Crossfaith『XENO』インタビュー
2014年にイギリスを代表するラウドロック系の大型フェス、ダウンロード・フェスティバルのメインステージに立つなど、海外で目覚ましい活躍を見せている5人組バンド、Crossfaith。メタルコアとエレクトロを融合した先鋭的なバンドサウンドが世界的な注目を集めるなか、ギタリストのKazukiが脳内出血で戦線を一時離脱。バンド存続が危ぶまれる最大の危機を乗り越え、メジャー・デビュー・アルバム『XENO』がリリースされた。ケミカル・ブラザーズのVJを手掛けるJonny.TVの映像をフィーチャーしたZEPPツアーを終え、11月からのイギリス・ツアーを控えた彼らに、Crossfaithのこれまでとこれからについて話を訊いた。
――メジャーデビューアルバム『XENO』をリリースしたばかりのCrossfaithは、すでにそれ以前のインディーズの活動を通じて、ヨーロッパを中心に、海外でブレイクスルーを果たした特異なバンドです。バンド結成の時点から海外進出は念頭にあったんですか?
Koie「そうですね。まず、僕らが聴いてきた音楽、音楽をやるきっかけになった音楽は欧米のものだったので、自分たちが憧れているバンドと同じ舞台に立ちたいという思いが強くなっていったのはごくごく自然なことだったんです」
――しかし、そうはいっても、国内事情と勝手も違えば、ノウハウもない海外進出は並大抵のことではないですよね。
Koie「2006年のバンド結成から、ずっと国内で活動を続けていくなかで、僕らと同じように海外での活動を志す今のマネージャーと出会ったことが大きくて。そして、2012年にアイアン・メイデンやイギー・ポップを擁するイギリスのロウ・パワー・マネージメントという大きな会社からオファーが来て、彼らと契約したことで、海外進出をサポートしてもらえることになったんです。通常、日本のアーティストが海外でライヴをする時、日本の文化関連のイベントを軸に、3、4本ライヴをやって帰るという形態が多いと思うんですけど、彼らの場合は『やるからには、ヨーロッパのバンドと同じやり方でツアーやろうよ』と言ってきたし、それは僕らが望むやり方でもあったんですよ」
Hiro「だから、最初はキャパシティが200人、300人くらいのライヴを17日間連続でやったことを手始めに、日本での活動と同じく、一つ一つ積み上げていくように、この3年間、休みなく海外をツアーで回り続けたんです。そうこうするうちにリアクションが大きくなっていって、オーストラリアのサウンドウェーブ、イギリスのレディング&リーズ、そして、2014年には僕らが目標に掲げていたダウンロード・フェスティヴァルという大きいフェスのメイン・ステージ(2万人規模)に立つことが出来たんです」
――自己分析をして、海外のマネージメントやオーディエンスからどういう部分が評価されていると思いますか?
Koie「僕らが海外のバンドに感じるように、海外の人たちも日本のバンドが新鮮に感じるということもあると思いますし、音楽的には、メタル、ハードコアに、エレクトロの要素を加えたサウンドが特殊だったんです。しかも、その加え方が他のバンドがやっていない斬新なやり方だったんですよ」
――海外において高く評価されているメタルコアとエレクトロの融合は、もともと、どういうアイデアから生まれたんでしょう?
Kazuki「もともと、ヒップホップとメタルを融合させたリンキン・パークのようなミクスチャーバンドが好きだったこともあって、その延長線上の発想だったというか。周りと同じことをやってもしょうがないし、僕らにしか出来ない音楽を意識して、メタルとエレクトロを融合させていったんです」
Koie「僕とKazukiとTeruはCrossfaithを組む前に3年くらいミクスチャーバンドをやっていたんですけど、その時からTeruはDJとして、スクラッチをしたり、サンプラーやシーケンサーを扱ってきたんですね。キーボードがいるバンドは世界に沢山いますけど、Teruの場合はいわゆるプレイヤーとは違うDJやトラックメイカーとして、ダンスミュージックを奏でられるところが他のバンドと大きく異なる部分だと思います。当時のイギリスには「メタル・ミーツ・レイヴ」と評されたエンター・シカリのようなバンドが出てきていたんですけど、彼らのサウンドはぶっ飛びすぎてて、自分たちの求めるサウンドとは違ったし、メタルコアとエレクトロを融合するにあたっては、参考となるバンドがいなくて。だから、最初は手探りで、ストリングスやキーボードを入れるところから始めて、自分たちなりの試行錯誤を経て、「Blue」という2009年の曲からCrossfaithらしい個性が発揮されるようになっていったんです」
――そして、世世界進出を果たしたインディーズでの活動を受け、メジャー・デビュー・シングル「MADNESS」を昨年10月に発表した後、Kazukiさんが脳内出血の治療で活動休止するという大ピンチに見舞われました。
Koie「2013年に『APOCALYZE』という前のアルバムをリリースしてから、海外を沢山回ったり、本当に色んなことがあって。(パラモアほかを手掛ける)デイヴィッド・ベンデスというプロデューサーを迎えた「MADNESS」のレコーディングもバンドの音楽性とうまく噛み合わず、端的に言ってしまえば、自分たちらしい曲を作ることが出来なかったし、その直後に不調を訴えていたKazukiが病院で精密検査を受けたら、脳内出血と診断されて。その時、結成以来、初めて、バンドがバランスを失って、空中分解しそうになっているなと思ったし、Kazukiのことを含め、バンドの今後について、みんなで沢山話し合ったんです。そんななか、Kazukiは『俺は諦めへんし、バンドを止めないでくれ』と言ってくれて、俺らとしても、『やるしかない!前に進まなきゃ』と思えるようになったんです」
