メディアでも個人が「説明」することで付加価値が生まれる

ニワンゴ社長の杉本誠司氏

 ジャーナリストやメディア関係者が学生とともに議論する朝日新聞の寄附講座が2011年6月17日、立教大学であり、ニコニコ動画を運営するニワンゴ社長の杉本誠司氏が教壇に立った。「ニコニコ動画と既存メディアの理想的な融合パターン」を議論した学生からは、「記事や番組を作ったジャーナリスト本人にニコニコ動画で制作意図を語ってもらう」といったアイデアが出された。杉本氏は「個人がキャラクタライズされることで信憑性が高まる」とこれを評価し、ジャーナリズムも含むモノづくりにおいては本人が「説明」することに付加価値が生まれると分析した。

 ニコニコ動画の基本的な情報を講義形式で説明した杉本氏は「ニコニコ動画と既存メディアの理想的な融合パターンを考察してみる」というディスカッションテーマを設定。学生は班ごとに議論した後、杉本氏にプレゼンテーションをおこなった。それぞれのプレゼン後には、ニコニコ動画のユーザーアンケート機能を用いて「優」「良」「可」の3段階評価がなされた。

 アンケート評価でトップの支持を得た提案は、「記事や番組を作ったジャーナリスト本人にニコニコ動画で制作意図を語ってもらう」というもの。学生は「既存メディアが実行できていないのは説明責任」と指摘し、報じる側の思いが見えないことが受け手の不信感につながる面があると分析。「例えば雑誌『AERA』(2011年3月28日号)の『放射能がくる』という表紙。なぜあの写真を使ったのかなど、意図のわからないところを生放送で説明してもらいたい」と提案した。

■「個人がブランドを越えていく可能性がある」

 杉本氏はこの提案を肯定的に捉え、「個人がキャラクタライズされることで、その人の言っていることの信憑性が高まり、ブランドを越えていく可能性がある」と話した。つまり、メディアの名前ではなく個人の名前に価値が出てくる時代だと言い、「メディアはそうなっていくべきだと思う」とした。一方で、それによりジャーナリスト間の競争が促され、特定の個人に人気が集中する可能性にも言及。「民意としてそれを求めていればそれが正しいのでは」と話した。

 さらに杉本氏は、「メディアに限らずモノを作る際には『説明』が大事になってくる。例えばこのペットボトルを作る人の『うんちく』や顔(写真)を出すことに付加価値が生まれるということが実際に起こり始めている」と述べ、メディアはそれに遅れをとらないようにする必要があると語った。

丸山紀一朗

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]学生のプレゼンから視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv52796129?po=news&ref=news#2:53:25

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