創業37年目の社長が語る 奇跡を起こすための思考法
一見、同じような環境にいるにもかかわらず、ことごとくチャンスをつかんでいく人がいる一方で、ことごとくチャンスを逃してしまう人がいます。その差はどこにあるのでしょう? またそれは埋めようのないものなのでしょうか?
『奇跡(ミラクル)を呼び込む力』(PHP研究所/刊)の著者である西智彦さんは、大学時代のアメリカ留学経験を活かし、26歳で海外専門旅行会社JST(ジャパンスタディツアーズ)を設立。以来、37年にわたって事業運営に携わっている、現役の企業経営者です。
西さんは、身のまわりに起きる「些細な幸運」を逃さずチャンスへとつなげてきた人物。その結果、リピーターおよび紹介客で売上の80%を実現しているといいます。
西さんは自身の成功を語るなかで「奇跡」という言葉を度々用いています。西さんが語る「奇跡」とはどのようなものなのかを中心にお話をうかがいました。今回はその前編です。
――西さんは37年間にわたり海外旅行専門会社を経営なさっていますが、創業の経緯を教えていただけますか?
西:大学4年生のときに1年休学してアメリカへ留学しました。その旅の道中、アメリカで最も美しいハイウェイともいわれるオーバーシーズ・ハイウェイという橋で、太陽が西の水平線へ沈んでいくところを目にしたんです。
その光景を前に「若いときに海外へ行くのはいいことだ。世界を見ると人生が変わる。そのような仕事に関わるためには旅行業に就けばいいんじゃないか」とひらめきました。感受性の豊かな若い人たちに「人生を変える旅」を提供する。そんな仕事をしたいと思ったわけです。このことがきっかけで、帰国後に一般旅行業務取扱主任者(現・総合旅行業務取扱管理者)の資格を取り、大学卒業後はとある旅行会社に就職しました。
就職先での仕事は楽しかった。でも働くうちに「もっとこうしたらいいのに」と思うことが増えていったんです。ただ提案があまり受け入れられないので、それなら自分で理想の会社をつくろうと考え、26歳のときに創業しました。
――創業時、西さんはどういう方針で会社を育てていこうと考えていたのですか?
西:会社をつくるときにまず考えたのは「いきなり会社を大きくするのではなく、お客様の成長に合わせて会社を大きくしていこう」ということでした。そこで、この会社は留学とホームステイの事業からスタートさせたんです。
そしてホームステイに行ったお客様が「ホストファミリーに会いに行きたい」といえば格安航空券のセクションをつくり、お客様が結婚する時期になればハネムーンセクションをつくるといった具合に会社を大きくしていきました。
――本書には、創業して間もなく「奇跡」が起こったと書かれていましたね。
西:そうなんです。創業してすぐ、ブラザー工業グループのブラザー販売が所有する自社ビルを貸してもらえました。そのビルは一等地にあり人の往来が絶えないという申し分ない条件。「ここだ!」と思った私は、誰の紹介状も持たずアポイントも何も取らないままブラザー販売の総務部へ飛び込み、その場で賃貸交渉をしました。
もちろん最初はつれない返事がかえってきたのですが、熱心に食い下がりながら「留学とホームステイの会社をつくりたい」と語りました。すると、応対してくれた課長のご兄弟が私費留学していたこともあって私のビジネスに共感してくださり、ビルの一角を貸してくださることになったんです。
私が講演でこの話をすると、皆さんに「よく借りられましたね」と驚かれます。たしかにいま振り返ってみると、飛び込みでやってきたどこの馬の骨とも知らない青年に、大企業がビルの一角を貸してくれるなんて、常識的に考えたら起こりえない「奇跡」だと思います。
――本書には度々「奇跡」という言葉が出てきます。西さんは「奇跡」というものをどのように捉えていますか?
西:めったに起こらないような大それたことではなく、ほんとうに小さくて微笑ましい幸運を「奇跡」だと考えています。そしてこういう些細な幸運を見逃している人が実に多い。単なる日常の現象としてしか見ていないケースが多いように感じます。
一方、奇跡を呼び込む力のある人は、小さな幸運を見逃さずちゃんと感謝することができる。その積み重ねが大きな奇跡を起こすことにつながる。つまり奇跡は受け取る側の気持ちしだい、考え方しだいという部分が大きいように思うんです。
――西さんが「奇跡」を呼び込むために、他に意識していることは何ですか?
西:「自分の頭を使って、一生懸命考えること」を徹底していることですね。何か目標を立て、その目標に向けて自分なりにいろいろと考えて工夫すれば、予期しない力の助けを借りることができて物事がうまくいくんです。
――西さんがそう思うようになったきっかけは何でしょうか?
西:小学校3年生のときの体験が大きかったと思います。そのころの私は家の手伝いで、毎日、学校が終わると卵を売りに出かけていました。1袋100円で10袋を売りに行くのですが、いつも2、3袋売れ残ってしまう。そこで私は「夜になってあたりが暗くなってから、校長先生のところへ売りに行く」ということを思いつきます。いざ売りに行ってみると「こんな夜遅くまで、家のために働いているなんて偉い。残っている卵を全部買ってあげよう」と売れ残った分をすべて買い取ってくれたのです。
小学校には30人ほどの先生がいましたから、「次の日は教頭先生」「その次の日は担任の先生」といったように、日替わりで先生のお宅を訪問するようにしました。すると、ちょうど1か月で1周まわることができ、卵は売れ残らなくなったんです。
この体験を通して「自分の頭で一生懸命考えて工夫すれば、うまくいくんだ」と思えるようになりましたね。
(後編へ続く)
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