“脱原発”に逆行? 資源エネルギー庁が原子力に関するネット上の投稿を監視する?

7月15日細野大臣記者会見

去る6月24日、経済産業省管轄の資源エネルギー庁が公告した入札*1 が、今インターネット上で静かな波紋を呼んでいる。

*1:入札公告『経済産業省 資源エネルギー庁』
http://www.enecho.meti.go.jp/info/tender/tenddata/1106/110624b/110624b.htm

一般競争入札に付されたのは、「原子力安全規制情報広聴・広報事業(不正確情報対応)」。
この仕様書*2 を見ると“事業目的”に

ツイッター、ブログなどインターネット上に掲載される原子力等に関する不正確な情報又は不適切な情報を常時モニタリングし、それに対して速やかに正確な情報を提供し、又は正確な情報へ導くことで、原子力発電所の事故等に対する風評被害を防止する

とあり、まるでネット上には不正確な情報が溢れていて、それを正すために『Twitter』やブログの投稿を監視する業者を入札するように読めるのだ。

*2:仕様書(PDF)『経済産業省 資源エネルギー庁』
http://www.enecho.meti.go.jp/info/tender/tenddata/1106/110624b/3.pdf

この情報に気づいた一部のネットユーザーは騒然とした。ジャーナリストの岩上安身氏は、自身の『Tiwtter』で「いよいよ、エネ庁のホームページで、Twitterの監視が明記されました」*3 と書き、「不適切なツィートを監視するという話 、経産省にも、エネルギー庁にも、厳しく問いただしたい」*4 と述べている。

*3:2011年07月14日 21:58 岩上安身氏のツイートより
http://twitter.com/#!/iwakamiyasumi/status/91490720283762688

*4:2011年07月15日 01:18 岩上安身氏のツイートより
http://twitter.com/#!/iwakamiyasumi/status/91542035705765888

筆者も菅総理が“脱原発”を明言した中で、このような事業が公然と行われていることに疑問を持ち、7月15日の細野豪志原発担当相の記者会見に出席した際、「ネットの原子力に関する不適切な情報をモニタリングするという入札が行われている事実をご存知か。また原発担当大臣としての見解はどうか」と質した。
「存じ上げないので、調べさせて頂きたいと思います」大臣の返答は端的でそっけないものだった。

では、入札を実施した資源エネルギー庁の真意は何処にあるのだろうか?

ネット、特に“Twitter”では、福島県に行くと被ばくする、といったことや、他県に避難した子どもがいじめに合うといった情報が流されています。そういった情報に触れて不安に思う方がいらっしゃるので、そういった風評被害をなくしたい、と考えています。そのために、正しい情報をQ&A形式でまとめてHPに掲載することを検討しています

原子力発電立地対策・広報室の担当者はそう語った。

「原発関連の情報を監視して、政府の都合のよい情報を広げようとしているのでは」という質問には、

そういう意図はまったくありません。モニタリングしたツイートなどは、有識者を集めてどう対処するか精査していきます。あくまで国民の皆様に正しい情報を知って頂く、というのが目的です

と、“監視”については強い口調で否定した。

しかし、『ニコニコ動画』の世論調査*5 で「福島原発や放射性物質に関する政府の発表を信頼しているか」という質問では、 “信頼していない”が7割を超えているというのが現状。政府に対する不信感が強い中、情報を発信しても逆に混乱が広がる可能性もある。

*5:「内閣支持率調査」2011/5/31『ニコニコ動画 ニコ割アンケート』
http://www.nicovideo.jp/enquete/political/nm14611287

図らずも菅総理の“脱原発”の方針に水を差す形となった今回の資源エネルギー庁の不正確情報対応の入札問題。
入札は7月15日17時より行われる予定になっている。

※この記事はガジェ通ウェブライターの「ふじいりょう」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営。ネット、メディア、カルチャー情報を中心に各媒体に記事を提供している。

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