【レポート】瀬戸内寂聴講演会『無常の中の希望といのち~大震災をともに生きる~』

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【レポート】瀬戸内寂聴講演会『無常の中の希望といのち~大震災をともに生きる~』

5月28日(土)、梅雨入りと台風の影響もあり朝から雨が降り止まない中、徳島市内のあわぎんホールでは、瀬戸内寂聴講演会『無常の中の希望といのち~大震災をともに生きる~』が行われました。この講演会は、東日本大震災の犠牲者の方々への追悼と、被災地の復興を祈るという目的で、主催のNPO法人『徳島アルク』が企画し、徳島出身の作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんに声をかけ実現したものです。

【レポート】瀬戸内寂聴講演会『無常の中の希望といのち~大震災をともに生きる~』

午後1時15分頃、予定より少し早く開場となり、会場に入ると美空ひばりさんの『川の流れのように』がエンドレスで流れていました。
午後2時になると開演となり、まず主催者の挨拶があり、全員起立して1分間の黙とうの後、真言宗僧侶15名による読経が行われました。その後、ステージに丸いガラステーブルとイスが置かれ、しばらくして寂聴さんが登場し、講演が始まりました。

これまで、講演の際には、必ず立ってしゃべっていたと言う寂聴さんですが、昨年11月から今年4月まで、腰痛(徳島新聞の記事によると背骨の圧迫骨折)のため寝たきりで歩けなかったということで、今回は終始イスに座っての講演となりました。
震災後、ベッドで横たわりながら被害の様子をテレビで見て、「まさに生き地獄、漫画を見ているようだ」と思ったそうです。原発ショックのおかげで立てるようになり、それからはリハビリにも励み、新聞各社に被災地へ向けたメッセージを発表、釈迦の誕生日を祝う花祭りの日には、京都の寂庵でチャリティーバザーも開き、その収益金に寂聴さんの個人の義援金も合わせ、岩手県二戸市の市長さんに、「親を亡くした子どもへ、学校に行く費用として使ってください」と言って手渡したとのことです。

寂聴さんは、「震災は天災だけど原発は人災」 とキッパリ。
「人はどう言っても私はこう思うという信念を貫いてください。東北は徳島、京都に続く第三の古里。新聞に載っている震災で亡くなられた人の名前を書き写して、それを供養してくださいと私に手紙を送ってきた人がいました。何でもいい。自分にできることをすれば思いは必ず届く。東北の人たちは、私たちの代わりに災害を受けてくれた。キリスト教ではイエスが十字架にかけられたように、東北の方が苦しみを引き受けてくれた。絶望しないでください。どんなに苦しくても同じ状態は続かない、どん底の下はない

震災が起こった時はショックで何も考えられないが、落ち着いてきた時が危ない。鬱になって自殺してしまう人も出るのではと心配する寂聴さん。
「ここにいる人たちは、幸せな人。今日は帰って旦那にいい物を作りなさいよ。隠してあるお酒も出して」と、時折ジョークも交え、終始和やかなムードで講演会は幕を閉じました。6月には被災地に入り、小説を書くのより上手いと言われる特技の“あんま”で被災者を励ましたいと、にこやかな表情で語る寂聴さんでした。今年89歳とは思えないほどユーモアでキレのあるトークに来場のみなさんは元気をもらって帰っていく様子でした。

※この記事はガジェ通一芸記者の「原 後彦」さんが執筆しました。
●原 後彦:歌モノのCMを得意とする徳島在住のクリエイター。LOVE LOCAL地元CMコンテスト2010 グランプリなどCMコンテストでの受賞作品多数あり。

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