リノベの新しい選択肢に? 新築一戸建てをリノベしたそのワケは

リノベの新しい選択肢に? 新築一戸建てをリノベしたそのワケは

「一戸建てやマンションを買ってリノベーションする」というと、購入するのは中古住宅だと思うのが今までの常識。古くなった内装や設備を新しくしつつ、暮らしにフィットする形にカスタマイズして新たな付加価値を生み出すのが、リノベーションの目的だからだ。ところが、建ったばかりの新築一戸建てを買ってリノベーションしたファミリーがいるという。「なぜ新築をわざわざ?」「もったいないと思わなかった?」……などなど、次から次に湧く疑問を、「新築リノベーション」を敢行したYさん夫妻にぶつけてみた。

「画一的な家はイヤ」。だから、最初からリノベーションを前提としていた

「とにかく、お隣と同じ家はイヤだったんです」

なぜわざわざ新築をリノベーション?という質問に答えて、冒頭から力強く言い切ったのは妻Yさん(40歳)。間取りや内装まで隣の家と同じという画一的なマンションや建売住宅を購入することに抵抗があり、「家を買うときは、手を加えてわが家だけの住まいにしたい」という思いがあったのだという。そして、その”リノベーション志向“は、夫Sさん(41歳)の中にも同様にあった。

「中をいじりたい、まずそこからスタートしました。だから、家を買うなら、中古のマンションか一戸建てを探してリノベーションしようと。それは夫婦で一致していました」(夫Sさん)

双子が生まれて育児休暇中だった妻Yさんの育休明け(2016年春)までに引越すというスケジュールで動き始めたのが2015年の夏。早速、リノベーション会社に2社当たってみたが、「まずはセミナーに参加を」と悠長に勧める会社よりも、何かとレスポンスが速かったブルースタジオのほうが小回りが利きそうだと考え、ブルースタジオにリノベーションを依頼。担当者と一緒に中古物件を探し始めた。【画像1】都下エリア、私鉄沿線駅から徒歩数分という立地。外観は隣の家と変わらない新築の一戸建てだ。当初は、マンションも含めて検討していたが、マンションだと、子どもが走り回る足音が階下に響くのではないかと考え、次第に一戸建てへと気持ちが傾いていったそう(写真撮影/片山貴博)

【画像1】都下エリア、私鉄沿線駅から徒歩数分という立地。外観は隣の家と変わらない新築の一戸建てだ。当初は、マンションも含めて検討していたが、マンションだと、子どもが走り回る足音が階下に響くのではないかと考え、次第に一戸建てへと気持ちが傾いていったそう(写真撮影/片山貴博)

「水まわりにお金がかかる中古よりは」と新築リノベ案が浮上

ただ、物件探しは決して順調というわけではなかった。

「週に3軒ペースで物件を見学しましたが、立地が良ければメンテナンスがイマイチだったりと、一長一短で。特に、浴室やトイレなどの水まわりが汚いと、一気に興味が失せるんですよね」(夫Sさん)

その上、中古だと、水まわりを直すのにそれなりの費用がかかる。「それなら、いっそのこと新築も見てみようか」と幅を広げて探し始めたところ、保育園を変えずに済むごく近所に新築の建売住宅が見つかった。

「間取り的にも理想に近い物件でした。特に、水まわりを直さずに済むのが魅力的で」(夫Sさん)

新築を買ってリノベーションもとなると、費用はかなりかさんでしまうように思われるが、中古の水まわりを直すことを考えるとさほどでもないように思えたという。カスタマイズにこだわるなら、土地を買って注文住宅を建てるという選択肢もあり得たような気がするが……。

「もちろん、それも考えました。でも、思うような立地には土地が出なかったんです」(妻Yさん)

かくしてYさんファミリーは、すでに完成していた新築一戸建てを買ってリノベーションすることを決意したのだ。【画像2】上段がリノベーション前、下段がリノベーション後の間取り。主な変更点は、【1階】カウンターキッチン左端の壁を撤去/階段下スペースをアーチ形入り口のキッズスペースに/洗面台をダブルシンクに変更し、洗濯機はキッチン裏の収納スペースに移動【2階】主寝室と洋室の間のクローゼットを取り払い、洋室側をワークスペース(”共同書斎“)と小上がりスペースに/将来、間仕切りとロフトを設けることを想定して北東側の洋室の窓を4分割/北側の2つの洋室の間の引き戸を壁に変更(画像/SUUMOジャーナル編集部)

