小沢一郎「消費税増税は国民に対する背信行為」 小沢×田原対談全文(前)

小沢一郎元民主党代表

 小沢一郎元民主党代表は2011年11月19日、ニコニコ生放送に出演し、ジャーナリストの田原総一朗氏と対談した。この番組「小沢一郎×田原総一朗 徹底生討論 『日本をどうする!』in ニコファーレ」で小沢氏は、野田佳彦総理大臣が推し進めようとしている消費税の増税について、「お金がないから消費税増税というのは国民に対しての背信行為」であるとし、反対姿勢を明確にした。

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http://live.nicovideo.jp/watch/lv70481074?po=news&ref=news#00:00:22

■野田総理のTPP対応を批判 国内外で「使い分けをしている」

ジャーナリストの田原総一朗氏

角谷浩一(以下、角谷): こんばんは、コネクターの角谷浩一です。田原総一朗さんを迎えての「小沢一郎×田原総一朗 徹底生討論 『日本をどうする!』in ニコファーレ」。今日はニコファーレに(民主党元代表の)小沢一郎さんを呼んでいます。豪腕で知られる政界の実力者と日本を代表するジャーナリストのガチ対談ということになります。遠慮もなければまったく休みもなく、徹底的に今の日本を問い続けてもらいます。強制起訴から初公判を迎えた小沢さんの裁判、これは一体どうなっていくのか。また小沢さんはどう思っているのか。支持率が低下している民主党の現在と未来、これをどういう風に考えているのか。さらに復興を目指す日本の進むべき正しい道とは一体何なのか。これを今日は2人に徹底的に討論してもらいます。僕は進行上一緒に座りますけれども、僕が静かにしていても空気だとかという風に言わないようにしていただければと思います。他では見られないトークセッションです。両雄が相まみえるのは、実に4年4カ月振りだそうでございます。(テレビ朝日の報道・政治討論番組)『サンデープロジェクト』だったと思いますけれども、4年4ヶ月振りに2人はここでガチ対談ということになります。では、登場していただくことにしましょう。まずは、田原総一朗さんです。

会場: (拍手の中、田原総一朗氏が登場)。

角谷: どうぞ今日はよろしくお願いします。田原総一朗さんです。ではお呼びしましょう。民主党衆議院議員、小沢一郎さんです。

会場: (拍手の中、小沢一郎氏が登場)。

角谷: どうぞよろしくお願いします。まずはこちらを向いていただきます。この3人でこれから討論を行いますけども、今椅子を用意しますからその間に・・・(スタッフに確認して)こっち側向くの? こっち側だって。すみません、こちらを。コロシアム方式なものですから、どこが正面か良くわかりませんけれども、これで3人で進めていきたいと思います。さて、ここはニコニコ動画の「ニコファーレ」という、いろいろなことができる多目的なステージなんですけど、小沢さんどうですか。

小沢一郎(以下、小沢): そうですね、初めてですけど。

角谷: 書き込みがこうやって流れるんです。(会場四方のモニターに視聴者からのコメントの書き込みが流れる)。

小沢: はい、はい。

角谷: インターネットを観ている人は、この文字が画面上でもっとグルグル回っているのが見えるんです。

小沢: それは素晴らしいですね。

角谷: ですから、討論会の形も変わりますし、今日は政治学などを勉強している学生さんたちにたくさん来ていただいています。皆さんからの声も後でいろいろな形で使おうと思います。LEDモニターで大変細かく。田原さんはもう2回目ですが、どうですか?

田原総一朗(以下、田原): だけど僕は目が悪いせいもあって、年寄りだから良く読めないの。

角谷: 読めない。では、それは僕が(コメントを)拾いますから、ひとつよろしくお願いします。では、椅子を用意しますから着席していただきます。椅子が上がってくるんだよね。

 こういう風になります。こんなに膝を付け合せるような形でやりますけれども、(スタッフに確認しながら)マイクは3人ともこれでいいの? ハンドマイクでいくの? ハンドマイクでいく。はい、わかりました。ではさっそくいきたいと思います。こんな風にみんなに取り囲まれてやることになりますけれど、どうぞリラックスして。

小沢・田原: はい。

角谷: 休みなく1時間くらいやろうと思っていますから、どうかひとつよろしくお願いしたいと思います。ただ、とにかく聞きたいこと、やらなければいけないことがたくさんあるものですから。それをどういう風にするかなんですけれども、まずは、お2人は2007年7月8日の『サンデープロジェクト』以来の対談と。7月8日の4年振りということになりますと、小沢さんは当時は民主党の・・・。

小沢: 何でしたかね。

角谷: 代表ですかね。

小沢: 代表でしょうかね。

角谷: 2007年ですから、そうですかね。

田原: 代表前かも知れませんね。

角谷: それ以来ということで、久しぶりになりますね。そんなことを言っているよりも、どんどんいきましょうかね。

田原: 僕は、今日非常に緊張しています。

角谷: 緊張している。

田原: 僕にとって、日本の政界で一番怖い人は小沢さんです。あとは大したのがいない。

角谷: 大したのがいない。

田原: ということは、日本の政治家で最も政治力があるのは小沢さんです。

角谷: なるほど。

田原: 怖いですよ。

角谷: 怖い。

田原: うん。顔でにこにこ笑っても、何考えてるかと・・・。

角谷: わかんない。

田原: そこが異様に・・・悪いけどね、怖い。緊張してます。

角谷: なるほど。久しぶりですけれども。今、日本はいろんな問題抱えてますからね。

田原: いっぱいある。

角谷: 野田(佳彦総理大臣)さんに聞くより小沢さんに聞きたいことが、まず田原さんはいっぱいある?

