「オリンパスは法人として維持していける」ウッドフォード元社長会見 全文
精密機器メーカー・オリンパスのマイケル・ウッドフォード元社長が2011年11月25日、日本外国特派員協会の記者会見に出席した。同社の不透明な資金の流れを追究しようとした矢先、突如解任されたウッドフォード氏は、解任された会議の直後には「反社会的な組織がどうのということを聞いていたので、ちょっと心配に」なり「手が震えた」と、当時は身の危険すら感じたことを明らかにした。一方でウッドフォード氏は、「オリンパスは今後も独立した会社として存続していけると思うか」との質問に、「法人として維持していける」との見方を示した。
以下、会見を全文書き起こすかたちで紹介する。
・[ニコニコ生放送]全文書き起こし部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv71767687?po=news&ref=news#6:35
■私のマスコミに対するイメージは非常に良くなりました
司会: 皆さん、こんにちは。日本外国特派員協会へようこそいらっしゃいました。このミッションのジャーナルをしておりますジャン・スレーターという者ですが、司会をしたいと思います。ダライ・ラマの記者会見の時よりも多い記者の数となっているようです。それでは、オリンパス元社長CEOであるマイケル・ウッドフォード氏を紹介します。ジョナサン・ソーブルを紹介します。マイケル(・ウッドフォード氏)が20分ほど話をして、質疑応答の時間にしたいと思います。
日本外国特派員協会担当者: (マイケル・)ウッドフォードさんとは文化が異なりますけれども、午餐にこんなにたくさんの方々が来ていただき嬉しく思います。ウッドフォードさんは『エコノミスト』誌そして『フィナンシャル・タイムズ』誌のジョナサン・ソーブルのおかげで、今日ここに来ていただいております。2人をこの協会で歓迎したいと思います。ウッドフォード氏は『フィナンシャル・タイムズ』のジョナサン・ソーブルと話をする前に解任をされました。ジョナサン(・ソーブル氏)は、この件について報告をしましたが、日本のプレスでこれを取り上げたのは『FACTA』誌でした。私たちの特派員協会にとっては、これは非常に重要な案件であると考えています。会員が多ければ多いほうが良いので、(日本外国特派員)協会のメンバーになってくだされば幸いです。
ジョナサン・ソーブル(以下、ソーブル): 皆さん、こんにちは。少なくともこの6週間、ゲストスピーカー(=ウッドフォード氏)をかなり私の記事で取り上げました。少し背景的な話をしたいと思います。
1981年、マイケル・ウッドフォードは、医療メーカーのジュニアセールスポジションの募集に応募しました。オリンパスが募集していたのです。その時(彼)は日本について、オリンパスについてあまり知りませんでした。それ以降、30年オリンパスで仕事をし続けております。(2011年)4月に社長職に就くために東京に来たのですが、その前はヨーロッパで主に仕事をしていました。(オリンパス前会長の)菊川剛氏がミーティングをしようということで東京に呼んで、その時に「社長に就いてほしい」というオファーを受けました。92年の会社の歴史の中で、初めての外国人の社長でCEOとなりました。
2月に発表があって、4月1日付けで社長になりました。しかし、皆さんご存知かもしれませんが、10月14日付けで解任されたのです。オリンパス側が言うには、良くない社長であったと。オリンパスの組織を無視した、ヒエラルキーを無視した、そして日本の企業文化を理解せず上手くいかなかったと言ったのです。そしてさらに、スタッフに菊川氏はメモを回覧し、彼の人格を攻撃しました。「彼は日本を好いていない」というメモでした。外国人で日本文化に溶け込めなかったんだと言ったんです。
しかし、一方でマイケル(・ウッドフォード氏)から聞いた話は、まったく異なっていました。私は、ジャーナリストを呼んでイギリスで会ったのですが、監査会社からの報告書などが黒いフォルダーに入っていまして、いろいろな社員からの情報も含まれていました。オリンパス側は、投資に関しての損失隠しをしていたということを認めています。1990年代から20年間行っていたということをやっと認めました。実際何が起きたかは、まだはっきりわかっていません。なぜその損失が起きてしまったのか、どういう風に隠してきたのかは、まだはっきりわかっていません。そして誰が関与していたのかもまだ不明です。私はこの6週間、マイケル側からはたくさん情報をいただいているので、オリンパス側の話もぜひ聞きたいと思うのですが、「FCCJ」、つまりこの(日本外国特派員)協会でのミーティングにぜひ来てほしいものです。マイケルからはまだ疑問がたくさんあると思います。彼の話をぜひ聞きたいと思いますが、まずは歓迎の拍手をしましょう。
会場: (拍手が起こる)。
マイケル・ウッドフォード(以下、ウッドフォード): 立ち上がったほうがいいですか? アメリカ大統領ではないんですけれども、演台から話をしたいと思います。ブラインミラー・・・ワクさんと息子のダグラスさん、立ち上がっていただけますか。この2人にぜひ拍手をしてください。理由はすぐにお話します。
会場: (拍手が起こる)。
ウッドフォード: このストーリーが白日の下にさらされたのですが、20人くらいのPR担当者が私に協力してくれています。イギリスでは、私の妻なんですけれども新しい秘書を3回解雇しています。セクハラ(セクシャルハラスメント)を受けたと妻が言っているんですが・・・いずれにせよ冗談です。妻を秘書にするのはなかなか大変なことです。日本ではいろんなことをコーディネートしないといけないんです。ワックさんは11年ぐらい(前からの)友人なんですけれども、ボランティアとして翻訳を手伝ってくれています。彼の奥さんが非常に怒って離婚をされてしまったようです。彼はマスコミ関係をすべてオーガナイズしてくれています。今朝の7時から、すでに3つくらいインタビューがあったんですが、時差ボケなのであまり面白くない話になってしまったら、ワックさんのせいにしてください。
私の(話の)後に、質疑応答の時間をたくさん取りたいんです。『エコノミスト』誌の記者発表が昨日あったのですが、私の話を聞かなくてもジョナサンが代わって話をしてくれるくらい良く知っていると思います。いずれにせよ、私が置かれている状況は、非常に奇妙な状況です。私はビジネスマンでありますので、(日本に招かれたときも)ヨーロッパ、アメリカ、UKで行ったように、電子機器の会社の経営をするものだと思っていました。しかし、ジョン・グリシャムの小説のようにFBIに会ったり、取締役会議での内容、あるいは私の人格を攻撃するといったような、非常に奇妙な経験をしてきています。もちろん刺激はたくさんありますが。
私のマスコミに対するイメージは非常に良くなりました。皆さん、ご自身に拍手をしてもいいと思います。イギリスのマスコミに関しては、エリート的な観点から批判的だったんですけれども、『フィナンシャル・タイムズ』がこの事件を取り上げてくれましたし、日本の首相に会うこともでき、それも記事として取り上げられました。アメリカの『ウォール・ストリート・ジャーナル』、『ニューヨーク・タイムズ』がこのストーリーの調査を、日本・アメリカ両国で周到にしてくれています。他のジャーナルも言ったほうがいいんですか? いずれにせよ、非常に素晴らしい仕事をしてくれています。もう1つ名前を挙げたいのは『FACTA』誌です。(ファクタ出版代表取締役社長の)阿部(重夫)さんいらっしゃいます? 彼はアメリカ人のCIAのように見えますけれども、私の仲間であるといいな思います。日本では言論の自由、出版の自由があると思っていたのですが、ジョナサンの『フィナンシャル・タイムズ』の記事が実際に載るのかどうか懸念しておりました。しかしジョナサンの記事は4面にきちんと取り上げて発表され、どこかに拭い去られてしまうということもありませんでした。
実際にこの話はジョナサンが言った通り1年前に始まりました。菊川さんに呼ばれて「次の社長は君だよ」と言われたんです。あれは非常に奇妙な会議でした。日本にその会議に出るためだけにやってきたんですけれども、15分で終わりました。その時に「マイケル、私にはこの会社を変えることはできないけど、マイケルだったらできると思う。オリンパスグループの中で最も利益を上げているのはヨーロッパだ」と言われたので、私はすぐにその場で「はい」と答えました。もしかしたら私の判断力が少し悪かったのかも知れないですけれども、すぐに「はい」と言いました。実は、これからオリンパスに対して何かを正したいとずっと思っていたんです。そのチャンスが来たと思って「はい」と言いました。昨日の会見で言ったことと同じことを言ったら、みなさん退屈かも知れませんがすみません。
