留水が貯蔵タンク容量を超えるという。

 現状は、汚染水を原子炉等規制法が定める基準値以下のレベルに下げた上での海洋放出は、全国各地の原発で行われている。経産省原子力安全・保安院の「法令を満たしている以上、規制機関として(放出を)止めるということはない」との発言(12月8日)はこれを背景としたものだ。

 東京電力の松本・立地本部長代理によると、これまでの法令基準内の海洋への放出は、「概要で1年間あたり1プラントで約3000立方メートル。福島第1原発だと1~6号機で計1万8000立方メートル」年平均で放出。地元漁業関係者を含めた関係者等に対しては、海洋放出の実施後、「年に1回、発電所の環境への影響評価というかたちでデータをとりまとめて連絡」しているという。

■東京電力とニコニコ動画記者(七尾功)のやりとり

七尾記者: 今日の閣議後会見で枝野大臣が、東京電力が濃度を低レベルに下げた福島第1原発の汚染水を海洋に放出する計画を検討している問題で、私どもの質問に対しまして「水産業関係者に風評も含めて大変なご迷惑をかけている経緯を踏まえた時、社会的に許されるのか」と指摘され、「どうしたら理解を得られるか、東電内でしっかり検討と努力をする必要がある」と述べられました。

 先日の統合会見での保安院の「法令を満たしていれば、放出を止めることはできない」との考えを示していたのとはやや異なる発言ですが大臣発言に対するご見解をお願いいたします。

松本・立地本部長代理: 処理水に関しましては、まずは告示で定める濃度限度以下に下げることはもちろんでございますけれども、こういった漁業関係者の方々のご意見等もございますので、ご意見の内容を踏まえまして私どもの取り組み内容につきましては、丁寧に説明をさせていただきたいというふうに思っております。現時点ではまだ海洋放出をするかどうかというようなところについては決定していることはございません。

七尾記者: とはいえ、来年3月にはタンクを増設する中で放水は避けられないとの見方もされているわけですが。海への放出の可能性を含めた中での対応になるのでしょうか。

松本・立地本部長代理: 完全に否定することは今の時点では決めておりませんが、引き続き漁業関係者のほか関係各機関のご理解を得るために最大の努力をしていきたいというふうに思っております。

七尾記者: 「調整」とおしゃっている以上「海洋放出」を前提とされていると思いますが、各機関との調整がつかない場合についてはいかがお考えでしょうか。

松本・立地本部長代理: 現時点では私どもとして最大の努力を払ってまいりたいというふうに思っております。引き続き関係機関、漁業関係者のご理解を得るために努力してまいりたいというふうに思っております。

七尾記者: 他の原発も同様だと思いますが、これまで福島第1原発において法令内の海への放出については、どれくらいの頻度でどれくらいの量を平均で放出してきたのかといったデータはございますでしょうか。

松本・立地本部長代理: 概要で申し訳ございませんけれども、1年間あたり1プラントで大体3000立方メートルになります。従いまして福島第1ですと(プラントが)6基ございますので総量で申しますと1万8000立方メートルという状況でございます。もちろん放出する際には放射性物質の有無の確認をした上で放出するという状況です。

七尾記者: その際、事前に漁業関係者に報告してきたという経緯はあるんでしょうか。

松本・立地本部長代理: そのつど報告というよりも年に1回、発電所の環境への影響評価というかたちでデータをとりまとめて皆様にご連絡は差し上げているところでございます。

七尾記者: それは「放出する」という報告なのか「放出した」という報告なのか。

松本・立地本部長代理: これは「放出した」ということになります。

■枝野幸男経産相とニコニコ動画記者(七尾功)のやりとり

枝野経産相

七尾記者: 東京電力が福島第1原発の処理水を海洋に放出することを検討している件で、原子力安全委員会の斑目委員長は昨日、「関係者との合意形成なしで計画を立てても了解は得られない」と述べています。一方、保安院は「法令を満たしていれば放出をとめることはできない」と述べていますが、今回の処理水の海洋放出についての大臣のご見解をお願いします。

枝野経産相: これは東京電力においてご議論がなされていたというふうには聞いてはおりますが、この間の様々な経緯を踏まえれば、特に漁業関係の皆さんにご理解をいただけないような状況で、法律上のたてつけはともかくとして、(海洋放出を)強行するようなことはこれは社会的に許されないだろうというふうに思っております。

七尾記者: 一方で、他のどの原発でも法令内の処理水の放出は行われている現状で、今回の事故での福島第1原発は特例というか、他の原発とは異なるといったご認識でしょうか。

枝野経産相: この間の、3月11日以来の多くの皆さんに事故でご迷惑かけているわけでありますが、漁業関係、水産業関係の皆さんにも風評も含めて大変大きなご迷惑をおかけをしている。その経緯を踏まえた時にそれは社会的に許されるのかということについて、私の認識として申し上げました。水産関係の皆さんの理解をどうしたら得られるのか、ということは東京電力において、しっかりと検討と努力をする必要があると思っております。

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]12月13日、東京電力への七尾記者の質問から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv74070486?po=news&ref=news#0:27:40
・[ニコニコ生放送]12月13日、枝野大臣への七尾記者の質問から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv74095581?po=news&ref=news#0:24:48
・[ニコニコ生放送]12月8日、保安院への七尾記者の質問から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv73502240?po=news&ref=news#2:33:30

(七尾功)

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