「破壊と再生が同時に起こっている」 震災後の日本海溝で見えたもの

海洋研究開発機構の高井研氏

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)の高井研上席研究員は2011年8月20日、ニコニコ生放送で東日本大震災後「しんかい6500」で日本海溝に潜航したときの様子を語った。震災発生後、日本海溝に潜航した調査を行ったのは「しんかい6500」が初めて。震災によって、海底でいったい何が起こっているのか。高井氏は「破壊と再生が同時に起きているイメージ」と語る。

 今回の調査は、宮城県牡鹿半島沖の東日本大震災の震源地付近3サイト(地点)で行われた。期間は7月30日から8月14日までの16日間。世界でもっとも深くまで潜航できる有人潜水調査船「しんかい6500」が使用された。研究者は期間中に8回潜航し、日本海溝海域の水深約3200mから5350mの地点に震災で発生したと見られる亀裂や段差、そして亀裂からのメタン噴出に伴うバクテリアの大量発生といった現象を確認した。

深海のキャラウシナマコ

 高井氏が特に注目するのは、海底における「キャラウシナマコ」の高密度での生息だ。キャラウシナマコは、深海の堆積物などに含まれる有機物などを食べるナマコの一種だ。キャラウシナマコが海底に高密度で生息しているのは、震災によって水深の浅い場所から有機物を含む土砂が深海に運ばれたからだ、と高井氏は推測する。

 一方で高井氏は、海底の堆積物の移動により、「非常に多くの、もともといた生物が死んだ」とも述べ、「腐っているもの(死骸)の上に次の生態系が始まっている」と、震源地近くの海底で「破壊と再生が同時に起こっている」ことを感じたと報告した。

(佐竹祐哉)

◇関連サイト
・ 独立行政法人海洋研究開発機構 – 公式サイト
http://www.jamstec.go.jp/j/index.html

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