そして、妻に電話をしました。パーク・ハイアット(ホテル)に行く途中で電話をして「次の社長だって言われたんだ」と言ったら、妻が泣きだしたんです。彼女はなんで東京に呼ばれたのかを知らなかったのですが、嬉しくて泣いたのではありません。妻は怒っていたんです。本当に怒っていました。「なんでわざわざそんな仕事を? 」と言うんです。「これからハシゴを登って、どんどん偉くなろうと思っているのか。私たちは経済的にも自立しているし2人の子どももいるし、とても幸せではないか。なんでここから6,000マイルも遠いところで仕事をしなければいけないの?」と妻は怒っていました。涙を流していました。その時にはそう思わなかったけれども、今思えば本当に彼女は正しかったですね。ただ涙を流すとしても、今こういう状況にはなるとは、妻もまったく思っていなかったと思います。
そして、(2011年)4月1日より15人ぐらいの(候補の)中から社長になりました。アメリカとも似ているんですけれども、医療機器それから消費者部門。アメリカにも、ラテンアメリカ(の支社)でもそういう部門はありますけど、あとアメリカとカナダを含む北米・・・本当に大きな業務です。ところがかつては非常に会社の経営が悪かったんです。ですので、以前私と仕事をしてきた人間を担当にしました。そこが済んでから、日本だと思ったんです。コストが非常に高かった、販売管理費がとても高かったので、私としては20%ぐらい削減できるんではないかと思っていました。例えばこの20%を削減することができれば、6憶ドルも会社の利益が上がるので、この販売管理費をもっと下げる必要がありました。ただ日本の場合には、しっかりとした契約がありますので、すぐに人を解雇することはできません。実は私はリバプールでは組合員でしたので、実際に軍隊のような考え方もありました。工場をすぐに閉鎖するとかそういう考え方は好きではないんです。でもそんなことをしなくても、いろいろなやり方があると思いました。たくさんのコンサルタントもいたので、その仕事を本当に楽しんでいました。
■私の理性は「事実を追究したほうがいい」と言った
ところが、阿部さんがこの幸せな時を壊してしまいました。7月20日の『FACTA』誌8月号の後ろのページ、実は裏表紙と思っていたんですけれども日本では表表紙でしたが、この中で5ページにわたっていろんな図式も入ってる特集記事があったんです。私はそれに対して、同僚や友達、いろんな人からeメールを受け取ることになりました。私は『FACTA』誌のことは聞いたことがなかったんですが、(読んだとき)最初の印象は「これは信じられない、考えられないことだ」と思ったんです。そして、29日の金曜日に日本に帰ってきて取締役会がありました。日曜日に仲の良い日本のビジネスマンと温泉に行っていたんです。実は30年間、日本に行ったり来たりしていますので、私が日本が嫌いだと中傷されましたけれども、日本は大好きです。特に温泉は本当に大好きです。親しい人と行くのは大事ですし、実はこれは奢ってもらったのですが・・・大変美味しい夕食も食べました。
その時にこの男性が記事の翻訳を持ってきてくれたんですが、本当にびっくりしました。この友達から「しっかりとした情報源に基づく記事のようなので、これは真剣に受け止めたほうがいい」と言われました。私はもう英雄ではありません。先ほど自分から、ダライ・ラマ世の(会見の時の)ように人が集まってくれたと言いましたけれども、とても比べものにはなりません。でも実はその記事が翻訳されて、そして月曜日にそれを見せたんですけども、会社では何も言われませんでした。心配になったので、それを取締役会の2人の同僚に見せたんですけども、この2人の同僚は「そうなんです。そのことについては知っているんだけれども、この雑誌はあなたには見せるなと菊川さんに言われました」と言いました。
私は、なんでそんなことを言うんだろうと思ったんです。私が社長だったので、こうしたことを社長から隠すのは変だなと思ったんです。それが月曜日のことです。そして火曜日になりました。火曜日の朝は誰にも何も言われなかったので、会議を開くことにしました。お昼が空いていたので、実は私、細かいことをよく覚えているんですけれども、ランチミーティングで森(森久志オリンパス前副社長)さん、菊川さんとお寿司のランチだったんですけれども、私の座っているところにはツナサンドがあって、あまり美味しそうではなかったんです。2人の前にはお寿司がありました。わざとそんな失礼なことをしたんではないと思うんですが、私は本当はお寿司が大好きなんです。実はあまりお腹が空いていなかったので良かったんですけれども。そして、『FACTA』誌を見せると、その時に部屋の雰囲気がガラっと変わって「日本のことがわかっていないね」と言われました。私はそういう風によく言われますけども、日本の人は表情を変えないし好きか嫌いかもわからないと言われて時々混乱してしまいますけれども、私は日本人と長い間仕事をしていますので、実は小さな違いを見分けることができています。例えば肩がちょっと強ばって、眉がちょっとキッとなった時にはイラッとしたなということがわかりました。
でもそれでも(彼らは)笑みを浮かべようとしていました。私は「何でこれについて私に何も報告がなかったのか。ニューヨーク、パリ、ボストンでIR、投資家のミーティングをした時も誰も何も言わなかったのはなぜか。いろいろな会社の関係者と話したのだけれど、この記事の内容は非常に深刻ではないか」と言ったんです。そしたら菊川さんは「あなたは社長で忙しいから、こんなことは気にするべきではない」という感じだったんですけれど、それはちょっと変だと思いました。それで私は「いや、そんなことはないです。私はこういうことを理解する必要があります。とっても重要じゃないですか」と菊川さんに言いました。そうしたら、菊川さんたちはランチミーティングをやめようということで席を立とうとしたんです。席を立つ前に「これは本当ですか?」と聞いたら、菊川さんは「ほとんどね。でも少し修正しましたよ」という答えだったんです。私はそれがどういう意味だかわかりませんでした。
この記事を追ってらっしゃる皆さんは本当に複雑だということをわかっていると思うんですけど、『FACTA』誌の記事には2つの大きな問題があります。まず会社が3つの取るに足らない会社に対して、その時の為替レートにすると8億ドルものお金を払ったということ。その時、私は「ミッキーマウスのような会社」と言ったんです。ディズニーに訴えられなければいいんですけれども、英語では取るに足らない会社のことをそういう風に言います。その会社は顔に塗るクリームの会社でした。これだけのハイテクの会社が、なぜdクリームの会社を買ったのか。しかも通信販売の会社です。確かに存在する会社でした。1つ15ドルぐらいのクリームを今年初めにもらって、妻にもあげましたけども、他のクリームより特に優れているというわけではありませんでした。(その会社は)実際に利益、売り上げはないんです。
ですので、オリンパスがフェイスクリームのビジネスをして、日本の化粧品会社やヨーロッパ、アメリカの化粧品会社と競合するわけではないのです。なぜそんな会社に高いお金を払ったのか。なぜ永遠の若さを保てもしないクリームにそんなにお金を払ったのか。わかりません。もう1つが電子レンジ用の調理機器、容器の会社でした。それからもう1つが、ヘルスケアのリサイクルの会社でした。資源リサイクルです。その時、会社はジャイラスグループというイギリスのヘルスケアの会社を20億ドル相当で購入していました。買収です。これはおそらくおそらく利益としては2,000万ドル。対して20億ドルですから、実際の利益に比べて100倍くらいのお金を払ってしまったわけです。そして報酬、助言報酬として6億8700万ドル、日本円にして660億円相当のお金を払っていました。ですので、2つの取引について森さんにも聞いたんです。1つがジャイラスの助言報酬7億ドルについて。実はその時に「報酬」だということはわからなかったんですけれども、「買収のお金と7億ドル、これは何ですか?」と聞いたんです。そうしたら「優先株だ」と森さんは答えました。「優先株とはどういうことですか? 少数株主でもないのに、自分たちが100%所有しているのはどういうことなんですか?」と聞いたら、いきなり黙ってしまいました。
また、3つのわけのわからない会社の話を聞いたのですが、「ギリシャの悲劇」ではないけど、何か変なことが起きてるぞと聞いたわけです。この化粧品のクリームの会社はどうなったんだと。見た時は非常に馬鹿げた買収だなと思ったんです。彼が言うには「たくさんの企業がこの会社を買収したいと思っていたんだ」と。私は「上場企業ではないのに、どうやって価値を査定することができるんだ」と言い、『FACTA』誌の記事を参照したんです。そうすると何も言わなくなりました。もう1つは、電子レンジでチンできる容器の話をしたところ、彼は「この容器は糖尿病の患者に良いんだ」と言いました。そこでわけがわからなくなったんです。電子レンジでチンをすると、その容器が砂糖を吸収してくれるんでしょうか。
