首相提言とは裏腹に!「雇用型在宅テレワーカー」が減少する理由
首相の提言とは裏腹に「テレワーカー」が減少傾向に
数年前から「テレワーカー」という言葉が聞かれるようになりました。しかし、どれだけの人が「テレワーカー」という働き方を正しく理解しているのでしょうか、「テレワーカー」とは、会社と雇用関係を結びながら週1回以上、終日自宅で仕事をする働き方をする人々です。2013年に安倍首相は「2020年までにテレワーカーを全労働者の10%以上にする」と提言しました。その主な目的は、育児や介護と仕事の両立など働きやすい環境をつくり、労働力を確保することです。
しかし、当初考えていたように導入は進んでいません。むしろ、最近テレワーカーは減少傾向にあります。その原因を会社側と働く側(テレワーカー)双方の立場から考えてみます。
そもそもテレワーカーに任せる仕事が不足
まず会社がテレワーカーを導入するには、テレワーカーにできる仕事があることが大前提です。テレワーカーに向いている仕事の条件は「パソコンでできる仕事」「集中して作業できる仕事」「他とのやりとりがない仕事」「秘密情報を扱わない仕事」などが挙げられます。このような仕事が、日本の会社の中に現在どれだけ存在するでしょうか。製造業、建設業、小売業、飲食業など労働集約型の業種では、全労働者のうち10%にも届かない少人数でしかテレワーカーになることができません。
また、会社と雇用関係にある以上、テレワーカーにも勤怠管理が必要です。何時から何時まで仕事をしたのかなど、正確な労働時間の把握や労災が起きた場合のことも考えておく必要があります。
労働に関する法律改正や仕事の増加が求められる
一方、働く人にとってはどうでしょう。テレワーカーになれば、仕事は続けやすくなるのでしょうか。子育てを例に考えてみると、子どもの行事は会社にいようが家にいようが、働く時間を制限します。「仕事があるから」と断っていたPTAも「家でやる自由がきく仕事だから」と、むしろ引き受けざるをえないことになるかもしれません。昼間の時間が取られれば、その分、夜間や休日にカバーすることになります。結果、会社で仕事をしていれば何の問題もないオンとオフの切り分けができにくくなってしまいます。
さらに、テレワーカーは孤独です。一人自宅で仕事をする時間が増えれば、会社で得られる人間関係も保ちにくくなるため、疎外感を感じることがあるかもしれません。
昭和の時代から日本には「テレワーカー」のような働き方をする人が存在しました。それが、内職、翻訳者、それに加えて筆者のような社会保険労務士も大半が自宅で開業しています。しかし、その人々は会社と雇用関係を結ぶのではなく、業務委託関係などで仕事を請け負っています。「テレワーカー」自体は新しい発想の柔軟な働き方で、これからの時代には必要です。ですが、定着させるためには労働に制約を与える法律の改正も必要であり、何よりテレワーカーが活躍できる仕事を増やすことが必要です。
(小倉 越子/社会保険労務士)
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