世界を旅する「部長とカメラ」 空港で出国直前の2人に聞く

「部長とカメラ」こと、萩原寿夫さんと木川良弘さん

 「部長とカメラ」という名前でニコニコ動画などに旅行の動画を投稿している「部長」こと萩原寿夫さんと「カメラ」担当の木川良弘さん。

 投稿は2008年からはじまり、「アメリカ全州制覇の旅」や「世界遺産完全制覇の旅」など、なんとも羨ましい旅行記録を残している。

 2人は中学、高校の同級生。「部長」の萩原さんは中学の科学部の部長だったことが由来だが、じつはコンピュータシステム会社の社長である。「カメラ」の木川さんはテレビの旅番組や情報番組などで活動しているプロの映像カメラマンである。次回作の撮影に出発直前という成田空港で待ち合わせをして話をうかがった。

■ずっと動画撮影しながら旅行をしていた幼なじみ

――まずは「部長とカメラ」を知らない人もいると思うので、どんな動画なのか説明してもらえますか?

萩原: 僕たちは普通の人の視点で旅行している動画をアップしています。一部の人には、一緒に旅行している感覚で見てもらっているようです。

木川: 旅好きな人は面白いと思ってもらえるかもしれませんが、テレビの旅行番組と比べられると、あまりにもゆるくてガックリされるかもしれません(笑)。「飛行機まだ来ないね」とか、美味しくない料理を「美味しくない」って言ったり、実際の旅行番組では放送しない何でもないところも見てもらいたい。

萩原: 自分で「映画を超えたリアリティがここにある」っていうキャッチコピーをつけているのですが、真剣に見るのではなく、飲みながらとか、作業しながらとか「ながら見」をしてもらうといいと思います。面白いものを期待しないで、構えずにゆるーく見てほしい。たくさん動画があるのですが、最初はトルコ編から見てもらうのがいいかなって思います。

――「部長とカメラ」を始められたきっかけを教えてもらえますか?

いつもどこでも、こんな感じで動画撮影。カメラ担当の木川さんは、撮影していないと不安を感じるというほど

木川: 2人が住んでいる成田には国際空港があって、場所柄、外国人がたくさん歩いている街なんです。国際都市ということもあって、市の青年会議所では海外旅行の企画も頻繁に立てていて、僕は小学生のときからよく参加していました。2人が一緒に行った最初の旅は1991年、中学三年生のとき。参加者は30名くらいで、アメリカにホームステイをしました。そのときから、僕はHi8のカメラを持って撮影していました。2人だけで旅行するようになったのは2002年からです。萩原にアメリカにドライブに行こうよと誘われたのがきっかけでした。1週間、レンタカーを借りて、今と同じスタイルで旅行をしました。

萩原: とにかく広い場所をドライブしたかったんですよ。誰と一緒に行こうか考えたとき、何かトラブルがあって現地で見捨てても、生命力があって1人で帰れそうな人ということで、木川に声をかけました(笑)。その2002年の旅行からビデオは回していましたね。元々はプライベート旅行を動画撮影して、家族や友達に見せるためのものとして撮り始めました。公開しようと思ったのは2007年の旅行が終わったときです。当時のニコニコ動画は、二次創作的なものが多くて、僕たちのような旅行動画というジャンルがなかったので悩んだんですけど、どんな反応があるか面白そうだと思って公開することにしました。

――ニコニコ動画で公開してみて、どうでしたか?

木川: 「背景がソフマップ」とか「トルコイケメン」といった書き込みがあって、そんなところ気になるんだ?という、編集している私とは違う目線で反応してくれるところですね。僕らの会話にコメントで参戦してくれるのも面白い。

重い機材の入った荷物は預けて、意外と軽装の2人

萩原: ニコニコ動画で公開するようになってから、旅行のきっかけを作りやすくなりました。2002年の旅行では、来年また行けたらいいねと言っていたのですが、今は1年に1回は行っておかないとみたいなモチベーションがあります。また、動画を見直すと、次にこうしたいといの欲求が生まれて、また旅に出たくなります。

木川: 僕は仕事の現場で声をかけられるようになりました。例えば記者会見の取材先で、ほかのカメラマンから「木川さんですよね? ニコニコ見ましたよ」って声をかけられると、少し困るのと同時に、少しずつ浸透しているのを感じます。

【ニコニコ動画】世界遺産完全制覇の旅トルコ編 第0話

■「部長とカメラ」は、こうして作られる

撮影の仕事で海外に行く機会が多いという木川さん。旅行先では絵葉書を出したり、お土産を買うのも忘れない

――撮影から公開までの流れを教えてもらえますか?

