野田首相の「来夏までに原発再稼働」発言に、保安院長「いつなら出来るとは言いにくい」

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原子力安全・保安院の深野弘行院長

 経済産業省原子力安全・保安院の深野弘行院長は2011年9月22日の記者会見で、野田佳彦首相が来夏までに原子力発電所の再稼働を開始すると表明したことを受け、ストレステスト(耐性評価)の評価を含めた今後の進め方について、「やるべきことは出来るだけ無駄なことはしないこと。合理的にやらなければいけない」と語った。また原発立地自治体および住民の理解や合意等を得るため、「(原発の安全性の評価の)プロセスを透明にすることが必要だ」との認識を示した。

 野田首相は20日の米ウォール・ストリート・ジャーナル/ダウ・ジョーンズ経済通信とのインタビューで、定期検査で停止中の原発について「電力需給があるので、来年の春以降、夏に向けて再稼働できるものは再稼働していかないと電力不足になった場合には、日本経済の足を引っ張るということになる」と発言。「来夏までに原発を再稼働」する考えを明らかにした。しかしながら、原発再稼働までの手法やプロセスはいまだ決定しておらず、こうした中で期限を区切った首相の発言は波紋を広げそうだ。

 現在、再稼働にあたっては各電力会社が行う原発のストレステストの結果を保安院や原子力安全委員会が評価するほかに、国際原子力機関(IAEA)も評価に加わる方向で調整が進んでいるものの、評価手法やスケジュールなど具体的なことは決まっていないのが実情だ。

 この点について深野院長は、「IAEAと具体的な話ができるのはわれわれの方の事務作業がある程度進んでからだ」と語り、「今この段階で、いつなら(再稼働)出来るということは言いにくい」と述べるにとどめた。

■深野弘行保安院長とニコニコ動画記者(七尾功)の一問一答

七尾記者: 野田首相が来夏までに再稼働と発言されたことは院長もご存知だと思います。事実上、おしりが決まったようなものなんですが、IAEAとの話が具体的が進んでいない中、実現性についてはどうなんでしょうか。また、この首相の「来夏までに再稼働」発言はIAEAの皆さんは把握されているのでしょうか。

深野保安院長: 特に今回IAEAの関係者とお目にかかった時も、今言ったようなタイミングの件は話題になりませんでしたので、それを知っておられるかどうかよく分かりません。

 それから、これからどういう風に進めるかということですけれども、これについてやはりそれぞれの地域の方が大変心配をされているということも十分踏まえてやらなければいけないと思っておりまして、私どもとして、やるべきことはまず、とにかく出来るだけ無駄なことはしないと。できるだけ合理的にやらなければいけないとは思っております。ただ一方で、やはりきちんと手順を踏んでいかなけれないけないと思っておりまして、当然私どもが評価をするプロセスというのも、評価書が出てきたところで「はい、こういうのができました」ということではなくて、やはり最初からできるだけプロセスを透明にするということが必要だと思っておりますし、その中でいろんな過程で必要があれば、地元にもご説明しなければいけないと思っております。従ってそれなりのそういう手順を踏んで、その中でそういうことを前提にして最大限努力をするということではないかと思っております。

七尾記者: ただ、そこにIAEAの評価も加わってくるわけで、それで来夏までに原発再稼働ということについて実現可能性はどうなんでしょうか。

深野保安院長: そこはIAEAにそういう形で仮に特定の案件について見ていただくにしても、全く何も準備作業をせずにやるわけにいかないので、どの辺でIAEAとそういう具体的なものについての話ができるかというのは、これはやはり、われわれの方の事務作業がある程度進んでからだと思いますので、今この段階でいつなら(再稼働)出来るということは、なかなか言いにくいなと思っています。ただ、その中で出来るだけ努力をし、かつIAEAから見ても日本が急に(評価依頼等が)来たと思われないように、やはり密にいろんな過程・過程の状況は先方にも情報は伝わるようにしておかなければいけないと思っております。

(七尾功)

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] 七尾記者の質問部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv64731391?ref=news?po=news&ref=news#20:43
・野田佳彦首相インタビュー:一問一答 – ウォール・ストリート・ジャーナル日本版
http://jp.wsj.com/Japan/Politics/node_309505

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