田原: いっぱいある、いっぱいある。そんなの野田さんに聞いたって、(自由民主党総裁の)谷垣(禎一)さんに聞いたって答えが出るはずがない。全部小沢さんに聞く。

角谷: ということで、小沢さんと田原さんの徹底討論。今日はテーマをいくつか用意しました。まずはこちらをご覧下さい。

会場: (討論テーマが表示される)。

角谷: 討論テーマをこちらで考えてみました。まずは「小沢裁判とは何なのか」ということ。それから「民主党はこれからどうなっていくのか、どうするのか」。そして「日本をどう建て直すか」と。これは大きなテーマが、続きますけどね。

田原: 民主党はどうするって、これは小沢さん次第ですよ。いや、それは余計だったな。ただ順番がこうなってますけど、私はまず小沢さんに今もう大騒ぎになっているTPP(環太平洋連携協定)、新聞でもテレビでも国会でも、むちゃくちゃになってるでしょう。あれからまずお聞きしたいと思ってます。

角谷: ではその前にちょっとこちらの事務連絡をさせていただきます。今日は時間の許す限り、お2人に徹底的に討論してもらいますけれども、ぜひ番組をご覧の皆さんも、ご意見をコメントやメール、そしてツイッターで、聞かせていただきたいと思います。メールはご覧のページの投稿ツイッターフォームから送ることができます。ツイッターのハッシュタグは「#nicofarre」という風になってます。小沢さん田原さんへの質問でも構いません。そして、会場では日本の未来を担う現役の大学生たちが、2人の討論を見守ることになっています。時間に余裕があるようでしたら、質問の場を設けるということも考えています。では、「小沢一郎×田原総一朗 徹底生討論 『日本をどうする!』in ニコファーレ」、スタートとなります。

田原: よろしくお願いします。

小沢: はい、よろしくお願いします。

田原: この間13日に野田総理がハワイで、いわゆるTPPで参加すると言ったのか、あるいは各国の協議に参加か・・・極めて曖昧なんですね。だけど新聞は一面トップでドーンと「交渉参加」とうたった。日本が参加することがきっかけになったように、カナダもメキシコもフィリピンも、もちろんベトナムやマレーシアも参加するという方向へ行き、中国まで慌てに慌てたと。私は野田さんはもっと自信を持ってりゃいいと思うんだけど、帰ってきて国会で何を言ってんだかさっぱりわかんない。参加するんだかしないんだか曖昧だし、アメリカ側、つまりオバマさん側が言ったことを「違う」と言いながらアメリカに訂正も要求してない、訂正もしてない。何でこんなに曖昧で自信がないんだろうと。ここをちょっと小沢さんにお聞きしたい。

小沢: 今度のことで、野田さんがどうこうって個人的なことを言うわけじゃないんですが、今までと同じようないわゆる「使い分け」をしてるんですね。

田原: 使い分け?

小沢: 使い分け。官僚、特に外務官僚のね。要するにアメリカへしゃべることと国内で言うことを、ちょっと違ってしゃべってるわけですね。

田原: そうなんだ。あの人(=野田総理)元財務大臣だし・・・そうすると財務官僚に言われたままに言ってるんだ。

小沢: 外務(省)のほうでしょうね、担当するのはね。だけどもこういうやり方はずっと以前からなんですよ。

■TPP交渉参加議論「アメリカにはアメリカの思惑がある」

小沢元代表と田原氏の対談は約4年ぶりだという

田原: 日本は、あるいは野田さんは・・・。

小沢: 僕がアメリカとの交渉に行った時も、この使い分けにアメリカはものすごく怒ってるわけです。目の前では皆いいようなことを言って、国内向けではいろいろ問題があるからといって、また違う言い方をするという。このやり方はアメリカからも信用をなくすし、国内的にもいま田原さん仰ったように「一体どっちなんだ」ということで国民から信用を失うし、私は本当に今までと同じようでよろしくないなと思ってます。野田さんがやるというなら、もう「やる」とはっきり言っちゃえばいいんですよね。信念として。

田原: 今までアメリカと日本を使い分けてきたのは、自民党ですよね。ずっと自民党政権。野田さんは民主党(政権)になっても自民党と同じことをやってるんですか。

小沢: だから役所なんですね。

田原: 役所がね。

小沢: 役所なんです。基本的に事なかれ(主義)ですから。そしてアメリカの言うことは聞く以外しょうがないという観念でおりますから、アメリカとの話の時にはアメリカにいいようにしゃべる、しかし日本でそのまま言うとどうも具合悪いなと思う時は変えてしゃべると。僕はこれが一番良くないと思いますね。

田原: 実は、僕はそこを野田さんのわりと近い人に聞いたの。何で曖昧なんだと。さっき小沢さんが言ったように、使い分けてるんじゃないかと。何で使い分けるんだと聞いたら、やっぱり日本では使い分けないと具合悪い、怖い人がいるって。誰と言ったら小沢さんだって。

小沢: いえいえ、そんなことないです(笑)。

田原: 要するに、もっと小沢さんの前に、日本では例えば前の農水大臣の山田(正彦)さんとか、それから今の鹿野(道彦農林水産大臣)さんたちが、特に山田さんが中心になってTPP反対運動、民主党でも100何人も運動してますね。だから山田さんや鹿野さんたち、反対の人たちを刺激するのが怖い。だから向こうではアメリカにはちゃんと言っても・・・ちゃんとかどうかわかんないけど。日本では使い分けてんだと言うんですよ。そうですか?

小沢: そうだと思います。常に。

田原: 山田さんたちが怖いんですか?

