3D広告ではなく4D広告ってなんだ?『キャラメル 香るトレイン JACK』~鹿島臨海鉄道~
記者のもとに妙なプレスリリースが届いた。
唯一、助けてくれたのは、『鹿島臨海鉄道』だけでした・・・
“日本初”4D トレイン広告『食べたくなるトレイン』運行開始
ディフューザーとタイマーを利用した最先端のリアルタイム型交通広告が登場!
森永製菓のJACKという菓子が崖っぷちで、やばいのだそうだ。しかし、美味しいので何とかにおいも付けて広告を出したいという無茶なお願いを唯一、鹿島臨海鉄道だけがOKしてくれたというわけだ。
何やら深刻だが、面白そう。
しかし、鹿島臨海鉄道とは、また遠い。
急所組成した「JACK取材班」(といっても2名だが)は、鹿島臨海鉄道の始発駅である水戸に飛ぶことにした。
品川発、常磐線経由勝田行きの特急ときわ61号に乗り込んだ。
あらかじめ鹿島臨海鉄道に当該広告列車のダイヤを問い合わせ、それに間に合うように余裕を持った結果だ。
水戸に着いてもにおいだけでは腹は満たされない。東京都内でも東北の駅弁を買うことはできるので、車内で腹ごしらえ。
米沢の超人気駅弁である「牛肉どまん中」のハーフに、仙台の牛タン弁当のハーフを合わせた、なんだかお得そうな駅弁。
カップルで食べてもいいようにお箸は2膳付いているが、そんなもので足りるような取材班ではない。
もちろん1組全部食べる。今となっては特急列車ならではの楽しみでもある。
冷めても美味しいのは日本が誇るべき駅弁文化だ。
水戸駅に到着した取材班は、さっそく鹿島臨海鉄道の小松崎明旅客事業部企画課長に話を聞いた。
いただいた名刺はきっぷ型で、ご丁寧にはさみも入れてある。
–よくこんな、妙なお願いを聞きましたね
「地方の鉄道は苦しいのが本音です。ですから、私の部署としては何でもやりたいと思っていました。しかし、実際ににおいとなると万人が心地よいとは限らず、不快に思われるお客様もいるかもしれないのです。そこが運輸関係の部署との意見の相違でした。そこで、臭気指数で不快と感じない数値以下でなら、もしお客様から苦情が出れば即刻やめるという条件でお引き受けしました。今のところ苦情はありません」
なかなか、ご苦労なことである。
さっそく、水戸駅14時35分発147D列車の車内に入る。
車体ラッピングはないものの、車内の広告はすべてJACKになっている。
しかも、中身は入ってないが、袋がぶら下がっている念の入れよう。
JACKごときがあなたのお腹を空かせてしまったらごめんなさい。
いきなり謝罪から入る広告文面。
首都圏の電車で広告ジャックと言ったら、それはもう車体から窓の内外に至るまで全部同一の広告で埋め尽くされるのが普通だが、いたって控えめなJACKの広告ジャック。
お近くのコンビニで待っていま(長くは待てませんが)。
どういうことなのかというと、売れなかったら終売となるから、そんなに長くは待てないということなのだ。
やはり深刻だ。
途中の大洗駅で9分停車。
コンビニで待ってますというのはいいが、途中駅にコンビニらしきものはない。
あるのは水戸駅だけ。しかも、水戸駅の改札内コンビニを記者が調査した結果、商品は「おいてなかった」。
これは、さすがに笑うしかない。
いったいどこのコンビニで待っているのだろうか。
確かに、車内ではキャラメルの香りがほのかに漂っている。
記事でにおいを伝えるのは不可能なので、せめてそういう雰囲気でと撮影に挑んだのだが、この袋からではなさそうだ。
実は、出入り口のわきにBOXがおいてあり、バッテリー駆動で香りを放出するという仕組み。
しかも、タイマーで一般的に空腹になる時間帯には香りが強くなるというサブリミナル効果もびっくりの「脳に直撃」広告。
新鉾田で8分停車。
遠くまで見渡せる高架ホームからは何が見えるのだろう。
非電化で電車ではなく、エンジン音が響くディーゼルカー。
排気ガスのにおいがお似合いの気動車にキャラメルのにおいは不思議だ。
16時08分に終点の鹿島神宮駅に到着。
ひとつ前の鹿島サッカースタジアム駅からはJR鹿島線だが全列車が乗り入れている。
取材班は、鹿島神宮駅から高速バスで東京駅に直行した。
記者も試しにJACKを食べてみたが、普通に美味しいお菓子だった。
余計なお世話だが、もっと買える場所を増やすことに専念したほうがよい。
この香るトレインは11月18日から1週間の限定運行。
首都圏からは水戸か鹿島神宮からアクセスすることになるが、おそらく本邦初であろう面白広告列車に乗ってみてはいかがだろうか。
あらかじめJACKを買っておくのを忘れずに。
※写真はすべて記者撮影
取材協力 鹿島臨海鉄道株式会社
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(執筆者: 古川 智規) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
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