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光速を超えるニュートリノ観測は「密室殺人事件」!? タイムマシンは実現するのか

まずニュートリノについて説明する野尻美保子氏

 「タイムマシンができる!?」。欧州合同原子核研究所(CERN)から届いた「光より速いニュートリノ観測」のニュースに世界中が色めき立った。「光速を超えると時間旅行ができる」とされるのは、物理学に親しくない人も聞いたことがあるだろう。本当にタイムマシンはできるのだろうか。これを受けて2011年9月30日に気鋭の物理学者やSF作家を招き、ニコニコ生放送で議論がなされた。高エネルギー加速器研究機構の物理学者・野尻美保子氏は番組のなかで、「ニュートリノが光速を超えた」という今回の発表は、いわば「密室殺人である」との声を紹介した。

 ところで、まずニュートリノの説明をしておきたい。ニュートリノとは太陽の中心などでつくられ、地球上にも無数に降り注いでいる素粒子(これ以上分けることができない基本的な粒子)だ。質量が非常に小さく電荷がない(プラスでもマイナスでもない)ため、他の物質の干渉を受けずほとんどの物質をすり抜けて進むのが特徴。

■今回のニュートリノ観測は「密室殺人事件」!?

 CERNの発表した論文によれば、このニュートリノをスイスのCERNから730キロ離れたイタリアの研究所に飛ばす実験をしたところ、光速より1億分の6秒早く到着したという。この発表を受け、世界中のメディアがタイムマシンの可能性を示唆したわけだが、専門家の受け止め方とは温度差があるようだ。物理学者の菊池誠氏曰く、

「(結果は)間違いなんだろうけど、なぜ間違いかわからないんだろうなぁと。」「実験した人たちにもどこが間違いかわからないっていうことらしいだったので、間違いを見つけるのは大変だなと思った。ニュートリノだけ速くても、ちょっとなんか困る」

と冷静に語り、野尻氏に至ってはこの発表を聞いて

「まぁイタリアだと時間(の流れ)がちょっと遅いんじゃないか」

とウィットの効いた感想を抱いたと語った。また野尻氏が今回のニコ生放送出演に際し、名古屋大学の研究者に連絡を取ったところ、

「これは密室殺人事件である」

と言われたとのこと。つまり、状況的には密室だが、殺人が起こっている(光速を超えたように見える)以上、実際にはどこか穴が空いている(実験に間違いがあった)というのだ。要するに、タイムマシンの可能性よりもまず、科学者の多くはこの実験そのものに懐疑的であるようだ。なお、発表したCERN自身も「やるべきこと(検証)はやりつくした。我々はお手上げです。代わりにみなさんツッコミを入れてよ」というスタンスでの発表のようだ。

■5次元目に出ることで光速を超える

5次元目理論について解説する野尻美保子氏

 では、仮に「光速を超える」ことがあるとしたら、そこにはどんな理論が考えられるか。それはアインシュタインの相対性理論を覆すものなのだろうか。光や一般の物質は4次元の空間(いわゆるふつうの世界。3次元に「時間軸」を加味したもの)を動いている。光速を超えるには、5次元目の、より速く走れる歪んだ空間を動く必要があるということだ。

 エネルギーの高いニュートリノは、この5次元目へと出ることが可能なのではという仮説の下、実験が進められているという。ただし、仮にこれが正しかったとしても、それは十分に検証を重ねられた相対性理論を覆すものではなく、それを拡張するものになるとのこと。となれば、光速を超えることで実現するタイムマシンが現実のものとなる可能性は極めて低いようだ。

 今回の発表に対して世間がこれほど反応したことにそもそも野尻氏は驚いたという。だが今では、それはSF作家によりタイムトラベルを題材にした作品が脈々と発表され人々の好奇心を刺激してきたおかげと分析している。物理学に市民が興味をもつ架け橋になってくれたとして、この場に同席した野尻抱介氏らSF作家たちに敬意を表し、番組は終了した。

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]5次元目に出ることで光速を超えるという話から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv65516003?po=news&ref=rews#1:28:27

(大塚千春)

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