【画像2】上段がリノベーション前、下段がリノベーション後の間取り。主な変更点は、【1階】カウンターキッチン左端の壁を撤去/階段下スペースをアーチ形入り口のキッズスペースに/洗面台をダブルシンクに変更し、洗濯機はキッチン裏の収納スペースに移動【2階】主寝室と洋室の間のクローゼットを取り払い、洋室側をワークスペース(”共同書斎“)と小上がりスペースに/将来、間仕切りとロフトを設けることを想定して北東側の洋室の窓を4分割/北側の2つの洋室の間の引き戸を壁に変更(画像/SUUMOジャーナル編集部)

やりたいことをふんだんに取り入れたリノベーション費用は、設計費込みで約1000万円だった。

捨てたのはクローゼットの扉と洗面台のみ。それ以外は既存のものを活用

新築の家をリノベーションするということは、捨ててしまう部材もあるわけで。なんだかもったいない気もするけれど……。

「実際、捨てたものと言えば、クローゼットの扉と洗面台ぐらいだったので、『もったいない』とは思いませんでした」(妻Yさん)

「もったいないと思った水まわりはほぼ残したので、僕も『もったいない』とは思っていません」(夫Sさん)

もちろん、できることなら、何も捨てずに済むように、室内を自由につくれる“家の外側”だけ欲しかったというYさん夫妻。実際、夫Sさんの言う通り、水まわりは、洗面台を変える以外はいじらずに、そのまま使っているという。また、この新築一戸建ての売主に対しても、やはりどこか申し訳ないような気持があり、「実はこれからいじる予定」ということは言えなかったそうだ。

あとは、2階の主寝室と洋室の間のクローゼットを取り払い、洋室側に机を設けて”ワークスペース“とすることで、家族全員が勉強や仕事、読書をする”共同書斎“を実現したり、単なる収納だった階段下スペースに棚を設け、おもちゃや絵本を置いて子どもたちの”秘密基地“風にしたり……。そうして、随所にYさん夫妻の希望を反映した、Yさんファミリーならではの空間ができあがった。【画像3】左:2階のワークスペース。ゆくゆくは、”共同書斎“にする予定/右:1階の階段下のスペースは、絵本やおもちゃの収納庫。アーチ形の入り口から出入りする(写真撮影/片山貴博)

【画像3】左:2階のワークスペース。ゆくゆくは、”共同書斎“にする予定/右:1階の階段下のスペースは、絵本やおもちゃの収納庫。アーチ形の入り口から出入りする(写真撮影/片山貴博)

2階北東の洋室は、将来、双子に個室が必要となったとき、左右それぞれにロフトと個室スペースが設けられるよう、壁面を十字に仕切る形で窓を4分割にした。窓を新設するのではなく、既存の窓を分割するだけだったので、構造的にも支障はなかったという。【画像4】左:2階の洋室は、将来、間仕切り壁を設けて個別にロフト付きのスペースが確保できるように、既存の窓を4つに分割/右:高さを出すために、天井板を取り払った。剥き出しになった部材には、すべて塗装を施している(写真撮影/片山貴博)

【画像4】左:2階の洋室は、将来、間仕切り壁を設けて個別にロフト付きのスペースが確保できるように、既存の窓を4つに分割/右:高さを出すために、天井板を取り払った。剥き出しになった部材には、すべて塗装を施している(写真撮影/片山貴博)

居心地の良い空間が実現して、家事効率もアップ

入居して約8カ月となるYさんファミリー。住み心地はどうなのだろうか?