私は会社の社長、彼が副社長。それで深刻な問題があるから基本的な質問をしたのに、何も答えてくれなかったんです。私は怒りを覚えて、彼の目を見つめて「森さん、君は誰のために仕事をしているんだ?」と聞いたんです。オリンパスのためと言うかと思いました。自分の上司の名前ではなくオリンパス、「いつもオリンパスのために働いている」と、私なら必ずそう答えます。しかし彼は「マイケル、私は菊川さんのために働いている。菊川さんに忠誠心を感じている」と言ったんです。オリンパスのトップに何か非常に変なことが起きているということを痛感しました。本当にその場から逃げたい気分でした。すぐに辞任したほうがいいのかと、こんな人たちと仲間だと思われたくないと思ったんです。しかし私の理性は、「事実を追究したほうがいい」といったんです。
■学校で子供がするように取締役全員が元気に挙手した
8月の最後の2週間、休暇が控えていましたけれども、休暇中もこのことがなかなか頭を離れませんでした。毎朝4時には目が覚めて、2つの月がぐるぐる回っていました。8億の3つの変な会社、そしてもう1つは7億ドルというジャイラスに対する支払い。去年オリンパスは4億ドルしか収益がありませんでしたが、かなり巨額の資金が流出していたのです。非常にイライラしました。何か本当に変なことが起きると思ったんです。一番長い出張はアメリカ、ニューヨークでの取締役会への出張でした。ニューハンプシャー通りの11ですが、そこのドイツ、チェコの施設の閉鎖などの話をしたわけです。そして9月22日にまた戻ってきました。すこしリラックスしてきた時に、阿部さんがまた別の暴露記事を続報として出したんです。さらに詳細が含まれていました。非常に細かい話、(投資会社)ジェイ・ブリッジや反社会的な組織について書いてありました。「ジェイ・ブリッジとは何だ? タイヤの会社か?」と思ったんです。でもこれが反社会的な組織犯罪に関わるような組織だとは知りませんでした。それを見て、もうこれは何かをしないといけないと思ったんです。23日に戻る予定だったので、この巨額の資金が流れ奇妙なことが起きているということで、まずは森さんにメールを書きました。8ページに及ぶ書簡です。私の心配が何かということを細かく書いて、取締役会にもCCで送りました。今となれば皮肉な話ですけれども、森さんはコンプライアンスオフィサーだったんです。その3つの非上場の会社とジャイラスグループへの支払い、そしてITXという助言を提供するような会社、その他たくさんの奇妙な会社、ペットフード会社、DVDの制作会社、様々な企業買収において細かく検討されていないものがあったのでそれを羅列しましたが、いずれにせよそのうちの2つに焦点を当てて調べてくれと言ったわけです。
私は(スコットランドの)ボウモアへ出張の移動中だったんですが、金曜日の夜11時くらいにメールを出しました。そして返事が来たんですが、「これは2009年に独立レビューが行なわれており、『問題無い』ということなので心配するな」と言われました。非常に不安な気持ちを持ったまま、週末の土曜日を迎えました。答えが不十分だったので、森さんに「この答えでは不十分だ」と言いました。日曜日に3回目のメールを出しました。オフィスに行って3回目のメールを書いたんです。そして月曜日に菊川さんから返事が来て、我々のやり取りは非常にがっかりする内容だということで森さんからも返事がきました。私は4回目のメールを書いて、非常に心配だったのでアーンスト・アンド・ヤング(会計事務所)、オリンパスの今の監査会社なんですが、そこにもCCでメールしました。外部に対しても透明性を保ちたかったんです。日本のシニアパートナーだけではなく、アーンスト・アンド・ヤングのヨーロッパ、アメリカ、アジア支社、そしてアーンスト・アンド・ヤングのCEOまで、そのシニアのメンバーにCCで送りました。
このファイルを見た方は適切な専門家であるということを担保したかったので、カバーレターを付けました。そしてグローバルにアーンスト・アンド・ヤングが監査をしてくれていて、ロンドンベースでしたが、私の送ったメールを受け取ったと、コメントも認識したという返事が来たので非常に良かったと思ったんです。私の主張の内容が取締役会以外にも、アーンスト・アンド・ヤングのパートナーにまで届いたということで喜んでいました。基本的に何を書いていたかというと「十分に情報が得られなかったら、金曜日の取締役会でさらに追求をする」と書いたわけです。私が住んでいるロンドンのサウスエンドでは、私は誰にも知られていない人間なんです。しかし日本の会社で社長になったのはこれで4社目です。1社は変わっていますが・・・6ヶ月で首をすげ替えられました日本硝子です。いずれにせよ、私が西洋のサラリーマンとしてこの会社で初めて外国人社長となり、ヒューマンストーリーということでマスコミに取り上げられ注目を浴びたんですが、さらに今は刺激的な話になっています。
この会社の統治に関しては大きな問題があるので、私の質問に対する答えが無ければ辞任するとまで書簡の中で森さんに言いました。そして5回目の返事が来て、その5通目のメールのやり取りが終わったころ、私はCEOを兼任することになっていました。ほとんどの日本の会社の社長はCEOでもあります。私は後になって、菊川さんからCEOになると聞かされたのです。取締役会のメンバーを決めるのも菊川さんだと聞きました。雇用や解雇、そして報酬も彼が決めるということを後で聞いたんです。ですので「私は操り人形にしか過ぎない」ということを認識したのです。
いずれにせよ、私はCEOの兼任にされました。金曜日の取締役会の中でそれが批准されました。取締役の挙動を見ていたのですが、非常に長い取締役会で、CEO兼社長になって、トップ1、2の任命権があると。全員が挙手をして直ぐに承認されました。その時に良かったと思ったのです。私こそが社長兼CEOで、トップ1、2を私が決められると。そうするとこの問題を解決できるんじゃないかと思ったのです。菊川さん、森さんを解任できるんじゃないかと思ったんです。その立場だったらそれも難しくはないだろうと思っていました。それが期待されていたことなのですけれども、同じ取締役会で3人の取締役から3つの質問を受けました。1つが鈴木(正孝オリンパス取締役専務執行役員)さんからです。彼は中国担当の取締役です。実は、彼はヨーロッパでも仕事をしていましたので、「いつもジャイラスの取引に対してマイケルは批判をしていたけれども、社長になってから6ヶ月、なぜ今さら言うんだ」と言われたんですが、確かにそうなんですけども、それがポイントではないんです。私たちは確かに20億ドル払いました。それは高いと思いました。ただ、それに対して報酬が6億ドルあったわけです。アグザム・インベストメントというケイマン諸島にある誰も知らない、誰も行ったこともないような会社です。その会社に払って、その後すぐに会社は閉鎖してしまったわけです。柳澤(一向オリンパス取締役専務執行役員)さんは「マイケル、その時に取締役会に来なかったではないか」と。実際に取締役会はこの会社を管理していたんですけれども、私は社長で情報が欲しい。ですから、ここではしっかりと「社長としては取締役会に行く前に情報が欲しい」と言ったわけです。それから社外取締役の人がこう言いました。「マイケルさん、あなたはアーンスト・アンド・ヤングにメールをCCしていますけれど、なんでそんなことをしたのですか?」と。いろいろな質問の中で、それが一番愚かだと思いました。なんでしてはいけないのでしょうか。やはりそもそもが監査の問題に触れているわけです。
ですからその時にわかりました。「あなたはCEOかも知れませんけれども、会社を動かしているのは、実は私たちなんですよ。わかりましたか?」というメッセージが送られたと思いました。その時、エールフランスでロンドンに帰って、そしてまた戻ってという、昼間のフライトは1日無駄にしてしまいますので嫌いなんですけれど、パリに戻る時は全然眠れませんでした。そして朝の4時に地元で電話をしたりしました。本当に心配だったんですけれども、私はこれから何をするか、もう心を決めていました。月曜日の朝に、プライスウォーターハウスクーパース(会計)事務所に電話をして、この7億ドルの報酬について調べてほしいと依頼したのです。ここが本当に、一番大きな問題だと思いました。そして、PWC(プライスウォーターハウスクーパース)にオリンパスの社長として、新宿のオリンパスの会社のしっかりとしたレターヘッドを使って依頼をしました。これは私の権限で依頼をしたわけです。「1週間待ってくれ」と言われました。そして翌週火曜日にロンドンを発って、水曜日に日本に着いて、オリジナルのレターを菊川さんに出しました。取締役にもCCをつけ、それからすべての監査員、オリンパスの弁護士、アーンスト・アンド・ヤングにCCを付けて、最後に「これは非常にひどい内容であり、森さんと菊川さんに解職を求める」ということを、PWCの報告書と共に提出したわけです。
