話題のアルミテープの威力は絶大だった!?【CERC ~編集デスクのロードスター日記~ #14】

▲こちらが例のアルミテープ。スリーエム(3M)社の導電性テープというもの。ホームセンターでも手に入る汎用品で価格は1000円以下だ

▲こちらが例のアルミテープ。スリーエム(3M)社の導電性テープというもの。ホームセンターでも手に入る汎用品で価格は1000円以下だ

濡れた路面のせいでアルミテープの効果が過剰反応!?

トヨタ 86のマイナーチェンジ時に、公式にお披露目されたアルミテープの存在。ご存じない方のために簡単に説明すると、アルミテープをボディの所定部位に貼ることで、走行中に発生する静電気を空気中に放電し、本来の空力性能を十全に機能させる、というもの。

トヨタは数年前からアルミテープの効果を検証しており、すでに一部の市販車(現行型のヴォクシー/ノア、プロボックス、レクサスのRXなど)には、“こっそり”採用されているそうだ。もちろん、今回のマイナーチェンジで後期型となった86(と兄弟車のスバル BRZ)にも使われている。(カーセンサーnetに掲載されたトヨタ 86の試乗レポートでもアルミテープについて触れているのでチェック!)

どうやらこのアルミテープ、効果がすごいらしい。前述の試乗レポートでも自動車評論家の松本英雄さんは、「結果はビックリである」と書いている。他のネット媒体でも盛んにアルミテープのことが取り上げられている。

それらは概ね「オカルト」だの「プラシーボ効果(思い込み)」だのと最初は斜に構えているものの、実際にアルミテープ装着車に乗るとその効果に「ビックリ」という結果を報じている。ホームセンターで手に入る数百円のアルミテープを貼るだけで、まるで数十万円もするハイスペックなサスペンションを組み込んだかのようなハンドリング&乗り心地を実現してくれるというのだから、実に興味をそそられる話ではないか。

そこで、我が2代目ロードスターで検証してみることにした。場所はいつも練習しているサーキット「袖ケ浦フォレスト・レースウェイ」。テスト日はあいにくの雨。路面はフルウェット状態だった。

まずはアルミテープなしで30分走った。路面が濡れているせいで、タイヤが上手くグリップしない。速度が出ているコーナーでは、いわゆるアンダーステア(四輪がコーナー外側へ向かって流れていく状態)がひどい。フロントタイヤに荷重をかけ接地感を高めると、リアタイヤのグリップが極端になくなって今度はオーバーステア(コーナーの内側へクルンと回り込む)状態に。グリップしない分、操作に対する車の挙動がダイレクトだ。

同じような路面状況の中、今度はアルミテープを貼って走ってみた。貼ったのは、フロントタイヤ周辺の静電気による悪影響を緩和するといわれる、ステアリングコラム部分。本当は、いろんな箇所にたくさん貼りたかったのだが、効果の有無を端的に知るために1ヵ所に絞ってみた。ちなみに、ステアリングコラム部分は、ネット上でも多くの人が試していた箇所だ。

▲テスト日はご覧のとおり、あいにくの雨。ある程度走り慣れたサーキットではあるが、路面がウエットだと勝手が全く異なってしまう

▲テスト日はご覧のとおり、あいにくの雨。ある程度走り慣れたサーキットではあるが、路面がウエットだと勝手が全く異なってしまう

“フォース”同様、アルミテープにもダークサイドが!?

効果はあった。それも、かなり明確に。

おそらく、路面が濡れていてタイヤがグリップしなかったことも、効果を明確に感じられた理由のひとつだろう。主観的な体感値だけでなく客観的なタイムにも、大きな違いが見られた。ただし、主観にしろ客観にしろ、その効果は悪い方へ出てしまった。

まず体感値から。コーナリング時のアンダーステアは驚くほど解消した。フロントタイヤの接地感が明確に上がったのだ。その一方で、リアの接地感が極端に薄くなり、どのコーナーでもオーバーステアの傾向が強くなった。要は、ステアリングを切ると、フロントタイヤが「グイグイ」入っていき、同時にリアタイヤが「ツー」っと外へ流れていくのだ。

これは怖い。怖いからと言ってアクセルを緩めると、フロントの荷重が抜けてさらに挙動が乱れてしまう。幸いスピンはしなかったものの“危うい”場面が何度もあった。だから、そうなったときは、覚悟を決めて、アクセルを踏み込みドリフト状態にするしかない。それはそれで楽しかったりもするのだが、タイムは全く伸びずかえって遅くなってしまった。

検証は厳密なイコールコンディションで行ったものでもなく、ドライバーの技量にもいささか難があるので、今回の結果がアルミテープ効果の最終回答などと言うつもりは毛頭ない。路面が乾いているときなら、また別の結果や印象だったはずだ。

ただし、ひとつ確実に言えるのは、アルミテープを貼った車には“何らかの作用が働く”ということ。この作用を、例えばサーキットでのタイムアップといった、ポジティブな方向に持っていくためには、貼る位置や大きさなど、かなりの経験値が必要なことも確かなようだ。

アルミテープは、性能を引き上げるものではなく、本来その車に備わっている空力性能を最適化することしかできない。だが、それだけでも走りの体感値は明確に変わってくる。ただし、それで本来の性能を十全に引き出せれば良いが、処方を間違うとバランスを崩して、映画『スター・ウォーズ』シリーズのダース・ベイダーのように、ダークサイドへ陥ってしまう可能性も大いにはらんでいるようだ。

▲ステアリングコラムの下にペタッと。大きさは約1センチ幅で長さ3センチ程度。静電気が最も溜まりやすいタイヤ&タイヤハウスまわりの空気の流れを良くする効果があるそうだ

▲ステアリングコラムの下にペタッと。大きさは約1センチ幅で長さ3センチ程度。静電気が最も溜まりやすいタイヤ&タイヤハウスまわりの空気の流れを良くする効果があるそうだ

【CERCとは】

中古車情報誌『カーセンサー』の連載『CERC』のスピンオフバージョンである。カーセンサー本誌に収録しきれなかった話題を、同連載の語り手である本誌デスク本人が赤裸々に綴る。ちなみにCERCとはCarsensor Editors Racing Club(カーセンサー・エディターズ・レーシング・クラブ)の略。

【筆者プロフィール】

1970年生まれ。群馬県在住の編集・ライター。カーセンサー本誌の編集デスク担当。

2015年9月に参加したメディア対抗ロードスター4時間耐久レースでの惨憺たる結果から一念発起。運転技術を磨くべく、マツダ ロードスター(2代目)のNR-Aを購入した。

【関連リンク】

トヨタ 86の試乗レポート CERCの過去記事はこちら text・photo/編集部 中野

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