インターネット出現で漫画の文法は「崩壊」 漫画原作者・大塚英志が語る
漫画における表現の「文法」が変わりつつある。株式会社ドワンゴの新入社員研修として行われてきた「ニコニコ教養講座」が、ニコニコ生放送「大塚英志 presents 『未来まんが研究所』~物語の学校~」として、2011年11月5日から再開された。”学校”の講師である漫画原作者・評論家の大塚英志氏は「ニコニコ動画の視聴者を招いての受講形式になる」と語り、この日はプレ放送として、ニコニコ本社2Fより生中継された。
12月からの本放送を前にした今回は、番組の方向性として「インターネットやWebの中で、漫画がどう変化していくのかを考えるのではなく、実際に作品を作りながら見ていきたい」と大塚氏は語り、日本の漫画表現に分析を加えた。大塚氏によると、宮崎駿監督が「日本の漫画家たちは皆、エイゼンシュテインみたいなことをやっている」と指摘したという。エイゼンシュテインとはソビエト連邦の映画監督で、複数のカットをつなぐことで場面に意味をもたせる「モンタージュ理論」を確立したことで知られる。大塚氏は、宮崎監督の指摘について「これは真実だ」とし、
「日本の漫画は、映画やアニメーションと見せ方の文法性が似ているんです。アメコミと比べたとき、カット割りとか構図の中に、カメラアングルやカメラワークといった情報がたくさん入っていて、極めて映画的なんです」
という。
■これまでは「見開き」が漫画の一単位
そうした漫画では、本を見開いた状態が一つの「単位」であり、コマ割りも「見開きの原則論」で成り立っている。作者自身も見開き単位で構成を考え、コンテを作るという。だが、Webの台頭によって、そうした文法が崩壊したと大塚氏は語る。Web上では漫画を縦スクロールで読むことが可能となり、そこにプログラムを埋め込むことすらできる。また、これまで印刷コストを考えれば採算に合わなかったカラーページも、Webであれば、全ページでも差し支えない。
「(これまで日本の漫画は)紙という制限のなかで展開してきたわけだけど、そういうものから離れたときに、(これまでの表現を)一度リセットして、いったいそこで何が可能なのか、なにが起きるのかを見ていきたい」
と大塚氏は、番組の主旨を語る。
また、手塚治虫氏や石ノ森章太郎氏といった、いわゆる「ときわ荘グループ」が現在の漫画の文法体系を作り上げたことに触れ、そこには999の実験と失敗があり、残ったひとつが今も引き継がれていると大塚氏。腕を組みながら淡々と、「その(失敗した)999を、誰かがやっときゃなきゃいけないだろう」と、番組での抱負を述べた。
◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] 大塚氏、日本の漫画表現について語る部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv69337346?po=news&ref=news#3:47
(ハギワラマサヒト)
【関連記事】
「セーラームーン」米国で人気健在 2カ月連続でマンガ売上1位
「ギャップ」に惹かれる『少年エース』の見野編集長、最愛キャラはドラマ『相棒』の「杉下右京」
蛭子能収さん”二次創作”に挑戦も、視聴者に「負けた」
ドワンゴ新人研修は「絵本づくり」 大塚英志が教える「物語のつくり方」
「村上春樹作品で二次創作って、できそうでできない」 村上作品の特殊性とは
ウェブサイト: http://news.nicovideo.jp/
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。