「新築特有のピカピカしたきらびやかさがなくて、とても落ち着きます。いろいろなホテルに泊まるのが好きなのですが、旅行から帰って来てこの家に入ったときに、18世紀の建物を改装したホテルと雰囲気が似ていると思いました」(妻Yさん)

確かに、Yさんファミリーの家には、標準的な新築の建売住宅にはない暖かみと独特の空気感がある。なぜなのだろうか。それはどうやら、Yさん夫妻が、それぞれの好みを明確に設計担当者に伝えたことによるものらしい。

夫Sさんの好みは「建築家の安藤忠雄みたいなコンクリートの打ち放しの空間」。そして妻Yさんの好みは、「木を基調としたインテリア」。設計を担当したブルースタジオの塚越龍馬さんは、2人のリクエストを受けて、木を基調としつつも、コンクリートというハードな異素材を木に合わせることで、“ほっこり”し過ぎない締まった空間をつくった。リビングの壁面収納部をモルタルで仕上げたことで、この一角はすっかり“安藤忠雄”っぽい空間になっている。

家事効率もアップした。

「リビングの壁面収納の下の段を引き出しにして、子どもたちの保育園に持って行くおむつや着替えなどを入れるようにしたら、朝の忙しい時間帯の動線が短くなり、用意がラクになりました」(妻Yさん)

また、キッチンの収納スペースに洗濯機置き場を設けたことでも、家事動線がコンパクトになった。加えて、この収納スペースに取り付けた扉が、思わぬ「役割」を果たしているのだとか。

「実はこのスペースに、使用済みおむつを入れる“おむつバケツ”を置いているのですが、扉を閉めると、においが閉じ込められて、部屋まで臭ってこないんです」(夫Sさん)【画像5】左:キッチンのカウンター左側は壁だったが、上部は中の柱のみを残して壁を撤去することで、開放感が生まれた。キッチン奥の壁面収納の左下の部分に洗濯機が収まっている/右:リビングの壁面収納。壁面やテレビが載っている台の表面はモルタルで仕上げてあり、Yさんのリクエストだった“安藤忠雄っぽい空間”となっている。双子の赤ちゃんが「歯がため」代わりにかじったおかげで、モルタルがところどころ剥げているのも、貴重な“成長記録”だ(写真撮影/片山貴博)

【画像5】左:キッチンのカウンター左側は壁だったが、上部は中の柱のみを残して壁を撤去することで、開放感が生まれた。キッチン奥の壁面収納の左下の部分に洗濯機が収まっている/右:リビングの壁面収納。壁面やテレビが載っている台の表面はモルタルで仕上げてあり、Yさんのリクエストだった“安藤忠雄っぽい空間”となっている。双子の赤ちゃんが「歯がため」代わりにかじったおかげで、モルタルがところどころ剥げているのも、貴重な“成長記録”だ(写真撮影/片山貴博)

“リノベーションありき”な当初からの計画を実行に移したYさん夫妻。「とにかく、好きなようにつくれたのが良かった」という二人の言葉から、思い通りの住まいを手に入れた満足感が伝わってきた。【画像6】上段左:洗面台をダブルシンクに変更し、朝の忙しい時間帯でも、並んで身支度ができるようにした/上段右:キッチンは既存のものを活かしつつ、面材を変えたり、立ち上がりをタイルにしたりと軽微な変更を行った(写真撮影/片山貴博)

【画像6】上段左:洗面台をダブルシンクに変更し、朝の忙しい時間帯でも、並んで身支度ができるようにした/上段右:キッチンは既存のものを生かしつつ、面材を変えたり、立ち上がりをタイルにしたりと軽微な変更を行った(写真撮影/片山貴博)

「新築の一戸建てを買ってリノベーションした」という話を聞いたときには、「なんてもったいないことを!」と驚いた私も、Yさんファミリーのお宅を拝見しながらお話を聞き、“秘密基地”に楽しそうに出入りする3人のお子さんの姿を見るうちに、やはりこれがYさんファミリーにとってのベストアンサーなのだと納得してしまった。ブルースタジオには、Yさんファミリーのケースを参考にした別のファミリーが、新たに新築住宅のリノベーションを依頼したという。「新築リノベ」は、リノベーションのひとつのバリエーションとして、これからじわじわと広がりを見せるのかもしれない。●取材協力

ブルースタジオ
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