野口健「被災者と同じ気持ちになれないからこそ、被災地に近付く努力を」

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アルピニストの野口健さん

 東日本大震災、そして福島第1原発事故から、すでに7カ月が経とうとしている。今も「警戒区域」に設定され、原則立ち入り禁止となっている福島第1原発から半径20キロ圏内の被災地は、どのような現状なのか――。アルピニストの野口健さんは、その20キロ圏内に入り、また被災地の人々に会ったときの実感から「被災地の人々と同じ気持ちにはなれない。だからこそ現場に行き、そこで起きていることを伝え、危機感を持ち続けることが必要」と語った。

 2011年10月7日のニコニコ生放送では、『決死救命!これが福島原発20km圏内の惨状だ!~見捨てられた動物たち~』という番組が放送され、家畜として生きてきた動物たちの現状とこれから、そして報道の必要性について語られた。福島第1原発付近には、所有者が避難したことによって餌や飲み水がなく、死んでいった動物が数多くいる。半径20キロ圏内の家畜について行政からは、所有者の同意を得た上での殺処分命令が出された。しかし、実際には今もまだ多くの動物がそこで生きている。

 「希望の牧場~ふくしま~project」は、福島第1原発から20キロ圏内の動物の命を保護するプロジェクトだ。経済的価値を失った家畜を、放射能の影響を研究する資料とすることで生かし、今後に役立てるような取り組みなどを行っている。このプロジェクトを立ち上げた吉沢正己さんは、福島第1原発から14キロに位置するエム牧場浪江農場の農場長。震災後も牛たちを救うため、被ばくを顧みず牧場へ通い、現在も牛たちに餌と水を与え続けている。吉沢さんは、牧場がある浪江町を「絶望の町」と表現した上で、そこに「自分たちの力で希望の火を灯す」ことが必要だと話す。

 また20キロ圏内に入り、自身の公式サイトなどでその現実を伝えている野口さんは、餓死した家畜やそれに群がるウジ、雑草の伸びきった道といった原発付近の様子を映し出した写真を番組で紹介したほか、「生きている豚が死んだ豚を食べていた」「駆け寄ってきた豚が2時間後には殺処分されていた」といったエピソードを話し、「こういう現実があることが、もっと早く表に出ればよかった」と振り返った。

 そして野口さんは、警戒区域や動物たちの問題に限らず、被災地に自らが赴き、その現状を伝え続けることが必要だと話す。

「例えば、被災地に行くじゃないですか。いろいろな方とお会いしたときに、被災者と同じ気持ちにはなれないんですよ。イコールにはなれる訳ないんです。でも現場に行くことによって、被災地の気持ちに近づく努力はできるんです。そういった努力は必要だし、現場で起きていることをどれだけ伝えて、危機感をどれだけ持ち続けるかということ」

と述べ、被災地に足を運ぶことの重要性を訴えた。

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] 野口さんの写真と報告から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv66206839?po=news&ref=news#43:45

(伊川佐保子)

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