過去最悪、小学生の視力低下が進んだわけ?

過去最悪、小学生の視力低下が進んだわけ?

子供の近視と昨今の事情

まずここで言う視力低下というのは、遠くが見にくい状態の眼であり、いわゆる近眼というものになります。

小児期に悪化する近視の大部分は、眼軸長(眼の長さ)が過剰伸展を起こし、これに伴って相対的に焦点が前へずれるために起こります。
このため近視が強度になると、将来、黄斑変性症、緑内障、網膜剥離などが起こるリスクが高くなります。

近視は都市型近代国家に多いのが特徴です。子どもたちをとりまく文明化された環境が、近視の発生を促しているのは事実のようです。
文明社会では毎日の生活が近業(読書、書字)中心になるために近視が増えるといわれ、日本も戦後、近視の子供が増加しています。
最近の調査では、小学生の10%が近視で、中学生になるとさらに増え、30%の生徒に近視がみられます。
近視の原因は解明されていませんが、遺伝的な要素と環境が複雑にからんで近視になると考えられています。
ですから同じようにスマホやテレビやゲームに熱中しても、近視になる子とならない子がいるわけで、目を使いすぎると必ず近視になるとは限りません。

小児期の近視予防

近業を長く続けると、水晶体の厚さを調節している毛様体が異常に緊張して、一時的に近視の状態になってしまいます。
これを偽近視といい、調節をマヒさせる点眼薬で治療・予防します。

最近の進行予防治療としては、夜間装用コンタクトレンズ(オルソケラトロジー)などを用いた研究が行われており、一定の治療効果が報告されています。

今日からできる簡単な予防法は正しい姿勢で勉強や読書をするよう心掛けてください。
背中をまっすぐにして少し頭を前にかたむけた姿勢で、目と本の間を30センチくらい離しましょう。

目の疲労を防ぐために、1時間机に向かったら5分から10分は目を休ませて、ゲームなどは40分以上続けないようにしてください。
部屋の照明は明るすぎたり暗すぎたりしないよう、机に向かうときは部屋の明かりといっしょに、スタンドをつけるのが目によい照明のしかたです。

近視は治るか?

以前まではメガネやコンタクトレンズを使わないで近視を治すのは困難でした。
前述の点眼薬を用いる治療法がありますが、視力がもとに戻る例はそんなに多くありません。

しかし25年前頃から、近視の手術的矯正法として、工キシマレーザーによる角膜切開術(レーシック,LASIK)などが発表されています。
当初に比べ格段に進歩し、2000~06年に厚生労働省が認可した安全で精度の高い手術となりましたが、18歳以上かつ検査に適合した近視の方のみが可能です。

子供が近視になったら

近視は近いところは見えますから、日常生活に不自由がないなら、すぐにメガネをかけなくてもかまいません。
ただし、黒板の字が見にくいと勉強にさしつかえるので、席が教室の後ろでも文字が読めるよう、視力が0.7以下になったらメガネを用意したほうがよいでしょう。
メガネをかけたり外したりしても近視の度が進むようなことはありません。

コンタクトレンズはメガネをかけたくない人に好まれていますが、異物感があったり、角膜を傷つけたり、はめたり出したりするのが面倒だといった欠点があります。
コンタクトレンズは管理が大変なため小学生はコンタクトでなくメガネをかけるようおすすめします。

メガネ店に行く前に、必ず眼科を受診してください。
目の病気が原因で視力が落ちていないかチェックする必要があります。
屈折異常なら近視かどうか確認してもらい、メガネをかけたほうがいい場合は検眼して、適切な度のメガネを処方してもらいましょう。

検眼は医行為(眼科医)です。
メガネ店は眼科医師の処方箋通りにメガネをつくるだけのところと知ってください。
近視になりかかりの時期は、見にくくなったら眼科で検眼してもらいましょう。

(田川 考作/眼科医)

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