小沢: いや、怖いというか。山田さんとか何とかという個人個人の政治家というよりも、その背景のいろんな利害関係の団体やらいろんなものがありますから。

田原: 農協とかね。

小沢: 農協であれ何であれですね。

田原: 医師会とかね。

小沢: そういうものに対して、反発されるのはちょっと怖いから、どっちつかずの話ということになっちゃうんですね。これは非常に良くないと思います。

田原: ところが、その良くないのはね、やっぱり本当に怖いのは山田さんや鹿野さんじゃなくて、小沢さんだっていうんですよ。

小沢: いや、はは。

田原: 小沢さんはTPPに賛成ですか、反対ですか。

小沢: TPPは表の顔と裏の顔と二面持ってるんですよ。

田原: そこ来た。うん。

小沢: 自由取引、自由貿易、これは誰も反対する人はいないし、日本はそれで利益を得てるんですからいいことなんです。ただ、このTPPというのを強く主張してきたのはアメリカでしょう? アメリカにはアメリカの思惑があるんですよ。

田原: ほう。

小沢: ですから、アメリカときちんと話さえすれば、これは解決する問題なんですよ。

田原: うん。

小沢: そこをきちんと言えないと、おたおたあたふたという話になっちゃうんで。そういう意味ではアメリカでも、農業問題でも、アメリカはアメリカで国内でもいろんなことを持ってるんですよ。

田原: 持ってますよ。

小沢: それからアメリカの自動車業界が反対したとかって伝えられてるでしょう? だからアメリカでもいろいろ議論があるんですよ。

田原: だって、もしTPPが決まって関税障壁がなくなったら、日本の自動車は関税なしでドーンと行きますからね。向こうの業者は怖いですよね。

小沢: あらゆるものがね。ですから、本当に完全にフリーにしちゃってどっちが得かということはわかんないわけです。アメリカも自分に都合の悪いところはフリーにしたくないし。そういうところはそれぞれの国が国益と国民を抱えてるんですから、事情はいろいろなんです。だから話し合いができるんですよ。

田原: ということは、使い分けていいんだということですか?

小沢: いえ、使い分けてじゃなくて・・・。

田原: 野田さんがアメリカに言うことと日本の国内に言う時は使い分けるわけですね。

小沢: いや、それはいけないと言ってるんです。

田原: どうすりゃいい?

小沢: それはきちんと正直に言えばいいですよ。アメリカと正直に議論すりゃいいんです。

田原: そう。何でできない?

小沢: だからそこがやっぱり・・・1つは官僚依存の体質がずっと続いてきてますしね。官僚は事なかれ(主義)ですし。アメリカの言う通りにしてたほうがいいという意識が強いですから。

田原: アメリカに対してはアメリカの言う通りにすればいいと。

小沢: ええ。

田原: それで日本で都合が悪ければ、言い換えればいいと。

小沢: え?

田原: いや、別のことを言えばいいと。

小沢: そうそうそうそう。

田原: 使い分ければいいと。

小沢: 日本の国内のいろいろな議論に対しては、ほどほどにうまく使い分けてしゃべればいい。

田原: ということは、官僚というのは日本の国民を馬鹿にしてるわけですね。

小沢: いや。馬鹿にしてると・・・。

田原: 国民なんて馬鹿だから、いい加減に使い分けても・・・。

小沢: だけど、それは官僚を責められないんですよ。

田原: ほう。

小沢: なぜかって言うと官僚は所詮スタッフですからね。決定する責任を持つ人じゃないんですよ。

田原: それは政治家が決定。

小沢: 政治家なんですよ。だから政治家が責任を持つということがはっきりすれば、官僚だってちゃんとしますよ。

田原: 野田さんは代表選挙に出たってことは、責任を持つ覚悟があるんじゃないですか。

小沢: ですけども往々にしてやっぱり、野田さんだけじゃないですけれども、役所に頼るという面が多くなっちゃうでしょう。それが、いろいろ今言われてるところなんですけどね。

■田原「小沢さんをはずして予算を組むなんてメチャクチャ」

「民主党で一番の政策通が小沢さんじゃないですか」

田原: もう1つあります。実は、野田さんが本当に怖がっているのは、山田さんや鹿野さんだけではないと。実は野田さんは、例えば2010年代の中頃、大体(20)15年ぐらいには消費税を10%にする。あるいは東日本大震災の復旧復興のために、10.5兆、法人税と所得税を増税する。これを今年いっぱいには多分やろうとしている。これには小沢さんが反対で、それが怖いから、何とか小沢さんの気に沿わないことを言わないようにという風にやってるんだと。こういう具合に新聞記者で野田さんなんかに食い込んでる連中が言ってるんですから。

小沢: だけど野田さんは外国に行ってもどこに行っても、消費税(の増税を)やるって言ってるでしょ。

田原: 小沢さんは反対でしょ?

小沢: 僕は今やるということは反対です。

田原: そこそこ。だから、小沢さんの顔色うかがって、いい加減にごまかしごまかししやったら、小沢さんも消費税増税を呑んでくれるんじゃないかと(野田総理は)思っている。

小沢: 消費税については我々は選挙の時に何て言ったかというと、行政、財政、この抜本的改革をして無駄を省いて、それを我々の新しい政策の財源にしますと。そして4年間は消費税増税はしませんということを国民の皆さんに言って来た。

田原: 確かに当時の首相の鳩山(由紀夫)さんはそう言いました。

小沢: そして、今まだ行財政の抜本的改革というのはほとんどできていないわけですよ。それをやらないでいて、お金がないから消費税(増税)というのは国民に対しての背信行為だと。だから僕は「賛成できない」と。

田原: 確かに、鳩山さんはあの政権を取る前からマニフェストを発表しました。そのマニフェストには仰ったように4年間は増税しないと。さらに子ども手当が月に26,000円、段階的に高速道路無料化、あるいは公立の高校の無償化、さらには農業に対する個別補償の問題ということを約束しました。ただし、その時に鳩山さんは、9月16日の記者発表で、実は自民党の予算は無駄が多い、だから民主党が政権を取ったら初年度で7兆円減らすと。それで、4年間で16兆ないしは17兆円減らすと約束したんですね。初年度全然減ってないじゃないですか。

小沢: うん、ですからなぜかというんですね。

田原: そう、そこ。

小沢: 民主党政権になって、そこは僕もなかなかもどかしいところなんですが、予算編成はどうやって作られているかというと、結局今の民主党政権になっても自民党時代の時とずっと同じようにやられてるんですね。

田原: どういうことですか?