このような方たちは、今まで実際に誰かに楯突かれたということは無いでしょう。PWCの報告書というのはしっかりしたプラスチックのフォルダーになっていて、PWCとしっかりロゴも付いていて30ページの文書でした。説得力がありましたので、ここで(菊川氏らは)辞めるかも知れないと思ったのです。この法定会計事務所をしっかりと関わらせたということ、そしてその報告書があるということで、この解職が可能かも知れないと思いました。そして、そのほうが会社のためになると思ったのです。それが朝1時です。朝起きて、その時に送ったeメールが開かれた頃かな、金曜日にオフィスに行ったら何が起こるかなと思いながら、eメールを読んだりしました。そして午後5時半、まだ東北にいたのですけれど、eメールを受け取りました。「明日緊急取締役会を開く。その緊急取締役会で、ガバナンス、企業統治に対する深刻な問題を話し合う」と書いてありました。この取締役会で自分が解職になるんだと思いました。もしも菊川さんと森さんが自分の解職の要請を受諾するんだったら非公式に会うはずだと思ったのです。私はこの70歳の男性が大人しく静かに去るかと思ったんですけれども、実は私以上に何かを恐れているようで、抵抗したのです。
その日の9時少し前に取締役会に着きました。森さんがここ(左側)に座っていました。それから菊川会長がここ(右側)に座っているはずだったんですけれど、席は空いていました。9時2分過ぎに私が時計を見だして、そして少しそわそわしていたのですが、参加者の皆さんは誰も私と目を合わせようとはしませんでした。森さんが私のほうを見て「マイケルさん、昨日の東北の出張はどうでしたか。いろいろと感じることはあったんじゃないですか?」と聞かれたのです。その時に、3万人が亡くなった地震があり、津波がありという、昨日の光景が頭に浮かんできました。こうした会議でこれから何が起きるかを森さんが知っているなら、その話を出すのは本当に最悪だと思いました。
私は森さん、「森専務」とかではなくて「森、私に駆け引きをしないでください」と言ったのです。とにかく「何を言いたいかわかっているので、早く言いたいことを言ってください」と言ったら、菊川さんを呼びに行きました。最終的に9時7分過ぎでした。日本では本当に時間通りに会議が始まります。会議の中で最も重要なのは、時間通りに始めることであって、会議の内容よりもそちらが大事なのではないかと思うほど時間通りに始まるのに、これは遅れて始まったのです。そして菊川さんが自分のいつもの席に着かないで演台に行ったのです。何かパワーポイントの紙を持っていました。例えば、北アフリカのセールスの状況についてでもプレゼンするのかなと思ったのですけれども、そうではなくて「今日の取締役会の議題は、重大なオリンパスの買収について話し合いをする予定だったが、キャンセルされた」と言ったのです。実は、取締役会の議題をその時にキャンセルするということは、日本以外では会社法に違反しています。ですからそれは許されていないのです。ところがそれがキャンセルされました。そして「ウッドフォード氏を社長、代表取締役、そしてCEOの職から解職、解任する」ということが議題のひとつになっていたわけです。「それは、ウッドフォード氏とは利益の相反があるからだ」と言われました。非常に変わっていて、ひどいと思いました。そして「これに賛成する人」と言ったら、学校の教室の子どもが元気よく手を挙げるように、取締役が全員挙手をしたんです。頭まで傾けて勢い良くです。その時にはまったく考える時間も無く、すでにこの会議の前に結果は決まっていました。取締役会がひとつに団結していました。社外取締役もです。大きな黒いファイル、内容に合っていると思ったので黒を選んだんですけれども、その中にその報告が書かれていてPWCのロゴも載っているものですが、それについて何の話もしない。そして世界中の、ヨーロッパとアメリカを含む取締役の職務を解職されるというのが、2つめの議題。そして森さんがその職を引き継ぐと。それも皆さん元気に挙手しました。9時15分には、会議は終わりました。何人が賛成したかも数えてはいなかったのではないでしょうか。
私が急いで部屋を出た後、川又(洋伸オリンパス取締役執行役員)さん、財務のチーフの方がいらっしゃいました。何か笑みを浮かべていたのですが、居心地の悪そうな、とにかく誰かを解雇しなければいけないということで、非常に過敏になっていたと思います。やはりこういう解雇という時には、暴力的になる人もいますし、私の反応を非常に恐れていたと思います。ただニコニコしながら私の元にやってきて、「ちょっと細かいことなんだけど、2つの携帯電話を渡してくれますか?」と言ったんです。私は2つ持っています。日本で使うギャラクシー、それからヨーロッパで使うiPhoneです。ギャラクシーのほうは渡しました。iPhoneには私の妻から連絡があるかも知れないし、今日のことを心配しています。「これを取ってしまうのですか。あなたは警察官ですか? 取る権利があるのですか?」と言ったのです。私はリバプール出身で、リバプールでは警察官がそういうことをすることがありますので。
そこはそれで済んで、「コンピュータは?」と聞かれました。「2台のソニーのコンピュータがあります」と言ったんです。ここで何かあった場合には、イギリスでもデータベースがありますので、「これは全部イギリスのほうに送られており、日曜日にオフィスに戻ったら、法的にも問題がないようにデータは消去します」と言ったんです。また「マンションの鍵をください」と言われました。私は代々木公園の本当に素敵なマンションに住んでいまして、家賃の51%はちゃんと自分で払っていました。「今週末に出ていってください。鍵が欲しい」と。私はオリンパスのディレクターだったので、そういうやり方で対応をされるのは本当に嫌だったんです。さらに「会社の運転手は使わないでください。リムジンバスに乗って空港に帰ってください」と言われました。
ビルを離れるときに、ジェイ・ブリッジとか反社会的な組織がどうのということを聞いていたので、ちょっと心配になってきました。しかし、日本を良く知る人は理解できると思いますが、争いはなるべく避けたいというほうが多いと思うのです。私は15億ドルという説明の付かない巨額の資金がケイマン諸島に流れているということが、非常に心配だったんです。手が震えてきて、その反社会的な組織のことも心配で、走って家に戻りました。代々木公園にはアイスクリームスタンドがあって、お母さんと子どもたちが遊んでいるので、そこは安全だと思っていました。ジョナサン・ソーブルはロンドンでストーリーを書いているかも知れないし、どうだろうかと思ったのですけれども、電話をしたら、電話に出てくれたんです。10時にオリンパスが記者会見をしたので、ジョナサンは私が解雇されたことをもう知っていました。そして、小さなカフェで会うことにしました。カフェで黒いファイルの1冊を渡したんです。インデックスもついていて、非常にわかりやすい、整理されたファイルでした。重要なポイントも書いてあります。それをぜひ取り上げてほしかったんです。私は非常に心配で不安でした。ジャーナリストにとっては非常に素晴しいストーリーだと思ったので、書いてほしいと思ったわけです。
次に、タクシーに乗って羽田(空港)に行ったんです。最初にキャセイ・パシフィック(航空)で香港に飛びました。ビジネスクラスのシートは、ちょうどトイレの隣でした。私はトイレの隣は大嫌いなんですけれども、そういう席しかありませんでした。香港に到着してジョナサンを見つけ、「これらの疑問点がある」とジョナサンから質問をされ、それに答えました。彼は「PWCとかアーンスト・アンド・ヤング、KPMG、オリンパスと、当時者全員と話しをしないといけない。きちんとしたジャーナリズムというものはそういうものだから、両者の話を聞きたい」と言いました。隣にトイレがあり一晩中人が行き来する席で、ひどい一晩を過ごして、5時30分にはヒースロー(空港)に着いていました。新聞の一面にも私の記事が取り上げられていて、素晴らしいストーリーでした。やっと出たということで、その後に『ブルームバーグ』、『ロイター』、『ニューヨーク・タイムズ』、「 ウォール・ストリート・ジャーナル』でもカバーされました。そして1週間後には日本の記事でも取り上げられました。それ以降のストーリーは皆さんもご存じだと思います。私からは以上です。
会場: (拍手が起こる)。
司会: ありがとうございました。それではまずFCCJ(日本外国特派員協会)の会員の記者、そして準会員の順で質問を受けていきたいと思います。質問は1人ひとつ、短い質問にしてください。私からの質問はないです。
