「3DS『クレヨンしんちゃん』はGREEのカードがつくから売りません」 北海道のゲームショップ1983にその真相を聞いてみました

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「3DS『クレヨンしんちゃん』はGREEのカードがつくから売りません」 北海道のゲームショップ1983にその真相を聞いてみました

「反マジコン(ゲームをコピーして遊べるようにする機器)」「反フライング販売(発売日前の販売)」をとなえるなど、ゲーム小売業界で“まっとうな”主張をして注目を集めてきた、北海道のゲームショップ1983。先日、バンダイナムコゲームスがニンテンドー3DS向けに発売するソフト『クレヨンしんちゃん 宇宙 DE アチョー 友情のおバカラテ!!』について、同店での取り扱いを停止するとブログで発表しました。理由は『GREE』で提供されている『クレヨンしんちゃん』のソーシャルゲームで使えるシリアルコードを記載したカードが特典で付属するため。なぜ今回、“反ソーシャルゲーム”ともとれる主張を打ち出したのでしょうか。さくらインターネットの石狩データセンター取材で北海道を訪れた筆者は、お店を訪ねて“中の人”いまひ氏にその真相を聞いてきました。

年季の入った看板が目印

ゲームショップ1983は、札幌から地下鉄南北線で4駅の北34条に位置するゲームショップ。地図を頼りに駅からお店を目指すと、年季の入った看板が目に入りました。

貸本屋のような雰囲気の店内 ファミコンカセットも大量にあります

もともとは居酒屋だった物件で営業しているという同店ですが、どこか昭和のにおいが感じられる店内は、新旧さまざまなゲームソフトが棚にギッシリと並べられ、昔商店街にあった貸本屋のような雰囲気。カウンターの中にいた店主いまひ氏に取材に対応していただきました。

『クレヨンしんちゃん』販売停止の真相

ガジェ通:なぜ『クレヨンしんちゃん 宇宙 DE アチョー 友情のおバカラテ!!』の取り扱いをやめたのでしょうか?

いまひ:パッケージゲームに『GREE』や『Mobage』のカードが特典としてつくというのは『龍が如く』ベスト版でもありましたし、これは発表になっていると思うのですが、バンダイナムコゲームスさんの来年1月発売の『機動戦士ガンダム 木馬の軌跡』(PSP)に『Mobage』のカードが付いてくるそうです。

こういう特典はこれから増えていくとは思います。『機動戦士ガンダム』だとか『龍が如く』というのは大人向けだと思うんですが、『クレヨンしんちゃん』の場合はもっと年齢層が幅広いタイトルですから、分別のある大人向けのタイトルとは別のものになると思うんですよね。

『クレヨンしんちゃん』のゲームは事前にホームページの方をチェックしたんですが、『GREE』版のゲームがアイテム課金であることが分かりにくかったり、たどり方によっては、そういう情報を得ないで『GREE』のサイトにたどりつくという形だったんですよね。

それを疑問に思ったのでバンナムさんに問い合わせの電話をしたんですよ。それで担当者さんとお話する機会があったんですけど、担当者さんのお話では「『GREE』に誘導しようというのではなくて、あくまで既に『GREE』の中にいる人で、『クレヨンしんちゃん』のソフトを買った方へのサービスの意味合いがある」という話でした。

それからいろいろなニュースサイトで「『クレヨンしんちゃん』に『GREE』のカードがつくという内容で報じられたニュースを見てみたのですが、「この機会に3DSの『クレヨンしんちゃん』と『GREE』のカードゲームを遊んでみて欲しい」という内容だったんですよ。既に『GREE』にいる人向けというのではなく、誘導の意味合いが多々あるのかなと。ソーシャルゲームへの誘導ということであれば、幅広い年代をターゲットにするコンシューマーゲームとしてはどうなんだろう、と思うんですよね。

ゲーム業界人からも応援の声

ガジェ通:それで取り扱いを中止したと。この件については賛否両論があると思うんですが、どんな反応がありましたか?

いまひ:「このオッサンかっこいい」「応援する」というコメントがあってビックリしましたね。反論はいくつかブログでお見かけしたんですけど、ゲームを作っている方からはありましたね。あとこれは、“とあるゲーム業界の方”としか言えないんですが、電話がかかってきまして「よくぞ言ってくれた」と。「僕の立場から応援はできないけど」と言われましたが。そういうのもありましたね。

ガジェ通:お店のお客さんからも何か反応はありましたか。

いまひ:そうですね。「見ました」「1983がニュースになっていてびっくりした」と言われました。「僕は横浜ファンなのでスカっとしました」(それはMobage)とか。『クレヨンしんちゃん』を買おうとしていた方もいらっしゃるんですが、「残念だけどしょうがないよね」と言われました。

主張するゲームショップ

ガジェ通:こちらのお店のお客さんはどんな方がいらっしゃるんでしょう。

いまひ:ゲーム好き、という20代から40代のコアゲーマー向けの作りをしているとは思うんですが……ゲームマニアの方ですね。

ガジェ通:『マジコン』を買いに来たお客さんを説教して帰したとか、ゲームショップ1983はこれまでもいろいろ主張をしてきていますよね。発売日前に販売する“フライング販売”をやらないと宣言したりとか。

いまひ:“フライング販売”については、公然の秘密になっている部分はありますね。「うちはやらない」と言うのが目立ってしまうぐらい、やっているところもあるので。小売の業界ではうちのように言うことには反発があるみたいですね。

ガジェ通:嫌がらせとかないですか?

