自民党が進めるカジノ解禁も世論は反対が優勢 その是非は?

自民党が進めるカジノ解禁も世論は反対が優勢 その是非は?

カジノ法案が国会で成立

国会では、カジノ解禁を含む統合型リゾート(IR)の整備推進法案(カジノ法案)が成立しました。
この法案自体は、IRの整備推進に関するものなので、実際にIRを設置するためには、今後、IR実施法案を成立させる必要があります。今回の法案によれば、政府は1年以内を目途としてカジノの運営規則などを定める実施法案を成立させることになります。

世界的にはカジノを認めている国が圧倒的多数

さて、カジノ解禁の動きですが、世界的には多くの国でカジノが認められています。
東京都が行った調査報告によれば、2013年時点で、カジノが合法的に設置されている国は、米国、欧州諸国など140か国に上ります。国連加盟国が196か国であることを考えると、その多さに驚きます。大陸別にみても、欧州、北南米、アジア、中東、アフリカ、オセアニアと幅広くカジノが合法化されており、世界中に4000件以上のカジノ施設が存在しています。
他方で、カジノを非合法としている国は、日本をはじめ、ブラジル、ノルウェーなどむしろ少数派といえます。

世論はカジノ解禁反対が優勢

しかし、このカジノ解禁の動きについて、世論は反対意見が優勢です。
NHKの世論調査では、賛成はわずか12%で、反対の44%が大きく上回っています。
他のマスコミの世論調査でも、カジノ解禁に反対する意見が過半数を超えています。

法案によれば、カジノ解禁(IR推進)の目的は、観光と地域経済の振興により、財政に寄与することのようです。
この点、大和総研が2014年に行った試算によれば、横浜、大阪、沖縄の3箇所にカジノを含む統合型リゾートを建設した場合、建設による経済波及効果が5.6兆円、運営による経済波及効果は年間2.1兆円と上るとされています。
もっとも、カジノ解禁反対派は、アメリカニュージャージー州のアトランティックシティにあるカジノでは、近年大幅に売上が減少し、多くのカジノが廃業に追い込まれていることなどを例にとり、政府が目論む経済効果に疑問を呈しています。
PwCの調査レポートでも、2010年の実績値では、カジノ市場が急成長しているのはアジアのみで、米国は横ばい、その他の地域では市場規模が減少しています。
アジア地域にしても、アジアのカジノ成長を支える原動力は中国の富裕層であることを考えると、今後の中国経済の動向に大きく左右されるでしょう。

加えて、日本でカジノ施設が誕生した場合、日本の将来の経済見通しがそもそも厳しいことに加え、パチンコや他の公営ギャンブルとの競争、カジノ施設としてのアジア地域内の競争などにもさらされることになります。
IR建設により一定の経済効果があることは否定できないとしても、各種調査どおりの経済効果が見込めるかどうか疑問も残ります。

カジノ解禁に向けて避けては通れないギャンブル依存問題

そして、避けて通れないのがカジノ解禁とギャンブル依存の問題です。
ギャンブル依存をいうなら、日本国内に1万店舗以上あり、20兆円以上の市場規模を誇るパチンコや他の公営ギャンブルはどうなのかという問題はありますが、だからといってカジノのギャンブル依存問題を考えなくてよいわけではありません。

また、カジノの場合、一度に数百万円どころか数千万円、億単位の損失が発生することもあり、損失規模の大きさも特徴的です。
カジノの場合、客は食事からホテルから至れり尽くせりのサービスを受け、VIP待遇を受けるようになると、手持ち金が底をついていても、航空券、ホテル、食事などを無料で提供してもらいカジノに行き、現地で関係者や知人などから多額の借入をしてゲームをすることでさらに損失を拡大させるという、既存のギャンブルにはあまり見られないような構図もあります。

経済効果を期待してカジノを解禁するのであれば、よほど慎重なギャンブル依存対策に関する議論と効果的な規制が求められます。
今回の法案審議の短さをみていると、今後こうした議論が十分になされていくのか大きな疑問が残ります。

(永野 海/弁護士)

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