質問者: ドイツの『フィナンシャル・タイムズ』から来ています。マイケルさん、今日はこの場に来てくれてありがとうございます。今捜査が始まっているようですが、疑問点は次の社長は誰かということです。高山(修一オリンパス代表取締役・社長執行役員)さんは辞任すると仰っていますので、取締役も将来的には辞めると思います。そうすると、誰が次の社長になるのでしょうか。あなたはもし株主が了承すれば社長に戻っても良いと仰っていますが、この会社の中で有効に仕事ができると思いますか。というのはオリンパスで働いている人たちと話をすると、例えば92周年記念の催しに参加しなかったということで反感もあると思いますので、心配です。また、日本で充分に時間を費やしていないということを言う人もいますがどう思いますか。
ウッドフォード: はっきりさせておきましょう。私は絶対に戻りたいと固執するわけではありません。法律的にもきちんとした位置づけにありますし。私は不正に解任されたわけですので、法的に私は何ら問題はありません。私は戻らなくても全然結構です。(ただ)従業員に対してはコミットしますので、呼ばれれば戻ります。このように記者会見を開いていますけれども、8週間もこのようなことが続いていますので、家族と共に穏やかに過ごしたいとも思います。
オリンパスでは私は仕事の40%を日本で費やしました。その点は他の役員とは違います。菊川さん、または森さんとの合意のもとに、オリンパスをグローバルな会社にしようと決めました。残りはアメリカ、ヨーロッパになります。日本、ハンブルグ、ニューヨークをローテーションで見ていくということになったのですが、東京オフィスを見ると、世界のビジネスを再編するためには、その事業が一番発生している所でコントロールしなければいけないのです。日本に来なければいけないということで非常に大変でした。この数週間の影響があるかはわかりませんけれども、アメリカでのビジネスをきちんとした経営陣のもとで行えば、利益は1億ドルプラスで上がるはずです。宮田(耕治オリンパス元専務取締役)さんのように、草の根で色々やってくださっている方もいらっしゃいますし、90%はポジティブな成果が見られると思うのです。日本の方々はこんなひどい目にあわされておかしいんじゃないのと思われるかもしれませんが、同僚の中には私をサポートしてくれる人もいますので、スタッフとの問題はないと確信しています。問題どころか、逆にサポートしてくださる人が多いと思います。
質問者: アンソニー・ローリーです。今思うと、この問題は違う扱い方があったのではないでしょうか。日本のアーンスト・アンド・ヤングやプライスウォーターハウスクーパースではなく、日本の当局にまず持ち込んだほうが良かったのではないでしょうか。『FACTA』誌に暴露記事が出ましたけれども、その『FACTA』誌のストーリーの情報源は確認されたのでしょうか?
ウッドフォード: ではまず、皆さんに聞きます。私がまず日本の当局に直接行っていたらどうなっていたでしょう? 皆さんの意見を聞きたいんです。もし日本の当局に直接持ち込んでいたならば、十分な対応をされていただろうと思う方は手を挙げてください。(会場を見渡して)5人ぐらいですか。 では、国際的なメディアにまず持ち込んだほうが良かったと思う方は? 阿部さんのほうからも発言してもらいたいと思いますが、内部で6つのメールを取締役に出しました。アーンスト・アンド・ヤングにもCCしました。取締役は無視するだろうと思ったんです。そしてその結果、解雇されるだろうと分かっていたからです。日本での私のやり方は、SESC(証券取引等監視委員会)、東京検察局、警視庁がより扱いやすいこと件の形にした上で行動をとったと思うんです。つまり、メディアでこのストーリーを知らせたのです。
日本では、株式の持ち合いやスキャンダルがあっても波風を立てないといったような、いろいろな異なる慣行やルールがあるわけです。ですので、もし直接当局に訴えていたならば、取締役も変わらないでしょう。最初に会社からの内部告発をした人が、本当に勇敢なのだと思います。私は51歳で子供も大きいし、しっかりと銀行口座に預金もあります。会社の社長でしたから、この内容は記事にし易かったと思います。でも実は、財務のジュニアマネージャーだとしたら非常に難しいでしょう。日本でそれをやったその男性は、私にとっては大変な英雄です。
質問者:その人は日本人ですか?
ウッドフォード: そうです、日本人です。私以外には外国人はいなかったと思います。
司会: はい。ではその方。
質問者: イザベル・レイノルズです。ロイターの記者です。全体的な会計事務所の変化があったのですけれども、実は40年ぐらい同じ会計事務所を使っていたんですよね。それもちょっと変わっているかと思ったのですけど、その段階で何か変なことが起きていると思いませんでしたか?
ウッドフォード: 「日本に対するロマンティックな考え方は、日本に来たらなくなりますよ」ってあなたは昔言っていましたよね。確かにそうでした。KPMGからの会計事務所、監査事務所の変更ですけれども、KPMGからアーンスト・アンド・ヤングに2009年に変更になったのです。その取引に関わる全般な変更ということで、私はちょっと面白いなと思ったんですけども心配はまったくしていませんでした。アーンスト・アンド・ヤングは非常に信頼のおける事務所だったからです。ですので、監査事務所の変更が何か変なことを意味するということは、その当時はまったく考えていませんでした。
質問者: 今日はありがとうございました。2つ質問があります。日本を理解していないと言われたと。でも財務の人がニコニコしながらやって来たと言っていましたけど、この「笑い」、私たち日本人以外から見ますと、なぜ笑みを浮かべているのかよくわかりません。でもこれが日本の文化なんです。こういう話し方をしていると日本の方は怒っていると思われるかもしれませんけど、シリアではこれが私たちの話し方なんです。ですから、例えば日本の人たちは追いつめられると、かえって笑みを浮かべるということはありませんか?
ウッドフォード: 確かにそうかもしれませんね。でも私はその男性をよく知っているんです。とにかく最高財務責任者ですから、アメリカでも仕事してましたから、自分が何をしているかということは、彼はちゃんと認識していました。アメリカにも住んだことがある男性ですので、彼は自分が何をしているかということをよく知っていたはずです。私が誤解をしたとすると、例えば「リムジンバスで空港に帰って」とか、「アパートの鍵を今すぐ渡してください。」って言われた場合に、他にどういう解釈の仕方があるでしょうか? やはり怖気づかせるような意図があったとしか考えられません。
■日経記者に「菊川さんはあなたが大好きだと言っていました」
質問者: 『エコノミスト』のヘンリーです。先ほどITXの話をされましたがどういう疑いを持っていたんですか。何か野村(証券)の関係の面で調査するべき話があると思いますか。
ウッドフォード: はい、このような記者会見にオリンパスが参加してほしいものです。彼らが十分な話をしないからです。今の質問の後半から先に答えます。野村(証券)との関係に関しては、まだ何もわかりませんのでコメントできません。最初の部分はなんでしたっけ? ITXですか。グローバル企業の3つのわけのわからない会社を買収しましたね。横尾(昭信元ITX社長)さんという人は、菊川がサポートしたITXの社長です。そしてオリンパスチャイナに行きました。兄弟なんですけれども、この3つのわけのわからない会社の取引にも関わっています。離れていますけれども、兄弟で繋がりがあります。ITXに関しては、まったく相乗効果の無い会社です。『ロイター』もこれらの会社のほとんどが損失を出していると言っています。オリンパス自体も、この日本の3社で不正を隠していたと、損失を隠していたと認めているのです。プラスチックのチンできる容器ですとか、医療廃棄物のリサイクル会社、化粧クリーム、まったく関係のない奇妙な会社を買収しているわけです。評価通りの額ではなく、非常に巨額で買収しているわけです。そして東京の検察当局、そして証券取引等監視委員会とも話をしましたが、ただそのリンク、取引があったということで、どこから買ったのか、いくら支払わせたのか、法定監査人はどこだったのか、外部の監査会社はどこだったのか・・・まだまだたくさんの疑問はあります。
質問者: 『ボイス・オブ・アメリカ』のスティーブ・ハーマンです。『FACTA』誌による続報なんですが、反社会的分子の話、ヤクザとの関係があるかもしれないと書いてありました。あなた自身が身の危険を感じたと仰いましたけど、どういう証拠を持って、身の危険を感じたんでしょうか。捜査官はどこを調査すべきだと思いますか?