小沢: 要するに各省がそれぞれの今までの自分たちの視野の範囲内で、自分たちで全部原案を作って来るわけです。そしてそれを全部集めたのが総予算で、政府内閣・大蔵省(財務省)を主導して、枠は決めますよ。だけどこれは一律のカットなんですね。例えば100兆円なら100兆円と決めれば、全部集めると120兆円なれば20兆円削るというだけで、政策的に「この政策は生かそう」、「この政策はボツにしよう」という選択をせずに、各省から上がってきたものを全部集めて予算を作ると。だから絶対お金が足りるわけないんですよ。

田原: いや、だからね。何で鳩山さんは首相で、「7兆円減らして来ない。ダメだ、やり直せ!」って言えないんですか?

小沢: だからそこが、なかなかその通り行かなかったというところは本当に・・・。

田原: ちょっと言っちゃいけないんですが、当時小沢さんは幹事長ですね。だから小沢さんが「やんなきゃダメだ」と言えば・・・。

小沢: いや、野党の時には「国民主導・政治家主導の政治を実現するんだ」と。

田原: 言ってました。

小沢: 言いました。そのためには、まず1つの方法として、政府与党一体の仕組みを作ろうということで、僕は幹事長として、また副代表やなんかも、党の幹部もみんなシャドーキャビネット、ネクストキャビネットに入ってたんですよ。ところが政権を取った途端に、結局党の幹部は「もう入らない」と。

田原: 何?

小沢: その政府に。

田原: 政策にはタッチしない?

小沢: ということに仕切りされたんですよ。

田原: なんで? そんな馬鹿な。だって民主党で一番の政策通が小沢さんじゃないですか。小沢さんを外して、予算組むなんてむちゃくちゃじゃないですか。

小沢: いや、僕は別に。そういう方針だということですから。

田原: 誰がそんな方針決めたんですか?

小沢: それはたまたま、その時は鳩山総理でしたけども。

田原: 鳩山さんが勝手に決めたわけ?

小沢: いや、勝手というわけじゃないでしょうが。そういう方針だということだったので、僕もああそうですかということで。

田原: そんなに小沢さんって大人しい人ですか。

小沢: いや、大人しいですよ(笑)。

田原: だって本当に、日本の政治家で一番政策に詳しいんだから、キャリアも十分あるし、自民党でも幹事長もされたわけだし。そういうところは鳩山さんに言ってあげればいいと僕は思う。

小沢: ですから、そこをごちゃごちゃにして混乱させてはいけないと思いましたから。

田原: でもその結果大混乱じゃないですか。つまり「7兆円減らす」と言って減ってないと。もう今年なんて何兆円減らすかもなくなっちゃった。16兆円も17兆円もどこかいっちゃった。めちゃくちゃじゃないですか。

小沢: ですから、今までと同じやり方、同じ予算編成、予算配分の仕方をしてたら、お金が出てくるはずないんですよ。

田原: ないですよ、それは。

小沢: みんな役所が目一杯、俺のほうがいっぱい取ろういっぱい取ろうという話ですから。だからそれを取捨選択して、政策の優先順位をつけていくのが政治家の役目なんですね。

田原: だからそれは、各省で言えば大臣の役割だし、そのために小沢さんは大臣だけじゃなくて副大臣、それから政務官を置いて、役人の言う通りにしないでおこうと、ちゃんと政治家主導をやろうと。それで、大臣がいて総理大臣がいたと。何もできなかったのはどうしてなんですか?

小沢: いっぺんでも描いた通りにできなくては、私はやっぱりそういう努力をしていかないと国民から見放されると。言ってることと、現に政権取ったらやってることと違うという話になっちゃうんで。

■「官僚も馬鹿じゃない。今までと同じでいいとは思っていない」

「僕の主張している革命的なことというのは行政官僚にとって改革」

田原: そこなんですよ。でね、鳩山さんが(総理大臣を)辞めた。菅(直人)さんになった。また何もやってない。これは何ですか。

小沢: ですからどうしても、そこは少し経験不足の面もあると思います。やっぱり役人さんは知識もあるし、官僚機構としては強大ですしね。ついついそこにおんぶしちゃうということになっちゃってるんですね、きっと。

田原: だけど、小沢さんが一番尊敬されてらっしゃる田中角栄(元総理大臣)さんは、その官僚を使うのが実にうまかった。そういう意味では実は小沢さんも非常にうまいんだと思う。

小沢: ただ僕の主張している革命的なことというのは、行政官僚にとっては改革ですから、必ずしも賛成ではないんですよ。

田原: それは腹の中ではそうだけど、小沢さんは力が強いから「反対」って言えませんよ。

小沢: だけど官僚も馬鹿じゃないですし、今こういう難しい時代に今までと同じやり方でいいとは思ってないですよ。優秀な奴ほど。

田原: そうですか。

小沢: それは絶対そうです。もちろん自分たちの利害もありますけどね。ですから、筋道の通った政治家がきちんとした理念と見識を持って政策決定をしていけば官僚も従うんですよ。そこをどうしてもついつい・・・。

田原: 何でできないんだろう? 自民党はそれができなかった。だから国民は自民党を見放して、民主党なら小沢さんがいらっしゃるからできるんじゃないかと思って、民主党政権にしたんですよ。

小沢: だけど僕一人でできるわけじゃないですからね。

田原: だけど今も、さっきの言葉では野田さんもまた官僚任せと。困っちゃいますね。

小沢: ですからTPPの話にしても、野田さんが多少反対があろうがこれはやるんだと、その決断はそれはいいと思うんですよ。それだったら、そう言ったとか言わないとかごちゃごちゃしないで、その筋道を通してもらうのがいいと思うんですがね。

田原: だから僕は、野田さんがやっぱり小沢さんのところにやってきて「やります、よろしくお願いします」と言えばいいのに言ってないんですか?

