一流の上司は「去り際」に何を語り、部下を感動させるか

一流の上司は「去り際」に何を語り、部下を感動させるか

部下を感動させる心に残るスピーチのポイント

爽やかな風がそよぐ春の訪れは「別れ」と「出会い」の季節でもあります。あちこちで素敵なシーンが展開されますが、特に職場では年度末になり、異動や退職が集中する時期でもあります。そこで送られる上司として、部下を感動させる心に残るスピーチのポイントに触れてみたいと思います。
33年間ホテルの現場第一線で、数えきれない位の挨拶を聞いてきましたが、聞き手に感動与えるスピーチとはひとえに、話し手の人柄から発信される「心温まるスピーチ」だと痛感しました。それには「感謝・思いやり・優しさ」等が必要です。また、スピーチは話し手が聞き手に対するサービスであり、話し手の感情や考えが聞き手に伝たわらなければ意味ありません。だから「上司の私が話すからよく聞け!」ではなく、「聞いて頂く」という態度が必要です。そして、聞き手は話し手の人間性に興味を示しますが、それを補完するためにも話し方のスキルは必要でしょう。具体的なポイントは下記の通りです。

話の内容について

紋切り型の挨拶調や自慢話ではなく場に相応しい内容で、基本は「お礼」「今後のありかた」「聞き手に対する思いやりの言葉」で構成すればいいでしょう。
○具体的なエピソードを交える。
○美辞麗句より自分の言葉で心を込めて、話しかけるように話す。
○今の寂しい気持ちや、感謝の気持ちを素直に言葉に出す。
○「ありがとう」などの相手をいい気持にする言葉を多く取り込む。

話すときの態度と表情について

雄弁のコツは「一に態度、二に態度、三にも態度」と言われています。聞き手は耳で話を聞きますが、同時にその目はしっかり態度を見ています。
○最初と最後のお辞儀ポイントは、姿勢を正し、手は両脇につけ、聞き手の目を見て、聞き手の足先が見える位頭を下げ、ゆっくり上げる。
○話は口先だけでなく、身体全体でする。
○背筋を伸ばし、頬笑みをお忘れなく。

それ以外に注意する点

「相手と同じ目の高さ」で話すのが話術の基本ですが、これは同じ心の高さにも繋がります。
「寸鉄人を殺す」と言う言葉がありますがその逆もあります。つまり「寸鉄人を活かす」とでもいいましょうか、短い言葉でも人を感動させます。例えば「皆さんと一緒に働けて本当に幸せでした」「皆様のお陰です」等はお勧めです。
聞き手に応じた話し方をして下さい。話の内容に聞き惚れる人もいれば、美しい声や言葉に好感を抱く人もいます。また話し手の迫力に感動する人もいれば、静かに語りかけるのが良い場合があります。加えて、聞き手は話を期待しているか、期待していないか、好感を持たれていないか等を計算して話を進めて下さい。普段から引き出しを沢山用意しておくことが望ましいです。

感動するスピーチは一朝一夕では出来ない

以上は簡単なようですが、一筋縄ではいきません。先ずは人柄を磨き、心を豊かにすることが大切です。
また、去り際、引き際、別れ際等とかく「際」がつく場合は、その人の人格が露見しがちです。かつて日本人は、何事においても「礼に始まり礼に終わる」といわれました。そして礼の本質は「感謝や思いやりの心」を言葉や態度などで具体的に表現したものです。つまり私利私欲に走るのではなく、部下のためにどのように接してきたかが大切です。
それに、去り際を潔く美しく飾りたいと思う「豊かな心」が加味されれば、感動を与える挨拶になるでしょう。

(平松 幹夫/マナー講師)

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