ウッドフォード: 『FACTA』誌というのは反社会的分子について書いた2誌目です。『ニューヨーク・タイムズ』も先週木曜日にリークされたメモを発表しました。この中には反社会的、組織犯罪についても触れていました。トータルが15億円ではなく60億円だという話も出ていました。本当のことを言いますと、今、自分の話をしましたので、以前より安全だと思っています。クロール(・インターナショナル・インクという法的な情報の監査を行う会社も関与しています。ですから、もうこれ以上私から話せることは何もないのです。これ以上刺激するような利害関係者はいないのです。何が重要かというと、その資金がどこに流れたのかを調査すれば、もっと明確になると思います。
犯罪性があったのかどうか、会社は犯罪分子と関わっていたのかどうか。組織犯罪というのは日本では特別な意味を持っています。決定的な証拠はまったくありません。ただ巨額なお金が流れているのは確かです。そしてまだその流れをきちんと追っていないのです。ですので、絶対的な結論はまだ出ていません。しかし、この疑惑の多い取引、損失を隠すために会社を設立することは違法です。誰がそれを行ったかわかりません。何が関わっていたかわかりません。もし組織犯罪者が関わっていたということになれば、さらにひどい状況ですが、現時点ではその証拠は無いということを申し上げます。
司会: 次の質問はジェイ・カールソンです。証拠についての質問でしょうか?
質問者: 実はそのことではないんです。ヤクザについて、もしくは反社会的勢力についての質問ではありません。実はニューズシェフについて、ちょっと不公平ではないかと思うんですけど、電子レンジの調理器を作ってますけれども、実はこの時の社長というのは不正行為で逮捕されています。実際にオリンパスは買収前のデューデリジェンス(投資やM&Aといった取引に際して行われる、対象の調査活動)という詳細な検討というのはしてるんでしょうか。オリンパスが内部でするんですか? もしくは外部の人間がするんですか? こういう投資こと項、もしくは買収案件の時には、デューデリジェンスをしますか。今日本の会社は、例えば反社会勢力に買収相手が関わっているかどうか、しっかりデューデリジェンスしてるものですけれども。
ウッドフォード: ありがとうございます。(質問者は)非常に犯罪に詳しい人間です。それからカメラもたくさん来てるのを知ってますので、ちょっと詳細を加えてくれました。確かに疑問を持たれるのは当然の会社だったというわけです。何かが本当に間違っていました、この会社の評価というのが不正だったということがわかります。ですので、デューデリジェンス、これは誰の責任なのか、外部の監査会社なのか。もしくは6億ドル、8億ドルの会社を費やすこと、これは6億ドルが初年度に償却されました。
私は会社の規制当局でもなければ、金融庁でもありません。ただKPMGも含め2つの会計会社がこの時に関わっていますので、しっかりと適切な形で、監査事務所に対して質問するべきだと思います。なぜこの20年間も損失が隠されていて、なぜこの3つの取るに足らない、それからジェイクが言ったような、1つのある特徴を持ってる会社をこれだけ過大評価をして買ったのかということは調べるべきだと思います。ジョナサンはこの記事をよく追っています。実はグローバルの会社にデューデリジェンスを依頼したと聞いているそうです。オリンパスがこの構造を見る、投資のやり方を見るような会社がデューデリジェンスをしたということなんですけれども。実際に後から法廷に出しても良いようなフォレンジックな(法廷用の)見直し、確認というのは誰がしたのかという問題もあります。
司会: 現在6名のジャーナリストが発言を希望していますが、さらに質問を希望する方はいらっしゃいますか? 日本のプレスの方でも結構です。すでにたくさんの人が希望しています。
質問者: ドイツのビジネスマガジンのジャーナリストです。今朝の取締役会についのはお話はできないと思いますが、高山さんとの関係、彼の役割はどうなんでしょうか? 菊川さんの代わりに発言しているだけなんでしょうか? また、彼はあなたが(社長として)不適切だから解雇されたという意見なんでしょうか。
ウッドフォード: 高山さんは菊川氏が辞任した時に信憑性を失いました。皆さん、高山さんが記者発表した時にいらっしゃった方、手を挙げていただけますか? (会場を見て)何人かいらっしゃいます。彼は立ち上がってこう言いました。7億ドルの助言料の報酬、「ケイマン諸島を通じて支払った額は、適切な額だった」と断言しました。そして「買収も適切で、価値のある買収だった」と言っています。日本以外でこのようなことを言ったら、キャベツを投げつけられていたでしょう。私がマネージャーとして失格だったから解雇されたと彼は言いましたけれども、私の経歴を見ていただきますとわかっていただけると思います。そしてその2週間前にCEOに任命されたんです。しかし菊川さんや森さんにPWCの報告書を示し、辞任を示したために辞めさせられたというのは明白だと思います。
質問者: カレル・ヴァン・ウォルフレンです。あなたのストーリーには脅されたということ例が含まれています。非合法的な行為があったと思いますが、あなたが解任された時、それを実行した人たちが脅されてそうしていたという感触はありますか?
ウッドフォード: 彼ら自身が恐怖を感じているかどうか考えたことはあります。ストーリーが明らかになった時にそういう疑念もありました。非合法的な、不正なやりとりが明確になって、その結果どうなるかということを恐れていたということはあるかもしれません。捜査当局が関与し始めましたけれども、ヤクザが関与していて、彼らがその影響を恐れていたかどうかというのは私はわかりません。むしろそうではないと思います。総会屋もいませんでした。
質問者: チアキ・トウマ、『日経』から来ています。
ウッドフォード: はい、覚えていますよ。菊川さんはあなたのことを大好きだと言っていました。
質問者: どちら側に付くということはありませんが。
ウッドフォード: 「私は中立的な立場」ということを仰る人はなかなか信じられないですが・・・。
質問者: 株主が望めばCEOとして戻っても良いと仰いましたが、会社をどう再建しようと思っていますか? 20年以上前からオリンパスの企業文化は存在しています。
ウッドフォード: 私はそれを壊したいと思います。何十億も不正な資金を扱っている人たちに問い質してください。メディカルビジネスで1年に10億も損失を出している。リターンが売り上げに対して数パーセントという不採算部門です。アメリカでは25、30%も収益を出しているのに、かなりの資金をくだらない企業に投じているような会社です。それを再建するために、私がそこでCEOだったならば、どの機関が信憑性や正直さを信じるでしょうか? メディカルビジネスで私たちは収益を出しています。そこを強化したいと思いますが、私は(CEOに)戻してくれとすがりついて頼んでいるわけではありません。私はこの会社を綺麗にしたいということで、すでに私の義務はもう果たしたと思っています。より良い人がトップに就いた方が良いと思います。その候補の人物がいて、株主も受け入れるのであれば、私はそれで構わないと思います。高山さんは、会社の信憑性、信頼を取り戻すためには、取締役は将来的には辞任しなければならないということは理解しているようです。株主が私を支持してくれて、私が「イエス」と言えば(オリンパスに)戻ります。
■オリンパスは独立した法人として維持していける
質問者: 会社の企業文化の中で足りなかったのは何だと思いますか。
ウッドフォード: 問題は菊川さんがトップだったことです。その3社を買収し、700億円も報酬を払ったからです。そして、過去の有価証券取引の損失を隠してきた、これが問題です。この取引を見ると、状況がさらに100倍ぐらい悪くなってきたと思います。その日本の3社というのは毎年毎年赤字を出しているような会社で、リーダーシップも問題です。
質問者: ありがとうございました。
ウッドフォード: よろしければ後でしっかりとお話したいと思います。
質問者: 長谷川です。(ウッドフォード氏は)今でも取締役会のメンバーだと思いますが、オリンパスは今後も独立した会社として存続していけると思いますか。もしくはどこかに統合されると思いますか。
ウッドフォード: オリンパスは非常に素晴らしい業務を行っています。キャッシュフローも強力です。ライフサイエンスビジネス、内視鏡、医療機器、ペンカメラもありますけれども、顕微鏡でも40%のシェアを持っていますので、画像のビジネスが赤字を出したとしても、このまったく意味の無い取引を止めれば、会社の買収によるこれだけの損失はありません。
ですので、おそらく支持すると思いますけれども、銀行が支持してくれれば、オリンパスは独立した法人としてこれからも維持していけると思います。それから今は株式についての興味も高まっています。非常に価値のある資産だからです。オリンパスの工場はこれからも製造を続けます。それはオリンパスの商品が望まれているからです。会社の社員にとっても本当にひどいことになりますし、上場廃止は起こらないように祈っています。しっかりとした当局がこの内容を調査するでしょうし、その調査が行われている間も、オリンパスはしっかりと営業を続けていると思います。
質問者: フランスの新聞『エコール』です。そもそも、なぜ菊川氏があなたに社長の職を任せたと思いますか。
ウッドフォード: 非常に面白い例だと思います。ドイツの『フィナンシャル・タイムズ』の同僚が知っていますが、2005年に私がヨーロッパの会社の社長をしている時、子会社の1つが当局のヘルスケア担当の人に賄賂を払いました。その時に子会社の専務、オリンパスヨーロッパホールディングスの取締役を解雇しました。それから2008年3月に、この会社の元ディレクターが100万ユーロを不正に支払っていました。そして今年の3月にハンブルグの検察局が容疑者を起訴しました。この担当者の名前は言いませんけれども、ヨーロッパで社長をしている時に2回も不正行為を告発したという経歴があり、不正は報告するという評価、評判もあったのです。
ですから「なぜ」と思うんですけれども。オリンパスは「日本で負債が多い会社」の7位なんです。負債資本比率が500%ですので、菊川氏が必要だったのはしっかりと会社を経営して、フリーキャッシュフローを出して利益を上げる人間です。そして秘密は過去のものとして葬り去れば、菊川氏も非常に素晴らしいビジョンがあった、つまり外国人のサラリーマンを社長にしたということで、後で賞賛もされるでしょう。私も利益の低かった会社を利益の高い会社に回復させた経験もありますので、私がそれをした後に、森氏がおそらく社長になるという筋書きだったのではないかと思います。もし阿部さんが『FACTA』誌でこの記事を書かなかったら、私は今回のことをまったく知ることはありませんでした。
質問者: 『ウォール・ストリート・ジャーナル』のワカバヤシです。この問題の中核というのは、メールの中でも書いていらっしゃいましたけれども、株主の持つ株の価値が崩壊してしまったということだと思います。株主の要望でもあるかと思いますが、例えばメディカルビジネスをスピンオフさせるとか、不採算部門を無くす、売却するというのはどうですか?
