新しい方向性も示した『ニコニコ寄席』が とかく面白い
今月6日、六本木『nicofarre(ニコファーレ)』でユーザー参加型イベント『ニコニコ寄席』が行われた。 このイベントは『ニコニコ動画』で活躍する生主(生放送を配信するユーザー)や踊り手(自身の踊った動画を投稿するユーザー)などがマジック・落語などを披露するイベントだ。 取材にあたり、事前に抱いていた気持ちは正直なところ「一般人が芸をしたところで……」という思いであった。 しかし、イベントが始まると、その思いは綺麗に払拭される内容となっていた。
参加者のバランスの妙
このイベントの良さを説明する上で、まず挙げられるのがバランスの良さだ。 “寄席”のメインと言えば落語であるが、”寄席”とは勿論それだけではない。 手品や漫談などいわゆる”色物”(現在では違うニュアンスで取られがちだが決してそのようなことはない)が会場を暖め、その空気をMCである百花繚乱さん・爆笑コメディアンズさん(この二組も各々演目を行った)が繋げ、次の出し物へと続けていく。 今回の『ニコニコ寄席』は多少変則的な部分はあったものの、立派に”寄席”となっていた。 惜しむらくは時間(電車)の関係で最後までいることの出来なかったお客さんがいたことくらいだろう。
締める所は締め、それでも”らしさ”は失わず
人選の良さもまた光った。 『ニコニコ動画』でお馴染みの手妻師、藤山晃太郎さんや吉本芸人の爆笑コメディアンズさん、また公式放送にも出演したジブリ芸人いずみ包(ぽお)さん、愛用(?)のメイスを振るっての登場で会場の度肝を抜いた現役住職、蝉丸Pさんによる説法など、プロではあるが『ニコニコ動画』に強い層がしっかりと締める。 更に五月病マリオさん・セラさんによる即興でのイラストや、iPadマジックの内田伸哉さんの映像を駆使した演出は、全面LEDの会場を活かした内容で、今後の可能性を示していた。
ラストの落語・大喜利もまた見事。 敢えての別ジャンルに挑戦した今岡さんを皮切りに、自身の放送でも落語を披露している笑々亭鳳双さんによる「東方落語」、更に現役ラジオアナウンサーでもある十三代目冷奴さんの「ヲタク落語」などはさすがの出来。 続く大喜利には、生主の4人が参加。 やみんさん・団長さん・二宮係長さん・オスカルさんなどがテンポとセンスの良さで会場と視聴者を沸かした。 これら一連の流れから見えたことがもう一つある。 それは、壇上の全員が全員、正面からまっすぐに芸を披露していたことだ。 芸達者揃いで人気のある出演者陣が揃っていたが、「どうだ見てくれ」と言わんばかりにぶつかってくる姿勢それ自体にも好感が持てた。 ……と言っても押しつけがましい訳ではない。 きちんとお客さんの反応・ユーザーのツボも分かっており『ニコニコ動画』”らしさ”も散りばめての見せ方を忘れていない。 正統派でもあり遊び心も忘れない。 そういった意味でのバランスの妙も上手く活きた内容であり、それがそのまま会場・ネットでの高評価に繋がっていった。
予想を超えるユーザーの反応
前段で少し触れたが、今回の取材にあたり忘れてはならないのがユーザーからの反応だろう。 大きなサービスとなった『ニコニコ動画』ではあるが、ユーザーはジャンル毎に住み分けされ、必ずしも同じ方向を向いているわけではない。 今回のイベントはそういったジャンルの壁を取り払う効果もあったのではないだろうか。 それを裏付けるように、視聴を終えたユーザーからの反応は好評で、今後の展開を期待するコメントなども見受けられた。
ニコニコ動画のイベントと言えば「歌ってみた」・「踊ってみた」のライブがとみに盛況であるが、ここに新たに”寄席”という柱が立ちそうだ。 寄席特有の、特定ジャンルに捕らわれない懐の広さと、そこに果敢に挑戦するユーザー達。 最先端の施設であるニコファーレで、アナログ味満載の寄席を行うというのも面白い。 素直に第二回の開催を期待したい。
ニコニコ寄席
http://live.nicovideo.jp/watch/lv56007144
演目 :出演者
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説法 :蝉丸P
落語「東方落語」:笑々亭鳳双
落語 :今岡さん
手妻師 :藤山晃太郎
iPadマジシャン(マジック):内田伸哉
オカマジック :百花繚乱
ジブリ芸人 :いずみ包
「ニコファーレで360°描いてみた」:せら、5月病マリオ
生主大喜利 :オスカル・やみん・団長・二宮係長
ヲタク落語 : 十三代目冷奴
MC:爆笑コメディアンズ、百花繚乱
インターネットの賑わっているところに大概参加をしながら約20年。 ここ最近はニコニコなどの動画サイトを根城にしつつ、何だかよく分からない生活を送る。 生放送においては過去に、日本全国を生放送をしつつ巡ったり、ヨハネスブルグ、ジンバブエ、カザフスタンなど「そもそも回線は大丈夫なの?」といった場所から生放送を行ったことも。 しかし、一番好きな場所は『自分の部屋』とのたまう、自称「世界で一番忙しいニート」・「世界で一番仕事をしない自宅警備員」。
ウェブサイト: http://com.nicovideo.jp/community/co7201
TwitterID: higeoyaji
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