増える民間学童 そのメリットと問題点

増える民間学童 そのメリットと問題点

入所児童数が増え続ける学童保育

高度経済成長期に急増した「カギっ子」に、放課後や学校休暇期間中も安心して過ごせる場を提供しようと、保護者らの自主的な取り組みとして広まった「学童保育」ですが、1998年の児童福祉法改正で厚生労働省の事業として制度化されました。
現在では多くが保育園や保護者等がつくったNPO法人へ市町村から運営委託され、最近は民間企業による運営が1,200ヶ所を超えるなど、担い手が多様化しています。

全国学童保育連絡協議会による2016年5月の調査では、全国に27,638ヶ所あり、入所児童数は107万6571人です。
小学校より数が多く、全児童のほぼ6人に一人が学童保育へ通っている計算になります。
児童福祉法の改定で対象がこれまでの低学年から6年生にまで正式に拡大されたことも、全学年で入所児童数が増えている原因です。

放課後子ども教室

厚労省管轄の学童保育とは別に、文部科学省の事業として、地域住民の協力も得ながら主に通学する学校内で工作やスポーツ、伝統芸能など各種プログラムを提供するのが「放課後子ども教室」です。
多くは自治体による直接運営ですが、NPO法人や民間企業への運営委託も増えています。
安全な遊び場の減少や、子どもの預け先を求める家庭の増加を背景に年々増え続け、2015年度には14,000教室を超えました。
川崎市のように学童保育を廃止して放課後子ども教室を毎日開催する自治体もあり、「全児童対策事業」とも呼ばれます。

民間学童とは?

第3の選択肢が、最近話題の民間企業が自治体の助成を受けずに運営する「民間学童」です。
都市部では学習塾やスポーツクラブ、流通系、電鉄系企業の新規参入が相次いでいます。
親会社の専門性を生かして、宿題や学習指導のほか水泳や英会話、プログラミング、ピアノなど、多彩なコースを提供することが特徴です。

朝早くから夜遅くまでの延長保育など、公設学童ではできない柔軟なスケジュール対応や、夕食の提供、送迎、入浴等、保護者に代わって親身に世話をしてくれます。
ただし、その分料金も割高で、公設学童の十倍前後の1ヶ月数万円~10万円かかるところもあります。
それでも「小1の壁」に悩む共働き保護者のニーズは高く、数年先まで予約が入っている人気施設もあるそうです。

公設学童と民間学童のメリット・デメリット

このように、公設学童は比較的料金が安く、児童が通う学校内の施設を活用する場合が多いことから、終業後移動する手間が不要です。
ただし、学習指導はないうえに退所時間が夕方6時または7時と比較的早く、狭い場所に大人数で過ごすため指導員の目が届きにくいケースも多くあります。

一方民間学童では、食事から送迎まで至れり尽くせりのサービスが提供され、学習指導も充実しているうえ、預け入れ・引き取りの時間も早朝や夜遅くまで柔軟に対応するなど、保護者の利便性に応えた体制になっています。
ただしその分料金も割高で、公設の十倍以上の費用が必要なところもあります。

課題と提言

共働き世帯の増加に伴い、学童保育に対する需要も年々拡大し、昨年は「学童待機児童」が把握できただけでも全国で15,000人以上いました。
このため、2007年に厚労省と文科省の双方が補助する放課後子どもプラン推進事業が始まり、学童保育と放課後子ども教室を一体的に整備する体制ができました。
2014年に政府が打ち出した「放課後子ども総合プラン」では、2019年度までに30万人分の新たな受け皿を整備することが目標とされ、そのうち1万ヶ所以上をこうした一体型で運営する、としています。

しかしながら、今の補助金の水準では経営的に余裕がないところが多く、子どもの数が増えている地域では学校の空き教室数も限られていることから、公設学童が十分なスペースを確保するのが難しくなってきています。
指導員に支払う給与水準も低く、慢性的な人手不足も課題です。

経済格差がそのまま教育格差に反映されないよう、民間学童へ通わせる保護者への経済支援策を充実させることを検討すべきでしょう。
同時に、公設の学童でも、ICTを上手く活用すれば学習指導をサービスメニューに追加することは比較的容易です。
老若男女かかわらず地域住民がボランティアとして積極的に学童の活動に参加する仕組みにすれば、学童を地域住民が世代を超えて交流できるコミュニティセンターとして機能させることもできるかもしれません。

(小松 健司/21世紀教育応援団)

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