ウッドフォード: 私はどちらかというと「左寄り」ですので、無駄とか不正は受け入れられないのです。ビジネスマンとしてはロマンティックな部分を忘れてはならないんですが、不採算部門は許せません。カメラビジネスに関しては販売管理費をかなり削減してきました。そしてその資金はPenシリーズなどを生産するために使われています。収益は数%ですが、レンズや画像関連には価値があります。レンズは顕微鏡にも使われています。オリンパスがやることとしては、例えばペットフードとか化粧クリームのようないらないものや、不正な支払いを無くすことが重要なんです。多くの企業が間違いを犯しがちなのは、新規のビジネスを始める時に、コアビジネスと関係のないビジネスを始めるということです。顕微鏡のビジネスは非常に大きなビジネスであり収益性も高いので、ポートフォリオをきちんとさせて、オリンパスを再建させないといけないと思います。そのためには再編が必要です。
質問者: フリーランスです。私が思うに、あなたがオリンパスの難しい問題をこのように公言する、そして日経で日本の株価が落ちてしまうことには関係があるようなんですが、日本の財界全体をオリンパスの不正によって下げてしまうというのは公正だと思いますか。それとも日本の中には同じように隠したい不正を持つ企業がたくさんあり、多くの企業が同じような問題を抱えていると思いますか?
ウッドフォード: 日経平均株価が落ちているのを私のせいにしているのかも知れませんが、現在たくさんのことが起きていると思います。ヨーロッパ、アメリカ市場でも、いろいろな動きがあります。日本でも200%の国の赤字があります。ですので、ガバナンスということに関しては共通の問題点があると思います。すべての日経の銘柄がオリンパスのような会社であるとは思いません。例外的で、非常に極端なこと件だと思います。野田首相は「日本の資本主義は他の国の資本主義と違わない」と仰いました。なぜそういうコメントをされたのかはわかりませんけれども、私たちは報酬委員会だとか任命委員会を設けるべきだと思いますし、アメリカモデルと同じように非常勤の取締役を過半数以上導入するべきだと思います。そうすることによって刺激が与えられますし、株主に対してもし責任に過誤があった場合、その責任を果たす必要が出てきます。
日本の株主はあまり発言をしません。日本の制度は非常にユニークなんですけども、例えば株式の持ち合いです。基本的に日本では11社の会社がそれぞれ5%持つことが可能です。不文律としては売らないということ。1ポイントの80%が落ちたとしても、海外であれば取締役を変えろと言われるのですが起きていません。またビジネス上の関係も特異です。株を所有している人とビジネス上での関係があれば、それは背反が起きてしまいますが、ただ単に統治の問題ではなく、日本では非常に生き生きとした活力ある経済にして、国債の赤字を払拭し、景気を活性化しなければなりません。日本市場のアナリストと話すとたくさんの優良な企業、良い製品がある。しかしその経営陣が良くないと。クリエイティブな崩壊、破壊がなければ、日本以外では不採算会社は誰かが買収します。しかし日本ではそれが起きないのです。なぜかというと株式の持ち合いがあるからです。それがなければ、全体的に活性化が進むと思います。ですので、その株式の持ち合いを解消することに何ら問題はなく、恐れるべきことではないと思います。
質問者: 『ファイナンシャル・タイムズ』です。今日はありがとうございます。さて取締役会の会議の話に戻るんですけれども、今日の取締役会はどうでしたか? 行く時と戻ってくる時の気持ちを教えてください。
ウッドフォード: 建物に入っていくのは大変でした。記者の方に取り囲まれてましたので、ガードの人がズボンをつかんで引っ張ってくれたぐらいじゃないと本当に中に入れませんでした。戻るのはちょっと奇妙でした。多くの人が私の知り合いで、私を見て笑ってくれましたし、2人の弁護士と一緒に行きました。ですので、今でも何か私に対して何かしようとしたらそれは難しかった。もしかしたらそうされるかもしれないと思って行ったんですけども、菊川さん、森さん、山田さんはもう退任、辞任しましたのでいませんでした。でもやはり緊張感がみなぎっていました。
高山さん、昨日発表した記事でいまの取締役は将来辞任すると発表していますね。このリストですね。既存の取締役、それから社外取締役、ほとんどがイエスになってますけども、これがこの小さな会社を承認した時に誰が取締役だったのか、それから助言報酬何100億円も払う時に誰がいたのか、それからPWCのレポートを出した時に誰がいたのか、それから私の解任に対して賛成をした時に誰がいたのかというリストを持っていきました。
ですので、そういう意味では将来のことについて同意があったように思えます。私はこの問題に対して、ガバナンスの問題だけしか話をしませんでした。私は、やはり上場廃止するのは間違っていると言いました。優先事項というのは、とにかくしっかりと四半期報告を12月14日までにしっかりと会計事務所のサインももらって出すということ、それで上場廃止を食い止めるということです。そして将来は新しい取締役になると、そしてオリンパスが先に進むことを期待しています。そういう意味では思ったよりも会議はかなり生産的でした。もしかするとニュースという意味ではあまりドラマチックではなかったかもしれませんけども、進歩したと思います。昨日当局との面会をしましたけれども、それ以降、今日の取締役会では少し勇気づけられました。
■「こういろんな質問をされると私はマゾかも知れないと思う」
質問者: HKW『メディアリポート』のワタナベです。今日はありがとうございます。ご意見をおうかがいしたいんですけども、プロとノンプロのオリンパスの社員についてのご意見を聞きたいと思います。このプロの社員というのが、実際に世界に非常に誇れるレベルの医療機器を作っているわけです。そしてそうした社員の人たちはまだ会社を辞めていません。ヘッドハントも中国の会社によってなされていません。そうした本当に優秀な社員についてメッセージはありますか? 株主や企業統治に対してのコメントはありましたけども、オリンパスの優秀な社員に対してのメッセージはありませんか。大変重要な方たちと思いますけども。
ウッドフォード: はい。私は質疑応答という形で答えていまして、今の質問をありがとうございました。オリンパスの強さというのは、研究開発であり、製造であり、技師・エンジニアリングです。例えば内視鏡の工場が(福島県)会津市にあります。本当にすばらしい工場で、今でも手作りで組み立てている。例えば精巧な時計を作るようなかたちで製品を作っています。そこがオリンパスの長所です。人、エンジニアリング、製造がオリンパスの長所になります。ただ弱いのが会社です。企業統治、本社の方、いろいろなフォーラムの人とも話をしましたし、オリンパスの草の根の人たちにも申し上げましたけども、皆さんたちが大事なんですと伝えています。ですから、私はそういう人たちがいるからここに戻ってきているんです。そうでない限り、私はわざわざここにお金を使って日本に来てこのように話はしていません。社員の方が大事だから、私はこういうことをしているわけです。
司会: 時間は過ぎているのですけど・・・2時15分きっかりに終わりたいと思います。
質問者: 『朝日新聞』のソフィーナイです。『FACTA』レポートを読む前のあなたと森さん、菊川さんとの関係をまだ聞いていませんが、その以前に文化的な意見の違いとかはあったんでしょうか? その問題発覚後にいろいろな脅しとか問題があったんですけども、なぜわざわざ戻ろうとしているんでしょうか? あなたはマゾなんですか。
ウッドフォード: マゾかもしれません。こういういろいろな質問を受けると本当に私はマゾかと思います。記者会見があるから日本に戻りたくないという理由になるかも知れません。それは別として、菊川さんは魅力もあるし笑顔もいいなと思いました。メディカルビジネス、サージカルビジネスなどの経歴を見て(私を)選んでくれたんだと思います。そしてヨーロッパでの実績をもとに選んでくれたんだと思いますし、私はそれに忠誠心も感じましたし、良い人物だと思いました。森さんはちょっと内気で物静かで知性もあります。暗い部分があるのは、まったくわかりませんでした。
