夫婦共有名義のマンション、財産分与に持分は関係なし
離婚に際しては車や家などの財産分与が問題に
人気の女性タレントが、夫のモラルハラスメントが原因で家を出たとのニュースが世間をにぎわせていましたが、彼女のように夫との別離を選ぶ女性は少なくありません。しかし、離婚をする際には、夫婦で購入した家や車などをどう分けるのかといった財産分与が問題になります。そこで、マンション(不動産)を例に挙げて解説していきます。
夫との生活に疲れ、子どもを連れて実家に戻ったY子さん。離婚が頭をよぎりますが、夫と共有名義にしている自宅マンションのことが気になります。自宅マンションは結婚後に購入したもので、持分(不動産登記簿に登録する際の割合)は夫が5分の4、Y子さんが5分の1。もし、離婚したら持分の少ないY子さんは不利になるのでしょうか。
婚姻中に夫婦の協力で得た財産は原則2分の1ずつ分ける
夫婦が離婚する場合、婚姻中に夫婦の協力によって得た財産(共有財産)は、財産分与として清算することになります(民法768条等)。原則として2分の1ずつ分けることとなり、不動産や預金の名義が「夫と妻のどちらにあるか」ということが影響することはありません。従って、自宅マンションの持分が少ないからといってY子さんが不利になるわけではありません。
Y子さん夫婦の共有財産が、自宅マンション(2000万円相当。ローン支払い済み)と預金1000万円だけだとします。その場合、Y子さんは、1500万円分の財産分与を受けることができます。財産分与の方法としては、離婚協議の中で夫婦間の話し合い、協議が調わないときには(離婚成立後であっても、2年以内であれば)、裁判所による協議に代わる処分として分与の方法等が定められることになります(民法768条)。
共有物分割の請求で夫が持分を主張できる可能性も
Y子さん夫婦の例で、離婚をしないまま、夫が共有物分割の請求(家庭裁判所ではなく、民事事件として)をすることも法律上は可能です(民法256・258条)。この共有物分割訴訟は、離婚の際の財産分与ではないことから、分割基準として登記上の持分が用いられる可能性が高いと言えます。
すると、判決内容としては、夫がY子さんに2000万円の5分の1である400万円を価格賠償として支払って全部取得する、またはマンションを競売して代金を持分に応じて分割するという結論などが予想されます。
夫の請求は権利の濫用にあたる場合も
前述のような結論が、夫婦の状況によっては一方の当事者に酷な結果となることがあります。例えば、夫の側に不貞行為や妻に対する暴力行為などの明らかな有責性があります。また、十分な資産もあるのに、妻の方は幼い子どもを自宅マンションで、少ないパート収入で育てているといった事情がある場合などです。
このような事例で、夫婦間の具体的な事情を勘案して夫の請求は「権利の濫用にあたる(民法1条3項)」として、夫側の請求を棄却した判例もあります(東京高裁平成26年8月21日判決)。
(中村 伸子/弁護士)
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