拳銃も皆で持てば怖くない!? アメリカの銃規制の実情

1992年のハロウィーン、日本人高校生でアメリカはルイジアナ州に留学していた服部剛丈(はっとり よしひろ)君(当時16歳)が、訪問先を間違え、侵入者と見なされた家人によって射殺される、という痛ましい事件から、そろそろ20年が経とうとしています。

服部君を射殺したロドニー・ピアーズ氏は、過失致死も課されず、無罪となりました。服部君のご両親の熱心な署名活動の甲斐もあってか、銃規制を盛り込んだ法案(ブレディ法)が翌年可決しましたが、銃規制に消極的な共和党のブッシュ政権下の2004年、期限付き律法だったこの法案は失効してしまいした。

記憶に新しいところでは、1999年のコロンバイン高校の乱射事件があります。2人の高校生が13人の生徒と教員を射殺し自らも命を絶った事件です。また、2007年のヴァージニア工科大学の乱射事件ではそれを上回る32人が射殺され、犯人と思われる青年が自殺、という結果になりました。

ところが、今月17日、そのヴァージニア工科大学で、何と銃規制派銃規制反対派が同時にラリーを行ったそうです。

2007年の事件の遺族などを含む規制派は、「大学キャンパスから銃をなくそう!」と訴え、銃規制反対派は、「銃を持てない規制は自己防衛の自由を奪うものだ」と反論。
そう、自由の大好きなアメリカでは、銃を持てないことが、自由の剥奪と考える傾向にあるのです。

規制反対派のラリーに出席したヴァージニア州在住のエド・ルーヴィン氏は、もし学生が銃を持つことを許されていたら「32人もの死者を出す代わりに、勇気のある奴が犯人を撃っていただろう(”Instead of there being 32 dead, someone would have stepped up and shot him,”)」と言います。

うーん。銃撃戦で更なる死者を出していたかもしれない、というシナリオはないようです。大体、学生が銃を持ち歩くキャンパスって……。

こうした規制反対派は、政治的にかなりの影響力を持つ『National Rifle Association of America(NRA;全米ライフル協会)』と、NRAが支援する共和党により、資金的にも援助を受けていることは知られています。

とは言え政党いかんに関わらず、アメリカの聖句とも言える“自由”とガッツリ結びついた銃の問題は、なかなか規制されそうになく、逆にシカゴ市のように市の銃規制条例が、憲法違反(自己防衛の自由に抵触する)として覆される、という事態にまでなっています。

こうした一連の「拳銃も皆で持てば怖くない」といった風潮、私はすっごく怖いんですけど……。

※写真はシカゴにあるNational Veterans Art Museum(国立退役軍人美術館)。

※この記事はガジェ通ウェブライターの「chicagonoyuki」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
アメリカはシカゴ在住です。専門は比較宗教倫理。シカゴの情報を中心にお届けします。

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