小沢: 僕に言わなくたっていいですけど。

田原: 言えばいいじゃないですか。

小沢: アメリカにきちんと言ったら、それと同じことを日本でも言わなきゃダメですね。

田原: アメリカではすべての物品およびサービスを自由貿易のテーブルに載せると野田さんが言ったと言っている。(野田総理は)「そうは言ってない」と言いながら、アメリカは訂正をしていないし、日本も訂正を要求していない。

小沢: そうです。ですからそこが日本流の使い分けなんですね。それは絶対いけない。アメリカも、日本のことを馬鹿にして信用しなくなっちゃうんです。それで国内でも、何やってるんだとなるでしょう。

田原: うん、そうです。

小沢: どっちにとってもいいことがないんですよ。

田原: それでね、TPPもさることながら、野田さんは財務省がバックにいるせいか、2010年代の中頃には消費税を10%にすると。多分これやるつもりですよ。さらにさっき言った東日本大震災の復興・復旧のために10.5兆円、これを法人税と消費税で取ると。これに小沢さんは賛成しますか?

小沢: ですから、消費税は僕は賛成できません。

田原: 復興のほうはいい?

小沢: 特に復興のほうはいわゆる原発がありますから。これはお金がある無しの問題じゃないです。この原発、放射能の大量のウラン燃料を抱えていて日本の将来なんかは無いですよ。だからこれこそ何十兆円かかろうが完全に封じ込めて、安心した日本列島にしないと何やったってダメです。

田原: それは良くわかりました。こういうことをはっきり言う人いないんだ。

小沢: いやいや。

田原: それはいい。そうすると消費税は反対ですね。

小沢: 今やることはね。

田原: だから今やろうとしてるんですよ。

小沢: だからそれについては僕は賛成しません。

田原: だったら、野田さんも小沢さんの所へやってきて「消費税をやろうと思います、よろしくお願いします」って何で言わないんですか?

小沢: 言われても賛成できないですね。

田原: でも言わなかったらもっと賛成できないでしょう。

小沢: それはそうですけれども(笑)。

田原: どうするんだろう。小沢さんが反対すれば、きっと民主党の百何十人かは反対しますね。自民党も反対。通らないじゃないですか。

小沢: 消費税については、例えば僕の親しい人たちというだけじゃないと思います。そして消費税というのは都市も農村も無いですからね。

田原: 無いですよ。

小沢: 農村は特にひどいですけども。だから、今どの行財政改革も思い切ったことを何もやらずに、「財源はやっぱり無いそうですから消費税を上げます」というのは、僕は国民には通用しないと思いますがね。

田原: そんなことはあり得ない。

小沢: はい。

■「マスコミは客観的な報道をしないと国を潰す」

「世の中では小沢悪人論が強いんですよね」と田原氏

田原: ただ、もう1つ言いますと、もともと消費税は自民党時代にもっと上げなきゃいけなかったんです。消費税を上げないで来たから1,000兆円も借金、国債ができちゃったと。このまま、また消費税を上げないでいったら日本はギリシャに、イタリアになっちゃうんじゃないかと。

小沢: ですけど、僕らが言う行財政の抜本改革を本気になってやれば、一定の財源は出るんですよ。さっき言ったみたいに、例えば今の予算編成でも「補助金はちょっとしかありません」と言いますけど、政策経費を全部合わせると33兆円から34兆円あるんですよ。予算の中で各種全部合わせると。

田原: そうですか。

小沢: はい。ですからこれを、本当に無駄なものを省き、地方に任せるものは全部任せちゃって、もちろん介護だの老人医療も含みますけど、これもきちんと地方に任せれば、現実に地方はやってるんですから、そんなにお金を無駄に使わなくたってできるんですよ。

田原: 小沢さんがはっきりこう仰るのに。

小沢: 僕はそこからお金は何兆円でも出ると思いますよ。

田原: そういう風に仰るのに、何で野田さんあるいは今の財務大臣や総務大臣でもいいんですが、そういうことをちゃんと言えないんですか?

小沢: それは官僚の既得権を奪うことになりますから。

田原: クビになりますか。下手すると小沢さんみたいに、検察か何かが手を回してみたいなことになるんですかね。

小沢: いや、だからそういうことをやる。しかし、それで国家の官僚は何をするのかということをきちっと提示してやればいいんですよ。

田原: これから裁判の話にいきたいんですが、小沢さんがやられたのは、やっぱり小沢さんがそういう風に官僚に対して本当に抜本的な改革をやるべきだと言い過ぎてるからじゃないかという気もする。まあいいや。それでやっぱり小沢さんは消費税は反対ですね。

小沢: 現時点でやるのはね。抜本改革を何もしないで、ただ増税するというのは反対です。

田原: わかりました。さあ、ここで裁判に、どうぞ。

角谷: はい。では裁判のことにいきましょうか。「小沢裁判とは何なのか?」というテーマでいこうと思います。

田原: そうですね。よろしくお願いします。さて、小沢さんは今、裁判を抱えていらっしゃる。その小沢さんについて、世の中では「小沢悪人論」が強いんですよね。小沢さんは汚いとか黒いとか金権だとか。非常に強い。何でこんなに強いかと言えば、これは小沢さんが仰らなくても、僕が説明しますよ。これはやっぱり小沢さんのことを検察が盛んにマスコミにリークした。「小沢は汚い」とかいろいろなことを。これを新聞やTVがドーンとそのまま書いた。これで世の中がそう思った。こういうマスコミをどう思います?