7月くらいにニューオータニの私の就任パーティにいらっしゃった方もいるかもしれませんが、非常に大々的なパーティで700名が招待されました。非常に素晴らしいパーティでした。ですので、非常に丁寧な扱いを受けたと思っていたんですが、8月2日の彼らが寿司を食べて、私はツナサンドを食べたミーティングの時以降、彼らは非常に保身に走っていると、過去から逃れようとしていると思いました。
質問者: オランダの『ファイナンシャル・デイリー』です。コーポレートジャパンが国際基準を満たせてなく失敗してるんではないかと言われていますが、あなたはオリンパスの上場廃止に反対しています。しかし上場廃止になったほうが、他の日本企業に対して、企業文化を変えていかなければならないという強いメッセージになるんじゃないでしょうか。
ウッドフォード: それは妥当だと思います。上場を維持する、あるいは上場廃止になるということですけれども、もし私たちの報告書が提出できなければ、上場廃止になるでしょうし、そうなるべきだと思います。もし、組織犯罪との関連があった場合、犯罪性が無かったとしても何か関連があるという場合には、上場廃止が適切かもしれません。それ以外はどうでしょうか。
私にとって一番重要なのは、不正があったということ。それに対しては訴追されるでしょう。そして裁判で制裁を受けるでしょう。そうすることのほうが、世界に対してより強いメッセージが送れると思います。このような不正というのは、アメリカであれイギリスであれ、株主に対して大損害です。そしてかなり長い禁固刑に付されるでしょう。このような制裁が科されるということが、より重要だと思います。上場維持か廃止か、これに関しては、まずは捜査が行われて、結果が公開されるべきだと思います。それに基づいて、説明・責任を問われるというようなことが起きると思います。
しかし上場廃止のほうがより簡単だと思います。その損害を被るのは株主です。そして、社員に関しては資金を調達することができません。金融機関も株を売却するでしょう。まったくメリットもなく、苦しみだけが続きます。ですから、当局ができる限り訴追をして、そして制裁を加えるという選択肢のほうがいいと思います。
司会: あと1つ、2つの質問を受け付けます。
ウッドフォード: 今2時15分ですね。
司会: 今までのところは優しい質問でしたけれども・・・。
質問者: 日本の企業の弱さ・・・。
ウッドフォード: 日本の会社ではありません。私はオリンパスの本社側の弱さについて話をしたのです。
質問者: ご自身の見解を知りたいんですけども、日本の企業というのは技術はいい、そして世界で競争力がある。でも例えば会社の経営、企業統治など本社側は弱いというのは日本全体の話でしょうか?
ウッドフォード: 非常に、大変素晴しい質問です。実は、私はできる限り、日本についての記事は読むようにしています。特に経済に対しての記事です。例えば、消費者家電ですとか、そういう意味では日本は韓国から遅れをとっている部分があります。そして企業統治、起業家精神については、実はもう誰も買いたくないような製品を作っているところもあります。ですから、1回始めたことを辞めるのが辛い。
(日本の企業は)非常に社員は教育レベルが高く、技術レベルも高いわけですから、どこで利益が上がるか、どんな物が売れるかということに特化すればいいと思います。一般化するべきではありません。もっと厳しく評価をして、求められているものを作れば、過去と同じような競合性を回復することができるでしょう。例えば、ニューイングランド、レバノン、ポーランド、中国、フィリピン、ドイツ、そうしたところには非常に素晴しい製造部門がありますので、そういうところで選択と集中をすればいいと思います。日本は選択と集中が弱いです。何かを作っても赤字だったら、そこにエネルギーですとかリソースを費やす必要はありません。やはりここが営業の成功に結び付くと思いますので大事です。
質問者: 日本のCEOやリーダーシップについてはどう思いますか。外人のリーダーシップが増えたほうがいいと思いますか?
ウッドフォード: 私の経験の後に、外国人がリーダーシップを取りたいと言って、列をなしていると思いますか。・・・真剣に答えたいと思います。例えば、誰かが私が戻る準備があると言ったとします。私がそれを求めているわけではありません。というのは、森の中で木を揺らしたら猿が落ちてきてしまった。そして、いくつかゴリラも落ちてきてしまったということですので。アメリカ、イギリス、そういうところで、私は調和を求めて会社を経営するわけではありません。実は、私がイギリスで、ヨーロッパの社長をしている時には『サンデー・タイムズ』で、「最も働きたい会社」第1位に2回表彰されました。それからハンブルグでも「オリンパスウィンター&イベ社」という会社があり、ベルリンにサロンがありますけれども、大変良い会社です。会社を経営して、本当に働きやすい職場にすることはできます。しかし、そこには挑戦する面もあります。ですので日本が本当に変わりたい場合、そして日本が本当に挑戦する人を必要としているんだったら、「なんでこうしているんですか?」「それは辞めたほうがいいです」という人間を受け入れる準備ができているのだったら、例えば今日の会議もそうですけれども、取締役会でも会議でも、始まる前に全てが根回しで決まっているわけです。会長に会ったこともない、もしくは私と会ったこともないのに、会議が実際に行われる前にすべてが変わることがわかっているというのは、変わっていると思います。ただ、ビジネスコンサルタントになったらどうでしょうか。ビジネスコンサルタントは、日本でかなりお金が儲かると思いますよ。
司会: では、最後の質問を受けたいと思います。
質問者: ドイツの記者です。実はCEOになるまで日本語を勉強する意志は無かったということを聞いたんですけれども、取締役会で実際に日本語を話さなかったことで騙される可能性もあると思うんですけれども、後から考えたら、日本語を話す人がいたほうがいいと思いますか?
ウッドフォード: 日本語を話すことができたら非常に素晴しいとは思います。でもただの事実ですが、日本語を話さなくても仕事をしている人がいます。2人のジョナサン・ソーブル、2人のマイケル・ウッドフォードがいて、1人が英語1人が日本語を話して、そして日本語の私を選んでくれるんだったらいいと思います。でも2人はいません。ただ、日本語を話せたとしても言葉の問題だけで同じような指摘をして、同じような損失隠しを発見したと思います。イギリスというのは、実は外国語が世界で最も下手な国民です。これは残念で、本当に国として恥ずかしいことだと思います。私はそれを象徴しています。私の妻はスペイン人ですので、私の家族はイギリス人だけではないんですけども、やはりヨーロッパの会社では、例えばドイツ人、フランス人、イタリア人、アメリカ人、中国人の人たちが社長になることがあります。
韓国の人もブラジルの人もです。ですから、日本が行わなければいけないのは、世界を見渡して、最も優れた人材を探して最も優れた人間を任命するべきです。言語は1つの要素で、第一の要素ではありません。例えば(日産自動車の)カルロス・ゴーン氏、それから(日本板硝子の)ネイラー氏、皆さん日本語を話せたとは思えません。ですから、学ぶということは大事ですけども、それが最も大事なことではないと思います。ただ、もちろん日本語を話したらもっと良かったとは思います。しかしながら、日本語を話すからといって、世界でトップのビジネスマンになっている人が多いかというとそうでもありません。
司会: それでは最後になりました。皆様、ゲストが帰るまでは着席ください。では日本外国特派員協会に対して、名誉会員として1年間の会員証を(マイケル・ウッドフォード氏に)ご提供したしますので、また日本に戻ってきてください。ありがとうございます。
会場: (拍手が起こる)。
ウッドフォード: ありがとうございます。
(了)
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(協力・書き起こし.com)
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