Kazuki「僕自身、脳内出血と診断されて、バンド活動が出来なくなってしまったんですけど、気持ちの上でも『やらないとアカンからやる』ということはやりたくなかったというか、やりたいことをやりたかった。だから、わがままかもしれないですけど、時間をもらって、Crossfaithを取り巻く状況を整理したこともあって、今回のアルバムの完成までに時間がかかったんです」
――それまでの活動が順風満帆だっただけに、突然迎えた逆境は精神的にも相当に厳しいものがあったんじゃないかと思うんですが、その状況を見事に乗り越えたからこそ、ニューアルバム『XENO』は突き抜けた作品になりましたね。
Koie「そうですね。『やるしかないっしょ』と自分たちを奮い立たせた今回のアルバムは、Kazukiも曲作りをしているし、実際にプレイもしているし、自分たちにとって、Crossfaithとはどういう存在なのかを見つめ直して制作に取り組んだことで、今までの作品で一番意味があるアルバムになりましたね」
――プロデューサーは、ラム・オブ・ゴッドやヘイトブリードといったバンドを手掛けるジョシュ・ウィルバーを新たに迎え入れて。
Koie「「MADNESS」のデイヴィッド・ベンデスは、彼なりのセオリーがあって、それゆえに彼の手掛けた作品はどれもデイヴィッド・ベンデスのサウンドになっているんですけど、彼のセオリーが俺たちのやりたいこととうまく噛み合わなかったんですね」
Kazuki「それに対して、ジョシュは新たなバンドメンバーになったような感覚で、メンバーと同じ目線で曲に向き合って、アイデアや意見を提示してくれるんです」
Koie「だから、彼が手掛けた作品はどれも全然違うのに、どれも最高の音に出来るんですよ。もちろん、デイヴィッドも最高のプロデューサーなんですけど、俺たちはこれまで自分たちでプロデュースしながら、ここまでやってきたし、そういうCrossfaithを理解して、さらに良くするアイデアを出してくれたジョシュの素晴らしい仕事ぶりがバンドにうまくハマったんだと思います」
――ヘビーで突き抜けたリード曲「Xeno」からキャッチーなメロディが立った「Devil’s Party」、「Tears Fall」や「Calm The Storm」で聴かせる新機軸のバラードまで、バンドの音楽性が大きく広がったという印象を受けます。
Kazuki「Crossfaithとは?と自問自答しながら、一つの生き物としてのバンド、そこで生まれた色んな感情、色んな思いを全てを表現しようとしたら、自然とヴァラエティーに富んだ、幅の広い作品になったんです」
Hiro「今までの作品にも色んなタイプの曲がありましたけど、今回は今までのように、ドラムを先に録って、ベース、ギターを重ねていくんじゃなく、ギターから始めて、ドラムを最後に録るやり方だったんですよ。土台となるドラムを先に録ってしまうと、アレンジが変更出来ないんですけど、今回はギターから録ることで、全員が納得いくまでアレンジ作業をすることが出来たんです」
Kazuki「僕らはそれぞれ我が強くて、それぞれに表現したいことがあるので、そうしたアイデアをまとめることが出来た今回のレコーディングは僕らにとって合理的なやり方でしたね」
Koie「全員が寄り添うことで一曲一曲がまとまっていて、テーマがはっきり分かるものになっていると思うし」
Tatsuya「今回は曲のより深い部分に踏み込んでいった、そんな感触がありますね。そして、曲の深い部分から音を積み上げていけたことが大きかったです」
――多彩な楽曲に米国のメタルコア・バンド、ベアトゥースのケイレブや英国のレゲエ・ミクスチャー・バンド、スキンドレッドのベンジーというゲストヴォーカルをフィーチャーしながら、Crossfaithの個性とその存在感は濃密にして揺るぎないですもんね。
Koie「デイヴィッドとのレコーディングから学んだことや反省。それを踏まえて、今回、ジョシュとレコーディングすることが出来たし、Kazukiに起きたことも含め、全てを糧に生まれてきたのが、『XENO』というアルバムなんです。海外のマネージメントと契約してから3年。ようやく、自分たちが満足いく、海外に通用する作品が出来たし、今からが本番やと思っているんですけど、海外のマネージメント・スタッフもそう考えていると思うんです。だから、この作品をスタート地点に、この先が楽しみでしょうがないんですよ」
撮影 倭田宏樹/photo Hiroki Wada(TRON)
文 小野田 雄/text Yu Onoda
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Crossfaith
『XENO』
発売中
(LUSTFORLIVES/Ariora)
Crossfaith
2006年11月Kenta Koie (Vocal), Terufumi Tamano(Program / Vision), Kazuki Takemura (Guitar), Hiroki Ikegawa (Bass), Tatsuya Amano (Drum)により結成。エレクトロとロックの要素を巧みにブレンドし唯一無二の音楽性として世界的に評価を受けている。幾度ものワールドツアーを経験し、2014年には念願だったイギリス最大の野外ロックフェスティバル「DOWNLOAD FESTIVAL 2014」のメインステージに出演し、その圧巻のパフォーマンスにUKメディアも絶賛。各海外音楽メディアによるアワードへノミネートも受けるなど、アジア圏出身のアーティストとしては前例のない数々の快挙を成し遂げてきており、Crossfaithが世界的ロックアーティストであることは揺るぎない事実となってきている。
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