萩原: 発着のホテル、レンタカーは日本から予約して、大まかなルートと寄りたい場所は決めますが、細かいところは決めずに行き当たりばったりです。

木川: 僕はテレビ業界の人間なんで、こういう撮影してもいいのかとか、コーディネイターは必要かとか、大使館や現地の撮影会社に聞いたりはします。機材は、業務用のビデオカメラ、家庭用のビデオカメラ2台、基本はカメラ3台態勢です。音声系はピンマイク2波とガンマイク。面倒なのはワイヤレスの電池交換です。充電器で常に車の中で充電しています。

萩原: 毎晩夜にホテルで撮影したデータをパソコンで取り込んでいます。これが、すごく時間がかかります。

木川: 帰国してから、まず僕が編集します。編集ソフトはEDIUS。だいたい1日分を編集するのに3日くらいかかります。仕事が暇なときは1週間続けて編集作業ができるときもありますが、仕事が忙しいときは1ヵ月も2ヵ月もほったらかしということもあります。締め切りがあるわけではないので、のんびり作っています。テレビの仕事と違って、尺(完成した動画の総時間)が決まっていないところが気楽です。1ヶ月後くらいに萩原に作った動画を見せると「ここはあーしてこーして」と文句が出るので、それを直します。公開までは旅行から戻ってから、およそ半年後くらいですね。

2002年の旅行では、奥さんの誕生日に出発してしまった萩原さん。お子さんの誕生日だけは忘れないようにしている

萩原: 僕は文句を言っているのではなく、誤字脱字を注意しているだけだからね!

■いつかは海外旅行と思っている人たちへ

今回の予定ルートの地図。レンタカーでアメリカ南部を走る

――旅行ばかりしている2人が羨ましいという書き込みも多いですが、旅行する時間はどのように作っているのですか?

木川: 僕は簡単で仕事仲間に海外撮影に行ってくるって言うだけ。旅行先から仕事先に絵葉書を出すと、この人は暇があると海外旅行ばかり行っていると思わせることで受注が増えたりします。僕の仕事は、暇なときは遊んでいるほうがいいんです。

萩原: 遊びに行っていることがバレるとマズイ人には出張で海外に行くと言います。サラリーマンではないので、自分で予定が組みやすいところはあります。今回は投資家に会ってきますと言ってきました。

――なかなか海外旅行に行けない人もいると思うのですが、何かアドバイスはありますか?

萩原: まずは行ってみたいと思うこと。そして僕でもできるんだという感覚が大事です。

木川: 旅したいけどわからないという人は、飛行機の乗り継ぎとかレンタカーとか、手続きのハウツーがわかってないだけの場合が多いですね。

萩原: 今の旅行の本には、レンタカー会社の契約書の書き方まで書いてある。旅行の情報はインターネットでも手に入りますし、とても充実しています。

木川: 日本語で対応してくえる代理店を使うのもいいですよ。何かあったら、電話すれば対応してくれます。あとは日本人の英語苦手という意識が問題ですね。YES、NOもわかるし、日本で生活していても、あちこちに英語が使われているんです。旅行英語は、使う言葉もだいたい決まっています。

萩原: そもそも英語が通じない国もいっぱいありますし、なんとかなりますよ。

バックの中には、業務用カメラとワイヤレスマイクなど、プロ仕様の本格仕様がズラリ

――今後したいと思うことは?

萩原: アイスランドに行ってみたい。あとはアフリカの溶岩湖があるところとか。

木川: 僕は南極。あとは中国の奥地とか。

――今日はこれから出発というところですが、目的地は?

萩原: 今回は8州制覇してきます。フロリダのオーランドに行って、そこからアメリカ南部を走る予定です。半年後くらいには、皆様に見てもらえると思いますので、お楽しみに!

木川: それでは行ってきます!

◇関連サイト
・世界遺産完全制覇の旅~トルコ編~
http://www.nicovideo.jp/mylist/15997683

(眞形 隆之)

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