引き下げ競争が激化。どうなる2016年の住宅ローン金利
1月になって、住宅ローンの金利引き下げ競争がまた熱くなってきた。背景には史上最低を更新した長期金利の動きと、消費税増税をにらんだ駆け込み需要を取り込みたい金融機関の思惑があるとみられる。住宅ローン金利の現状と、今後の動きを見通してみよう。
メガバンク3行がそろって変動型金利を0.6%台に引き下げ
住宅ローン金利の引き下げが止まらない。変動型金利は基準となる短期金利がほぼゼロ金利で張り付いているため、都市銀行や信託銀行の店頭金利は2.475%の状態が7年前から続いているが、実際の適用金利は引き下げ幅が拡大の一途をたどっている。
昨年(2015年)は夏に三井住友信託銀行と三菱UFJ信託銀行が金利引き下げ幅を1.80%に拡大し、変動型の最優遇金利を0.675%に引き下げた。追随する形でみずほ銀行も全期間固定型とミックスした場合の引き下げ幅を1.80%とし、10月半ばからは三井住友信託銀行が引き下げ幅を1.85%に拡大するなど、金利引き下げの動きが拡大した。
今年(2016年)1月からは、三菱東京UFJ銀行と三井住友銀行も金利引き下げ競争に参戦。引き下げ幅を一気に0.15%拡大して1.85%に広げた。対抗してみずほ銀行も同じ引き下げ幅とし、ミックスプラン限定という条件も撤廃。さらに三井住友信託銀行は1月15日から引き下げ幅を1.875%に拡大して最優遇金利を0.60%とし、みずほ銀行もネット住宅ローン限定で1.875%の引き下げ幅を打ち出している。
【図1】住宅ローン金利の推移(データ提供:オイコス)
都市銀行や信託銀行では0.6%台の競争を繰り広げているが、ネット銀行などではさらに低い0.5%台の変動型金利が主流だ。イオン銀行は0.57%を打ち出しているほか、住信SBIネット銀行はこの1月から借り換え限定で0.569%のキャンペーンを開始。ソニー銀行では新規購入で自己資金10%以上であれば、0.539%の最安値が適用される。これらの超低金利をウリにする新興勢力の存在も、都市銀行などの低金利競争に拍車をかけているようだ。原油安に伴う物価下落がさらなる金利低下につながる
金利引き下げの背景には、長期金利の低下がある。ベースとなるのは日銀が市場から大量に国債を買い入れている異次元緩和だが、最近では下落が続く原油価格や中国経済の先行き懸念などの要因も加わっている。日本株が低下基調ということもあり、安全資産とされる日本国債に投資マネーがシフトし、債券相場が上昇して長期金利が下落する流れだ。長期金利の代表的な指標である新発10年国債の利回りは1月14日に一時、過去最低となる0.190%まで下がった。2年債など償還期間の短い国債の利回りはマイナス圏だ。
こうした金利の低下要因は、今後もしばらくは変わらないとする見方が多い。なかでも原油価格の影響は大きいとみられる。中東産油国にとって最大の輸出先である中国の需要が落ち込むなか、経済制裁を解除されたイランの輸出拡大が重なって原油安が長期化する公算が大きい。原油安はガソリン価格だけでなく、輸送費の低下などで物価全般を引き下げる方向に働く。物価上昇率2%の目標を掲げる日銀が追加の金融緩和に踏み切れば、金利低下に拍車がかからざるを得ないだろう。
加えて国内では企業業績の伸びなどから税収が増え、2016年度は新規国債の発行が減少する見通しだ。国債の発行が減る一方で日銀による大量の国債買い入れが続けば、債券市場の需給が逼迫してさらなる金利低下を招くことになる。消費税の経過措置が切れる10月以降は金利が上昇に転じる!?
住宅ローンを借りる人にとって、金利の低下は大歓迎だろう。特にマンションを中心に住宅価格が上昇気味となっているなか、ローン金利が下がれば負担が相殺されることになる。だが、金利がほぼ限界に近い水準まで下がっている今は上昇リスクのマグマが溜まり、いつ急上昇してもおかしくない状況といえなくもない。過去の長期金利の動きを見ても、低下が続いて下限に達したあとは急上昇するという動きを繰り返しているのだ。
銀行側もそうしたリスクを見越して、対応する動きが見られる。三菱東京UFJ銀行は1月から、貸し出し後の金利を毎月見直す「毎月型」の変動型金利を新たに扱い始めた。最優遇金利となる1.85%の引き下げは、この毎月型を選んだ人のみに適用される。
通常の変動型金利は貸し出し後の金利を半年に一度見直す。返済額は5年に一度しか変わらないが、その間にも金利が変動すれば返済額に占める利息額が変動する仕組みだ。銀行にとって変動型金利は金利変動リスクの小さいローン商品だが、金利見直しの間隔を半年から1カ月に縮めれば、さらにリスクを小さくできる。金利がいつ上がっても対応できるというわけだ。
今の住宅ローン金利引き下げ競争は、消費税増税をにらんで顧客を獲得したい銀行側の思惑も反映している。特に注文住宅や新築マンションでは、税率引き上げの半年前までに契約すれば引き渡し時期にかかわらず税率8%とする経過措置が適用されるため、その期限となる今年9月30日までが最大のヤマ場だ。
逆にいえば、10月以降は消費税増税による反動減が見込まれるため、住宅ローンの金利引き下げが一服し、引き下げ幅を縮小する銀行が現れないとも限らない。借りる側としても変動型だけでなく、同じく史上最低水準に下がっている固定型金利の活用も検討するなど、来るべき日に備える必要があるかもしれない。
元記事URL http://suumo.jp/journal/2016/01/25/104723/
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