記者会見オープン化に消極的な「北電」 枝野大臣が異例の「改善指示」
原発の賛否に絡む「やらせ」が明るみに出た北海道電力(北電)で、いまだに社長の記者会見などからフリー・雑誌記者らが排除されている。ただ、この問題を筆者が11月末まで2回にわたり、電力担当の枝野幸男経産相の定例会見で質問したところ、枝野経産相は北電を含む全電力会社に対し、記者会見のオープン化を促すことを約束。12月に入って、事態が一気に動き出している。(上出義樹)
2年前の政権交代後、中央省庁の大臣会見では防衛省など一部の省庁を除き、フリーや雑誌、ネットメディアの記者の参加が認められた。また、福島第一原発の事故発生以来開かれている東京電力の記者会見なども、フリー記者の参加資格に制限はあるが、原則として「オープン化」されている。
ところが、北電主催の会見は北海道経済記者クラブ加盟の新聞・放送各社の記者に限定。中央省庁の会見ではフリー記者のような署名原稿提出などの必要もなく参加できる雑誌協会加盟社の記者まで、締め出されている。
■地元月刊誌「北方ジャーナル」には「出入り禁止」の言論封じ
筆者(上出義樹)が、「公益企業としては問題でないか」と枝野経産相に最初に質問したのが、11月4日の定例の閣議後会見。枝野経産相からは、「一般論」としながらも、「高い公益性を持つ企業は政府に準じた高い透明性が必要」などと、かなり強い口調で同社の会見運営を”批判”する言葉が聞かれた。
しかし、事態はその後も一向に改善されず。逆に、この北電会見問題を熱心に取り上げてきた地元月刊誌「北方ジャーナル」の小笠原淳記者が、同誌12月号 で、北電への「悪意」ある記事を書いたとして、個別取材にも応じない全面的な取材拒否、いわゆる「出入り禁止」を北電から言い渡された。
■風穴を開けたフリー記者の質問と「ツルの一声」
そこで、筆者が11月29日の閣議後会見で2度目の質問をしたところ、枝野経産相は「政府が行う記者会見の透明性に準じて(電力会社の会見も)行う必要があると思うので、全電力会社にその趣旨を指示する」と明快に回答。前回はなかった「電力会社への指示」という、さらに踏み込んだ言葉が返ってきた。
大臣の「指示」は、同省資源エレルギー庁電力・ガス事業部政策課が担当し、ただちに実行に移された。北電には、大臣会見のあったその日に東京支社の担当者に、記者会見オープン化を促す「指示」関連文章が手渡された。
その3日後の12月2日、「北方ジャーナル」誌の小笠原記者から筆者に、「取材拒否」解除の連絡が入った。まだ確定報ではないが、北電もあわてて記者会見オープン化の方針を固めている。
■「裸の王様」北電も逆らえない「権力」の構図
自画自賛めくが、今回の枝野経産相の「指示」は、もし大臣会見にフリー記者が参加していなかったら、出てこなかった話かもしれない。残念ながら、既存メディアからは北電の記者会見オープン化に援護射撃がなかった。
それにしても、他の電力会社同様に地域経済に圧倒的に君臨し、地元では怖いものがない「裸の王様」北電が、手のひらを返したように、そのかたくなな「時代錯誤」をいともあっさり変えてしまう背景には、一般人からは見えにくい「権力」の構図とその怖さを、良くも悪くも垣間見る思いがした。
◇上出義樹(かみでよしき)プロフィール
北海道新聞社で東京支社政治経済部、シンガポール特派員、編集委員などを担当。現在、フリーランス記者。上智大大学院(新聞学専攻)在学中。
(上出義樹)
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