オリンパス損失隠し 執拗な報道の裏にある海外メディアの思惑

以前からオリンパスの問題を追ってきたというロバートソン氏

 前社長のマイケル・ウッドフォード氏から不透明な資金の流れが指摘されていた光学機器メーカー「オリンパス」。2011年11月8日には1990年代からの損失隠しを公表、これに関わったとされる森久志副社長が解職された。同日夜のニコニコ生放送「緊急特番 オリンパス損失隠し問題 上場廃止か!?~どうなる今後の展開」では、ジャーナリストのモーリー・ロバートソン氏が、主に海外メディアの視点を中心に、この問題を解説した。ロバートソン氏は、海外メディアがオリンパス問題をとりあげる背景には、自国民の不満をそらすための「餌食」とした一面があるとの考えを示した。

■海外と日本、オリンパス報道に「大きな温度差」

 今回の一連の報道に関して、ロバートソン氏は「国際報道と日本での報道の温度差をひしひしと感じていた」と語り、当初からエンロンやワールドコム並みの粉飾決算疑惑として報道していた海外メディアに比べ、国内の報道は日本のメディア特有の「馴れ合い体質」によって、ごく最近まで小さく控えめな扱いであったと述べた。

「金融をそれほど理解してなくても、巨額の資金が動いているらしいことは海外メディアの記事を読んでいてとわかった。日本側(のメディア)は日経新聞を筆頭に文字量が少ない。取材したがらない、情報を知りたがらないという姿勢が国内メディアから出てくると、反比例するように欧米のメディアは特集を組んだ」

とロバートソン氏。その上で、今回のオリンパス問題の経緯を振り返り、損失隠しと決算発表の延期、森副社長の解任を含め、同社は上場廃止の可能性が出てきていると解説した。

 ロバートソン氏によると、アメリカではすでにFBI(連邦捜査局)とSEC(証券取引委員会)が、イギリスではSFO(重要詐欺局)が調査に乗り出していると語り、海外ではすでに大きな事件となっているという。

■オリンパス問題は欧米メディア格好の”餌食”に

「欧米メディアはオリンパス問題を餌食にした」

 だが、当事者国ではない欧米のメディアが、日本の「オリンパス問題」に対しこれほど鋭く切り込むのには、ある動機が存在するのではとロバートソン氏は指摘する。その背景にあるのがソーシャルメディアによってアメリカ全土に拡大しつつある「オキュパイ」(格差社会に抗議し、是正を訴える占拠運動)だ。

 ロバートソン氏は「アメリカの金融、経済システム、資本主義の在り方について、欧米の一般市民はとても大きな疑問を抱いている」とし、多くのアメリカ人が、リーマンショック以降の経済危機に対し、強い不満と不安を感じていると語る。

 そのような状況下で、

「アメリカのプレスは『資本主義は壊れているけれども、皆で頑張れば持ち直す』という社説を通したい。そんななか、もっと稚拙でもっと小学生レベルのミス(不正)を犯した日本の「オリンパス」という企業があることで『餌食』となった」

とロバートソン氏。不正が暗黙のうちに許容されてきた日本の企業風土があるという事実は、金融に対する信頼が揺らぐなか、アメリカでは自国民の不満をそらすための絶好の対象となったと自らの考えを示した。

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] ロバートソン氏が振り返る「オリンパス問題」から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv70170947?po=news&ref=rews#04:25

(内田智隆)

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