TPPも結局米国に付いていく? 慶大教授、「日本政府の交渉能力」に疑問呈す
内閣官房主催の「TPP(環太平洋連携協定)討論会」が2011年11月4日午後に開かれ、玄葉光一郎外相らが出席し、「国際政治・経済的な観点からTPPが持つ意味」をテーマに議論を交わした。討論の中で慶応義塾大学の金子勝教授は、イラク戦争や沖縄の普天間基地問題を例に挙げながら、TPP交渉についても「アメリカに付いていかなければやっていけない空気で、決めるような状況ができてしまうのではないか」と疑問を呈した。
野田佳彦首相が交渉参加に意欲を示していると言われるTPP。日本では、長引く経済停滞を打破するために参加を促す意見がある一方で、参加により農業などが壊滅的打撃を受けるのではないかとの論争が起きている。政府は今月12日、13日にハワイで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議までに結論をまとめると見られる。玄葉外相によると、TPPの判断時期を遅らせた理由は、「ことしの3月11日の東日本大震災があり、(東北の農民の)心情に配慮したからだ」という。
この討論会で、「TPPの枠組みがあまり日本にとって利益にならない」との立場を示したのは、慶応義塾大学経済学部教授の金子氏だ。金子氏は「(TPP交渉の席に着くかどうかの)大詰めの段階になって実は21の(交渉)分野がありますとか、そういうことが出てくることに多くの国民が納得していない」と主張。さらに、
「イラク戦争や普天間問題で見られるように、結局”アメリカに付いていかなければやっていけない空気”で、決めるような状況ができてしまうのではないか」
と述べ、日本政府の交渉能力に疑問を呈した。
また、金子氏は「民主党のマニフェストはもともとFTA(自由貿易協定)を2国間でたくさん結んでいく戦略だったはず」とも語り、TPP交渉参加を推進する政府・民主党へ疑問を投げかけた。これを受けて玄葉外相は「(2009年に政権交代をした)総選挙の後にTPPは出てきた」ことが事実とした上で
「(アメリカが)FTAに関心を持たない状況の中で、どういう選択・判断をしていくのか、ということではないか」
と語り、アメリカの圧力によって路線を変更したわけではないことを強調した。
◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] 金子教授の「立場表明」から視聴- 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv69482783?po=news&ref=news#21:17
(山下真史)
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