本格的崩壊期か?テナントビル化した百貨店

本格的崩壊期か?テナントビル化した百貨店

異彩放つ博多マルイの店づくり

4月21日、JR博多駅前に博多マルイ(西野淳店長、売場面積約15,000㎡)がオープンします。
日本郵便が開発するKITTE(キッテ)博多の核テナントとして九州初出店となる博多駅の新たなランドマークの誕生です。

これまでの百貨店の出店とは大きく異なる点があります。
画期的なものとして、2014年7月以降、約1万人の顧客が400回以上参加した店づくりの企画会議があります。
その中で最も多かった要望は「自分に合う、自分にぴったりに出会いたい」というものでした。
多様化するライフスタイル型の店づくりを行うため、老若男女の垣根をなくし、これまでの顧客ターゲットという概念を取り払ったといいます。

その結果、九州初出店舗が全テナントの4割を占め、アパレル以外の構成が7割になるなど顧客と一緒に店づくり・ものづくりを進めるアプローチは従来型の百貨店とは明らかに異なったものとなりました。

減少傾向の九州の百貨店売上高

平成27年の九州百貨店・スーパー販売動向(九州経済産業局調べ)をみると百貨店(21店)の販売額は5426億円(前年比2.6%減、全国は6兆8256億円、前年比0.0%)と3年ぶりに前年同期比を下回りました。
近年ピークの8565億円(平成11年)から36.6%減と逓減しています。

一方、スーパー(405店)は1兆0308億円(同2.0%増、全国は13兆2229億円、同1.9%増)と好調を維持しています。
百貨店を商品別でみると化粧品・宝飾・貴金属が前年比1.9%増と健闘している半面、暖冬も加わり、衣料品が前年比5.3%減と大きく落ち込んだことが響いています。

変わる消費者ニーズ、重いものはネットで

消費者の高齢化と同時にネット習熟者の高齢化が進んでいます。
そのため郊外の戸建を売却し、買い物が便利な都心のマンションへの住居の住み替えが顕著になっています。
加齢により車の運転が困難になり、徒歩圏あるいは公共交通機関の利便性が高く、駅近の病院が近いタワーマンションなどに移住する現象が起きているからです。
相続税対策にもつながる超高層マンションが売れている一因でもあります。

そうなると米や水、酒などの重い食材などはインターネットで購入し、宅配業者に戸別宅配を利用する、あるいは日々の肉・魚・野菜の生鮮三品もネットスーパーやコンビニの宅配に依存するケースが増えています。

百貨店ビジネスの懸案

「百貨店は場所貸し業」とよく揶揄されます。
百貨店の仕入(発注)は
①仕入、在庫に一切関与しない場所貸し
②メーカーの店舗展開協力も在庫負担一切関与なし
③一部仕入関与一部在庫負担も売れ残りはメーカー負担
④百貨店が全発注、全部在庫負担
の4つに大別され、その9割ほどが①〜③に該当するそうです。

つまり、百貨店はテナント賃料収入に腐心し、品揃え・在庫・販売スタッフ費用等のリスクは大部分をメーカーに依存します。
そのため商品が売れた時点で仕入が発生する「消化仕入」が慣例化し、メーカーも百貨店もリスクを分散し、商品価格に利益を乗せるサプライチェーンができあがりました。

その結果、高級品は買えるが、当然値段が高い、値引きしない、メーカー店員が多く横断的なフロアサービスができないなど、リスクをとらないツケを消費者が負う構図になっています。
つきつめるとこれまでの百貨店の真の顧客は来店客よりも、安定的な賃料をもたらす集客効果の高い高名なブランド誘致に力点が置かれていたのかもしれません。

示唆に富むセブン&アイホールディングスのオムニチャネル戦略

4月7日、ミスターコンビニの異名を持つ鈴木敏文会長兼CEOが突然の退任を表明したセブン&アイホールディングス。国内首位のセブンイレブンジャパンのほか、イトーヨーカドー、そごう、西武、ロフト、赤ちゃん本舗、バーニーズなどのグループを傘下に持つ同社の決算が興味深いでしょう。

同社の平成28年2月期連結売上高(平成27年3月〜28年2月)は6兆0457億円(前期比0.1%増)、営業利益は3523億円(同2.6%増)です。セグメント別営業利益でみると主力のコンビニ事業が3041億円(同9.9%増)に対して、買収したニッセンホールディングスの通信販売事業(△84億円、同12.4%減)、百貨店事業(38億円、同45.7%減)、スーパーストア事業(72億円、同62.6%減)と買収事業が軌道に乗っていないことがわかります。

 同社は、街のインフラであるコンビニと総合スーパー、百貨店、専門店などが連携し、ネットとリアルの融合を目指す新たな流通サービス「オムニ7」を展開し、新体制によるグループ間のシナジー拡大が注目されるところです。
 
経営変化が激しいなか、企業の平均寿命は30年から5年に縮小していると言われています。
いつしか顧客の顔を忘れた旧態依然とした事業は市場撤退を余儀なくされることなりかねません。
真の顧客と向き合うマーケットインあるいはユーザーインの視点がこれまで以上に求められそうです。

(村上 義文/認定事業再生士)

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