小沢: いや、僕はマスコミにはオピニオンリーダーとして、やっぱり本当に公正な、客観的な報道をしてもらわないと、やはりまた国を潰すことになると本当に心配してます。僕個人のことじゃなくてね。

田原: うん、だけど何でマスコミはこんなに検察に弱いんですか? 小沢さんが汚いとか書いてるマスコミは裏取ってるならいいですが、裏も取らないで検察の言うままじゃないですか。

小沢: 僕は、検察との繋がりは別として、マスコミも改革の例外ではないという考え方ですから。

田原: どういうことですか?

小沢: ですから、日本のマスコミは最も旧体制の中で既得権を持ってるところですよ。

田原: なるほど。

小沢: 官僚に勝るとも劣らないくらいの既得権を持ってるところです。

田原: しかも日本の新聞はみんなTV局を持ってると。

小沢: そうそうそう。

田原: あれは免許事業だと。

小沢: 免許は本当は5年かな? ・・・ごとに更新されるはずでしょう。だから欧米では競争入札してる所もあるんですね。ところが日本では一度取れば、ずっとでしょう。それから新聞は再販制度で全部保護されているでしょう。その意味で競争が無い。非常に既得権を持ってるのはマスコミなんですね。

田原: 官僚と同じだ。

小沢: そうです。

田原: (官僚)以上かも知れない。

小沢: はい、そうかも知れない。そして批判する人がいないでしょう。

田原: なるほど。

小沢: だからその意味で、今までの体制が一番いいんですね。それを変えようとするのは、僕みたいなのはけしからんという話になってくる。

田原: やられちゃうわけだ。

小沢: はい。

田原: だけど、小沢さんのようになれば、僕はマスコミもちゃんとした記者たちはやっぱり、小沢さんとちゃんと話をすると思うんだけど。だって本当のことを知ろうと思えば小沢さんに会わなきゃどうしようもないじゃないですか。

小沢: だから最近は全然僕もやらないけれども、僕の話を聞かずに、全部僕の記事が出てるんですよね。

田原: 何ですか、それは。

小沢: 本当にわからないんですけれども。

田原: そう。例えば新聞社の名前は言いませんけど、いろいろな大新聞の大記者が小沢さんには会いに来ないですか?

小沢: だから、僕のことに関する記事でも僕が直接取材を受けるということは一切ないですね。

田原: そうですか。

小沢: はい。今は僕はそういうマスコミをあまり相手にするのも馬鹿馬鹿しいからしないんですが、しかし僕はインターネットなんかを通じてフルオープンの記者会見もちゃんとやってますし、ネットのように本当にそのまま報道してくれるんなら僕はいくらでもやるんですよ。(このことを)僕がいくら言ったってダメなんですよ。

■田原「検察審査会って何をやっているのか。さっぱり公開しない」

「小沢さんの場合だけ、検察が動いているわけですか」

田原: 今、別に小沢さんに約束をしてもらおうとは思わないけど、僕の番組は本当に小沢さんの言う通りやりますよ。また申し込みますから。・・・いや、それは余計なこと。それで僕は小沢さんの問題は、初めからシロだと言っている。TVでも言ってるし、雑誌でもどこでも書いてるんです。つまり、プロ中のプロである東京地検特捜部が、小沢さんを何とかやっつけようと思って必死になったけど、ついに起訴できなかった。そうですよね。

小沢: はい。

田原: 起訴できないということはシロということですよ、やっぱり。

小沢: はい。

田原: ところがそれを検察審査会という、ちょっとよくわからない集団なんだけど、それが2度にわたって小沢さんを「起訴相当」と出した。2度にわたって起訴相当になると「強制起訴」になって、小沢さんは起訴されちゃってるんですね。

小沢: はい。

田原: よくわからないのは、検察審査会って何をどうしてるのか、さっぱり、一切公開しないんですね。これはどう思いますか。

小沢: そうなんです。それで国会議員の仲間でも、おかしいということで問い詰めて、資料要求なんかをやった人がいるんですよ。ところが一切資料を出さないんですよ。それで最初、審査会の委員の平均年齢が31歳だとか、いや、間違えました、31.何歳などということでしょう? そうすると、どうやってその人を選んでいるのか。31歳を平均年齢とすれば、ほとんど20代の人が半分以上いるということですよね。人口構成からも変だし、いろんな意味で変だと仲間の議員がいろいろ聞いたんですが、一切資料を出さないんです。

田原: 出さない?

小沢: 出さない。

田原: 一切資料出さないで、いきなり起訴されたってことに対して、小沢さんは、「こんな裁判ないじゃないか」って問題提起しないんですか?

小沢: だから僕はいま制度として検察審査会があるから、それについてどうこうじゃないです。ただ、法と証拠に基づいて運用を公正にっていうのが法治国家・民主主義国家の原則ですから。それをきちっと、少なくとも守ってやってもらいたかったと思っていますね。

田原: ところで、東京地検特捜部が最終的にやろうとしたことは虚偽記載ですよね。小沢さんの帳簿に金を入れたのは実は平成16年10月なのに、これが17年1月になっていたと。2ヶ月ですかね。これを虚偽記載であると言った。もう1つは、虚偽記載であるかどうかも問題で、そこは後で答えて欲しいが、虚偽記載をやったのは当時の秘書官の(元秘書の)石川(知裕)さんだと。ところが石川さんがやったとして、小沢さんがそれを「共謀した」と。共謀なんてことは良くないんだけれど、小沢さんが許可を与えたあるいはそれを認めたということになってるんですね。この2点はどうですか?

小沢: まず、この政治資金収支報告書というものですが、これは言わば収入と支出の家計簿みたいな話ですから、極々事務的な話なんです。

田原: なるほど。

小沢: ですから、石川はじめうちのスタッフはちゃんと記入してますと言ってますが、それが仮に間違っているとしたら、今までの例では政治資金規正法上は修正報告でみんな良しとされているわけですよ。

田原: ちょっと待ってください。仮に2ヶ月ずれたことが事実あったとしても、修正報告すればいいんですか?