いまひ:ありますね。“フライング販売”をすることの正当性を主張されたりとか。「うちは努力して“フライング”販売してるんだ」というのがあって。「えー、それって努力してるのか」と思いましたね(笑)。「うちは努力して発売日前に入荷したものを売ってるんだ」と。ちょっとゲンナリしました。

ガジェ通:『クレヨンしんちゃん』の件は、これまでと比べて反響は大きかったですか?

いまひ:ブログのアクセスは3万ぐらい増えました。『Twitter』なんかでもたくさんコメントをいただきましたし。お店はいつもどおりで特に繁盛したとかはないんですが。

1983が見るソーシャルゲームとゲーム業界

ガジェ通:いまひさん個人としてはソーシャルゲームをどうご覧になってますか。

いまひ:僕は『GREE』も『Mobage』も両方登録しているんですよ。コンシューマーゲームの有名タイトルのソーシャルゲームが出るということで遊んでみたんですけど、「これがゲームなんだろうか?」というところがありましたね。あとは「無料」というところが、最近はおとなしくなってますけど、「ゲーム無料」というテレビCMがよく流れていましたよね。これはゲーム自体の価値を下げるものじゃないかなと思います。完全に無料ならいいんですが、収益が上がるビジネスモデルがあるのを前提としているなら、それは無料じゃないよねと。ほかにもソーシャルゲームをいくつかやってみたり本を読んだりしてるんですが、果たしてこれはゲームという形に入れてしまって大丈夫なのかなと思いますね。

ガジェ通:いまひさんからご覧になって、今のゲーム業界ってどうですか?

いまひ:縮小に向かっているというのはあるかと思います。DSやWiiはバカ売れしましたが、その時期に入ってきたライトユーザーさんがまた別なスマートフォンですとかソーシャルゲームに流れて行っている、興味の矛先が変わっているのを感じますね。90年代の昔からゲームをやってきている人は減っているとは思わないんですが、「ゲームもいいよね」という方は別のものに興味を持たれているのかなと思います。

ガジェ通:今後Wii UですとかPS VITAですとか次世代機が出てきますが、どうでしょうか。

いまひ:一般のライトユーザーが興味を持つかというと、以前より関心は薄いのかなと感じますね。でもDSが『脳トレ』ブームですごく売れたわけですけれども、DS発売時にあれを予見していた人はいないと思うんですよ。またそういうライトユーザーが興味を持つものが出ないとは思わないので、そこに期待するところではありますね。

ガジェ通:ことし3DSはどうでしたか?

いまひ:浸透するのに時間がかかるハードだと思いますね。「目が悪くなるから」みたいな感じで、先入観を持たれると、それを崩すのに時間がかかると思いますが、ゲーム好きな人は自分の欲しいゲームが出れば先入観なんて関係なくなると思うので、それまでの辛抱というところですかねえ。

ガジェ通:最後に、新作のオススメゲームがあったら教えていただきたいんですが。

いまひ:新作ですか……10月、11月で一番売れたのがPS2の『Rule of Rose』なんですよ。2006年のゲームが一番売れているという。新作もちゃんと売ってるんですけど、『Rule of Rose』が売れてしまいまして(笑)。定価以上で売っているところが多々あるんですけど、1983では定価未満で売っているのがネットで話題になって、ゲーム内容も評価が高かったからですかね。

出たばかりのものではPSPの『初音ミク – Project DIVA- extend』(セガ)がどれぐらい出るのか。『初音ミク』関連は力を入れていますね。

ガジェ通:ありがとうございました。

放送用カメラ

1枚目の写真に写っているのは、お店の中でゲームを試遊できるコーナーで、ここから毎週水・土に『USTREAM』で生放送をしています。興味を持った方はお店のブログと共にチェックしてみては?

ゲームショップ1983
http://sp-game.cocolog-nifty.com/

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shnsk

宮原俊介(エグゼクティブマネージャー) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。2010年3月~2019年11月まで2代目編集長、2019年12月~2024年3月に編集主幹を務め現職。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます

ウェブサイト: http://mogera.jp/

TwitterID: shnskm

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