リクルート社が生んだ「グーグルキラー」新検索サービスに勝機はあるのか
株式会社リクルートの新規事業提案制度でグランプリを受賞して誕生した「Bestmania(ベストマニア)」。「情報と”検索”に革命を起こす」「今までに全くない、新しい”検索”体験」と打ち出したこのウェブサービスが2011年10月4日に公開された。「グーグル」「フェイスブック」といった巨人たちが大きく立ちはだかっている検索サービス業界だが、運営会社である株式会社エモーチオの林晃佑(こうすけ)社長は「勝ち目は十分にある」と自信を持って言い切る。
「Bestmania」は「New RING」と呼ばれるリクルート社内の新規事業提案制度で、約300事業のなかからグランプリを受賞し、実現したウェブサービス。同制度から過去に生まれたものとしては、「HOT PEPPER」「R25」「ゼクシィ」といった成功例があり、「Bestmania」はその後を追うことになる。運営は創業メンバーとリクルート社が出資する新会社「株式会社エモーチオ」がおこなう。
端的にこのサイトを説明すれば、利用者が独自に「本」や「映画」、「音楽」などのベスト3をつくって公開でき、また他の利用者がつくったベスト3も見ることができるというサービス。しかし、「ダイエット方法・ベスト3」「栄養ドリンク・ベスト3」「泣ける映画・ベスト3」というように、ただベスト3を掲載するというものではない。
「1ヶ月で痩せる効果的なダイエット方法・ベスト3」
「仕事の追い込みで集中力アップに効く栄養ドリンク・ベスト3」
「とにかくおもいっきり部屋で泣きたい感動もの映画・ベスト3」
このように、よりニッチな状況に絞り込んだベスト3を紹介している。林社長は「情報の受け手のターゲットを明確に定義し、真意やシチュエーションまでも明確に指定する」状態の情報が「大量に整理」されていれば、検索をする人が「少しぐらいニッチな情報であっても、『これを求めていた』と思うことがある」とし、「グーグルなどの検索エンジンの発達では解消できなかった、見つけたいものを見つけられないストレスを解消できる」と自信を見せる。
確かにニッチな情報であってもそれらが大量に整理されているならば、広く利用者の要望をカバーできるかもしれない。サイト公開時ですでに1万個のベスト3が掲載されており、林社長いわく「今後1年間で50万個、5年間で1000万個」を目指すという。しかし、利用者が独自につくったベスト3に相当程度の有用性があるのかといった問題が残っている。
これを解消するのがサイトに設置された「ササった!」ボタンだ。「ササった」とは情報の受け手が求めていた情報に辿りつけたことに対して評価をするものであり、利用者が独自につくったベスト3をさらに多くの利用者が評価することで、より情報の精度を高めていくのだという。
■「キュレーション」検索でグーグルを超える?残された課題
「Bestmania」のサイトの根幹は、利用者による情報の整理と評価で、有用性を向上させるという、いわゆる「キュレーション」を活用したものだ。しかしサイトで「キュレーション」が効力を発揮するためには、まだまだ課題が残されている。
まずは、サイトの利用者数。利用者が少なければ情報が少なく、偏り、精度も落ちてしまう可能性がある。これに対して「月間1億人の利用者を目指す」という林社長は以下のように答える。
「人が集まらないと意味がないので、まずは収益をあげることに注力しません。コンテンツ数(=ベスト3の掲載数)をあらゆる手法を使って増やします。雑誌、新聞といった紙媒体、テレビ番組などメディアに対して『あなたのベスト3を教えてもらえませんか』と(露出して)訴えかけていきます」
また、似たような先行サービスである検索サイト「NAVER」やハウツー共有サイト「nanapi」とどう差別化していくのか。この課題に対しても林社長は明確な答えを持っていた。
「『NAVER』や『nanapi』は、読み物として情報を得たい人に応えています。それに対して、『Bestmania』は、読み物として終わらず、その先のモノやサービスにも帰着させます。我々はリクルートから出資を受けていることもあり、サイトを通じて宿泊先などのサービスの予約やモノを買うといったことができることが、他とは大きく違います」
ピンポイントのニーズに応える情報を整理された状態で大量につくる。そして、情報を得た利用者がアクションを起こす。こうした今までに無い検索サービスだという「Bestmania」が、巨人グーグルを超える日が来るのか。そして、世界の検索サービスを変える日が来るのか。ぜひこのサービスを皆さんの目でも確かめてほしい。
◇関連サイト
・ベストマニア – 公式サイト
http://www.bestmania.com/
(丹羽一臣)
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