小沢: 仮にそれが虚偽報告に当たるということであれば修正して、みんな今まで全部そうやって、今でもそうやってきていますよ。

田原: 話は違うんですが、税務署もそうですね。何かに使ったとして「使ってなかった」と(報告したとき)、そういう時には修正報告すればそれでいいわけですね。

小沢: ですから、それを脱税とかいろんな事実上の犯罪があれば別ですよ。

田原: だけどこれは検察が犯罪だと言ってるんだから。

小沢: いえいえ、報告書自体が違うのが犯罪だと言ってるわけですよ。そうじゃなくて、例えば僕が違法な金をもらってるとか、何か脱税してるとかそういうことがあれば別ですが、いま争われているのは、ただ単なる収支報告書の見解の相違なんです。だからこれは、従来から全部修正報告で済まされてきたものなんです。

田原: そういうものなんですか。

小沢: 全部そうですよ。だから今まで問題になった人でも全部他の実質犯罪が無い限りは、政治資金収支報告書の修正で「OK」とされてきたんです。

田原: 小沢さんの場合だけが、検察が動いて有罪かどうかとやってるわけですか。

小沢: そういうことになります。だから僕は冒頭の意見を言って良いということになりましたので、それも言いました。なぜ私だけがこんな事務的な問題で、何の証拠も無しに強制捜査になるのかと。私個人ということより、あの時はどういう状況だったかと言いますと、もう半世紀以来、初めて1対1の戦いで政権が交代するかも知れないという予測がされていた時点です。その総選挙の直前に、何の証拠も無しに野党の第1党の党首を、そのスタッフ・政治団体を強制捜査するっていうのは、これはもう民主主義の世界では考えられない。

田原: この事件とは直接関係なかったけれども、(同じく元秘書の)大久保(隆規)さんを逮捕しちゃいましたね。

小沢: だからあれも何の証拠も無しに。

田原: あれはまさに、いつ選挙が行われてもおかしくなかった。

小沢: そういう時期ですよ。確証無しに逮捕した。

田原: まあそれはともかく。もう1つ、特に今度の裁判では小沢さんが共謀だと、つまり石川さんにそうしようと言った、あるいはそれを認めたと。この点はどうですか?

小沢: だから今言ったように、これはまったくの事務的な問題なんですね。国会議員で収支報告書を見てる人なんかいないですよ。

田原: そうですか。

小沢: そうですよ。今言ったように、収入と支出を書いて出せばいいだけの話ですから。極々事務的な話なんです。ですからその意味ではスタッフ・秘書が全部それは責任をもってやるのはどこの事務所でも同じなんですよ。

田原: ただ、これは世の中に言いふらしてるんですが、検察は4億円もの金を虚偽記載する、そんなことを秘書が勝手にやれるはずがないと。当然小沢さんに相談しているはずだと、今はこうなっています。世の中の人も相当それを信じています。この点はどうですか?

小沢: ですから、そのお金は私自身の私的なお金ですし、それを出したことは間違いない。だけど後は、どういう事務的手続きをするかというのは、僕がかむ話じゃない。

角谷: メールが来ています。「山の神様」、神奈川の女性です。「小沢さんがなぜ4億円ものお金を現金で持っていたのかに興味があるだけで、その説明がなされれば、この騒動は終わるのではないか。みんなの興味はこの1点だ」と。

田原: ちょっとそれは違うよ。みんなの興味がその1点で、検察もそれに興味を持ってるんだけど、少なくとも今度の裁判は虚偽記載であり、それに小沢さんが共謀しているかどうかの1点で、4億円がどうかということはまったくどうでも良い。

角谷: その原資がどこにあるかは問題ではない?

田原: まったく問うていない。

小沢: この問題について、そういう様な疑問とかがいっぱいあるんですが。この一連のことで政治団体や秘書は逮捕されたり強制捜査を受けましたね。僕の場合は逮捕されずに任意で事情を聴かれただけですが、しかし僕も3回も聴かれているわけです。それからいまお金の話しましたけれど、私の個人資産、女房の個人資産、これはすべて検察が事実上の強制捜査をして知っているんですよ。それでも何も問題なしになったから起訴されなかった。

■「マスコミは円高のメリットを言わず、大変だとばかり言う」

「円高っていうのは悪いことばかりじゃないですね」

田原: ということは、そこに問題はなかったと検察が判断したってことだ。ところが、9月に石川さんはじめ大久保さんたち3人の秘書の1審の判決がありました。1審の判決で3人とも有罪になった。これは問題で、例えば少なくともこの1審の判決では「虚偽記載はあった」ということを断定しているわけですね。皆さんわかると思うんだけど、この1審で一番問題なのは、例の大問題になった水谷建設の元トップが、大久保さんと石川さんに5千万円ずつ献金したと、言ってみれば裏献金ですね。検察がそのことで2人をぎゅうぎゅうやった。ところが2人はこれを「無い」とまったく認めなかった、元トップはいろいろ言ってるようですが、これの証拠らしいものは客観的な物的証拠は何にもない。僕はこの水谷建設に東京地検特捜部がはまりこんだのが失敗だったと思ってるんですが、なんと今度の1審の判決では「もらった」と断定して有罪になっている。これはどう思いますか?

小沢: 本当にびっくりしましたね。言ってみれば「自分はたぶんもらったんじゃないかと思う」という類の判決ですよね。裁判所は法と証拠に基づいてきちんとした公正な場所であると皆思っているわけですよね。そこでそういう風に、多分そうだろう、俺はどうももらったんじゃないかと考えると。その前提があって初めて彼らは有罪ということになっちゃったんですよね。ですから、その意味では本当に私は驚きましたね。

田原: さらに僕が驚いているのは、検察がそういうことで有罪だと求刑するのはわかるが、裁判所、裁判官が認めちゃったと。裁判所が少なくともこういう形で露骨に検察に荷担することは無いと思ってたんだけど、どう思いますか。

小沢: 本当にただ驚いたということで、たぶん前代未聞の判決だと思います。

田原: だからね、そこで僕は心配になってきた。僕は小沢さんは無罪だと思っていますよ。でもこの判決に倣って、もし今回の小沢さんの裁判の検察役をやってる弁護士や裁判官が、この9月の判決があって、推認で有罪になって。小沢さんが有罪になる可能性ありますよ。

小沢: だけど今言ったように、あの2人の有罪の前提は金をもらったに違いないということでしょう。

田原: だって2人とも「もらった」と言ってない、証拠がない。

小沢: 事実上もらってないし、仰るように何の証拠もないわけですよ。それを「たぶんもらったに違いない」と裁判所にそう認定されたんじゃ、これはみんな罪人になっちゃいますよ。

田原: 繰り返しますが、虚偽記載があったとやっぱり断定してるんですね。だから石川さんはこれで有罪ですよね。

小沢: そうそう、そうですよ。1審は有罪の判決を受けたわけです。

田原: ということは、こんな4億円近い金を、石川が秘書が勝手にやるはずがないと。これは小沢さんがかんでるに違いないという想定というか常識、推認ですよ。

小沢: ですから、かんでいるという意味は、僕が僕の金を渡したんだから、その意味ではかんでいるんですよ。だけど後は何回も言うように事務的処理の話ですから、それをどう使うか、どう報告するかというのは・・・。

田原: 小沢さんの話は良くわかってるんだけれど、この1審の判決みたいに推認、推認、断定となると、これはちょっとね。

小沢: そうですね、そういうことが起こったとしたらね。だから後は国民の皆さんの判断じゃないですかね。

田原: 国民の皆さんもあまり信用できないけれども(笑)。そんなことはないことをもちろん祈るし、ないでしょう。ところでもう1つお聞きしたい。当然ながら僕は無罪になると思いますが、今はお休みされていて民主党からもはずれている。もし無罪になったら小沢さんは当然復党ですか?

小沢: 復党って(現在も)党員ではありますけどね。

田原: だから、党員としてきちんと活動することになりますか?

小沢: もちろん、僕はそうしたいと思っています。

田原: 党員としてきちんと活動するということは、さっきも仰った今は例えば野田さんたちが曖昧なことを言って使い分けやってるけど、小沢さんはあんまり仰らないけれど、こういうことは当然きちんと言うようになるわけですね。

小沢: そうですね。言ってもマスコミからいろんなことを言われないで済むようになりますから。

田原: 僕は野暮なことは聴きません。例えばまた代表選挙に出るかなんて聴きませんが、当然やっぱり現役として活動をされるわけですね。

小沢: それは状況が非常に僕は深刻だと思ってるんですよ。日本の国内では震災、原発があり、それから今ユーロが危ないですよ。非常に危ない。

田原: 破綻する可能性がある。

小沢: 僕はそう思ってます。行くとこまで行くんじゃないかと。すると世界恐慌的になっちゃいますよ。

田原: そんな話へ移ります。

角谷: 次はですね。「民主党をどうする?」ということを軸にお願いします。

田原: 今日本の国民が一番悩んでいる、困っているのは円高ですよね。金曜日(2011年11月18日)現在が確か76円ですか。元々は小沢さんが政治家になられた頃は1ドル360円でしたね。それが今は76円。小沢さんも専門家で釈迦に説法ですが、やっぱりせいぜい日本がまともな経済活動ができるのは100円とか90円ですよね。これが76円になったら、こりゃ大変ですよね。もう1つ、ここが一番お聞きしたい。76円という円高だということは、つまり日本が強いと見られているんだけど、本当は強くないことが問題。日本が強いということは日本の経済界が強い、日本の産業界が強いということで、ならば株価も上がらなきゃいけないが、株価が8400円と最低じゃないですか。つまり日本の企業が、産業がまったく信用されていないのに、何で円だけ上がるんですか?

小沢: それは他(の国)がもっと悪いということもあって、円に資金が集まるということだと思います。

田原: さっき仰ったユーロがガタガタ。

小沢: アメリカも良くないと。そうすると日本に投資した方が無難だろうという形で円が上がって、日本がうんと評価されてるっていうよりも、他の国が今異常に大変だから、相対的に日本の円が上がっていると。ただ僕は、それと違うようなことを言いますが、円高っていうのは悪いことばかりじゃないですね。

田原: なるほど。

小沢: ですから、円高に対応できる国内の体制・産業であれ何であれを作ると同時に、この円高のメリットを活用しないといけないと僕は思っています。

田原: 例えば日本は電力なんかのエネルギー、石油、石炭、ガス、みんな輸入ですよね。

小沢: そうです。

田原: 輸入するものは、円高は大変いいわけですね。

小沢: そうです。

田原: だから電力会社は原発で大変だろうけど、本当は儲かっているわけですね。

小沢: 電力だけじゃなくて、日本はあらゆる資源が何もないわけですね。

田原: 食料にしても。

小沢: 何もないわけですよ。

田原: 鉄鋼にしても。

小沢: ですから、その意味ではこの円高というのはものすごいメリットなんです。

田原: この辺もマスコミは問題で、円高のメリットを言わないで「大変だ大変だ」とばっかり言っている。

小沢: 円高で中小零細企業の皆さんを結局大手(企業)が買い叩きますから、大変なことは間違いないです。そのための対策を講じなければならないことは当然ですけれども、ただ「大変だ大変だ」だけじゃなくて、もっと前向きな、積極的な政策を、対外的にも国内的にも打ち出していくべきだと思いますね。

・田原総一朗「国を変えるには小沢一郎が総理になるしかない」 小沢×田原対談全文(後)
http://news.nicovideo.jp/watch/nw149018

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http://live.nicovideo.jp/watch/lv70481074?po=news&ref=news#00:00:22

(協力・書き起こし.com

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